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〔潮流底流〕高揚感なき株価3万円=期待先行、金融緩和が支え

<2021年2月19日>

現在の東京証券取引所=2020年10月、東京・日本橋兜町現在の東京証券取引所=2020年10月、東京・日本橋兜町

 東京株式市場で15日、日経平均株価が30年半ぶりに3万円を超え、バブル崩壊後の最高値を更新した。新型コロナウイルス収束後の景気回復期待が背景にあるが、実体経済と乖離(かいり)した株高に高揚感は乏しい。市場では今後も上昇が続くとの見方がある一方、大規模な財政・金融政策によるマネーが流入した「過熱相場」(エコノミスト)との懸念も聞かれる。

 ◇「3万円は想定内」

 15日午前、日経平均が3万円に達した瞬間、ある証券会社のディーリングルームは静かだった。感染拡大を受け在宅勤務も多い。大手証券関係者は「3万円は想定内。足元の経済が株価に追い付いていない上、地震も起きた。喜ぶ雰囲気ではない」と明かす。

 感染が拡大した2020年2~3月の「コロナショック」を経て、最高値を更新する米国株に追随した上げ相場が続く。背景にあるのは、同4~6月期を底に好転した企業業績だ。中国の経済回復などで自動車など製造業は復調しており、「巣ごもり需要」を取り込んだゲーム、通信関連も好調だ。

バブル期の東京証券取引所=1989年12月(東京・日本橋兜町)バブル期の東京証券取引所=1989年12月(東京・日本橋兜町)

 SMBC日興証券によれば、東証1部上場の3月期決算企業のうち、467社が21年3月期通期の純利益予想を上方修正。小売りや飲食、旅行・運輸業界は厳しい局面が続くものの、日経平均構成銘柄の約6割は製造業で、飲食業界などの業績が反映されにくい。国内でもコロナワクチン接種が始まれば「『半年先には景気が浮揚する』との観測が株価を後押しする」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏)という。

 個人投資家も取引を活発化した。兵庫県三田市の会社経営者の男性(41)は、コロナで仕事が減り、余った時間で短期の株売買を始めた。「勢いで株価が一段と上昇してもおかしくない」と本腰を入れる。市場では、日経平均が年後半に3万3000円を目指すとの予想も出ている。

 ◇行き場なきマネー

 一方、ある経済官庁幹部は「マネーの行き場がないだけだ」と、実体経済の裏付けを伴わない株価高騰に眉をひそめる。

 国際通貨基金(IMF)によると、世界全体で20年に発動された財政支援は約14兆ドル(1470兆円)。米バイデン政権は1兆9000億ドル(約200兆円)規模の追加経済対策案の実現を目指し、日本も20年度第3次補正予算の成立で同年度の一般会計歳出総額は当初予算の約1.7倍となる175兆6878億円に膨張した。コロナ対策予備費を5兆円計上した総額106兆6097億円の21年度予算案も今国会で審議中だ。

 日銀は上場投資信託(ETF)の年間6兆円の購入枠を倍に拡大した。今年1月末のETF保有残高は35兆5700億円に達し、東京株式市場で国内最大の株主になったとみられる。上野剛志ニッセイ基礎研究所上席エコノミストは「日銀の極端な緩和が株価の過熱を招き、市場原理に即さない前のめりな投資を招いている」と指摘した。(了)

 

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