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「インデックスファンドの次なる選択肢」を提案=「ティー・ロウ・プライス 米国株式リサーチファンド 愛称:S&P500 Pro」を6月13日設定へ

2025年05月29日 08時00分

 米系運用会社の日本法人、ティー・ロウ・プライス・ジャパンは、米国株式に投資する「ティー・ロウ・プライス 米国株式リサーチファンド 愛称:S&P500 Pro」を6月13日に新規設定する。日本における8本目の公募投信で、楽天証券が販売する。同社のファンドをオンライン証券が取り扱うのは、初めて。

 このファンドは、プロの調査・分析に基づいて、米国の代表的な株価指数であるS&P500の中から約300銘柄に厳選投資する。銘柄選定に当たっては、S&P500と同程度のリスクと特性で、S&P500を上回るリターンの獲得を目指す。少額投資非課税制度(NISA)の成長投資枠ファンドだ。

 このような、株式指数との乖離を抑えながら超過リターンを狙う「エンハンスト・インデックス運用」は、インデックス運用とアクティブ運用を代替・補完する“二刀流”の戦略として、世界の機関投資家や米国の個人投資家の間で支持を広げているという。日本においても「インデックスファンドの次なる選択肢」として、運用商品の「新定番」を狙う。

 土居邦彰取締役 投資信託ビジネス統括責任者らが記者発表し、ティー・ロウ・プライスの投資哲学や、米国市場の動向、新ファンドの特徴などを話した。主な内容は以下の通り。

◆アクティブ運用のトップランナー

-ティー・ロウ・プライスの強みは

(土居氏)(土居氏)

土居取締役 米国のティー・ロウ・プライスは1937年の設立だ。調査会社のモーニングスターから「アクティブ運用のトップランナー」という評価をいただいている。プロの投資家からも高く評価されており、米国の機関投資家から受託した米国株式のアクティブ運用残高は約81兆円で業界トップだ(米Pensions & Investmentsによる世界の運用会社を対象にした年次調査。2023年末)。

 運用会社にとって大切なことは、パフォーマンスを上げることだ。NISAのように20年、30年といった運用期間を想定した投資では、安定・長期的にリターンを上げることが重要になる。これを達成するための根幹にあるのが、企業文化だ。

◆顧客第一主義

-ティー・ロウ・プライスの企業文化は

土居取締役 創業者のトーマス・ロウ・プライス・ジュニアは、従業員に対して「規模の拡大を目指さず、常に顧客の利益を第一に考え、資産運用とそれに付随するサービスの提供に専念する」という書簡を送った。当社は、パフォーマンスを上げて、お客さまに貢献することを、第一に考えている。

 これを実現するために、規律ある運用管理を徹底している。マーケットの規模に比べてファンドが大きくなると、適切な運用ができなくなる。こうした場合に当社は、ファンドの残高を拡大することよりも既存顧客である投資家に提供するパフォーマンスを重視して、ファンドの新規受け入れを停止する。

 また、独立系運用会社として営業利益率が30%を超えるような強い経営基盤を確立しているので、お客さまの資産運用に真摯に専念できている。

 さらに、経営においては長期の視点で運用体制にコミットしており、リーマンショックやコロナショックのような危機の局面であっても、優秀な人員をしっかり拡充してきた。その結果、アナリストの企業カバレッジの厚みは、同業他社と一線を画するものになっている。

◆相互関税、ベッセント氏の存在感が高まり、安心感

-米国経済の見通しは

(永井氏)(永井氏)

永井基志運用本部株式運用戦略部長 ポートフォリオ・スペシャリスト まず、トランプ政権に対する受け止めを2点申し上げる。

 相互関税については大きな方針転換があり、中国との直接交渉では、財務長官のスコット・ベッセント氏がより大きな存在感を示した。ベッセント氏は、財務長官という立場もあり、講演の機会が多い。ロジカル、リーズナブルで、現実目線だ。彼が中心的な役割を担うのであれば、安心して見ていられるという印象だ。

 トランプ大統領について、市場関係者は当初、「マーケットを重視して行動する」と思っていたが、就任以降の政策発動により、こうした見方に懸念が生まれていた。しかし、相互関税の交渉の中で、トランプ大統領が金融市場の動向に注意を払っていることが確認できた。まだ政権のスタートから数カ月なので、今後も注意深く見守っていきたい。

◆経営者の信頼感が低下、実社会への影響を注視

-短期的な注目点は

永井部長 1-3月期の米国企業の決算動向だが、総じて良い内容だった。まず、個人消費関連だが、おおむね良かった。資本財・サービスについても、総じて底打ちや回復局面入りが確認できた。ただ、消費者の購買平均単価が少し落ちてきており、生活防衛色を強めた消費行動になっているかどうか、気になった。

 テクノロジー関連のうち、人工知能(AI)を除く汎用半導体は、用途が広く顧客が多岐にわたるため、景気を占う上で着目したいセクターだ。だいぶ在庫調整が進んでおり、回復感が出てきている。AIのインフラ投資については、今後伸び率が減速していくと見ている。ただ、1-3月期決算では、AI関連銘柄の新規受注は著しく強かった。

 統計で注目されるのが、「ハードデータ」と「ソフトデータ」の今後の動向だ。企業業績や鉱工業生産などの「ハードデータ」はこれまでのところ、弱くなっておらず、健全に推移している。一方、経営者の信頼感や消費者心理などの「ソフトデータ」は下向きになっている。

 今後数カ月かけて「『ソフトデータ』の傾向が、『ハードデータ』に反映されるかどうか」、「どの程度『ハードデータ』が悪化するか」-が注目される。現時点では判断が難しいが、引き続き注視していく。

◆M7が崩れても、米株指数は下げ渋る

-長期的な注目点は

永井部長 米国の株式市場の懐の深さを実感している。年初来から5月上旬までの騰落率を見ると、テスラがマイナス29%、アップルがマイナス21%など、マグニフィセント・セブンと呼ばれる銘柄が大きく下落した。しかし、こうした中であっても、NASDAQ指数はマイナス7%、S&P500はマイナス4%にとどまった。

 時価総額の大きいマグニフィセント・セブンの株価が下落すると米株全体が崩れると懸念されていたが、米株指数が小幅な下落にとどまっていることは、心強いことだ。米国には、マグニフィセント・セブン以外にも、魅力的な業種や銘柄があり、例えばこの間、生活必需品やサイバーセキュリティーなどの銘柄が上昇した。

 米国市場には、新興企業を育てる力がある。創業期にキャッシュフローが赤字の企業であっても、辛抱強く見守る、すばらしい投資家が存在しており、社会の隅々にまで、資本主義が浸透していることを感じる。

 現在の米国株式については、バリュエーションの高さを懸念する声がある。ただ、米国企業の収益性の高さを重ね合わせて考えると、ある程度、納得できる。10年、20年という長い年月をかけて積み上げてきたものなので、こうした基盤は容易には揺るがないだろう。

◆AI、さらなる労働生産性の改善につながるか

-AI投資の成果は

永井部長 最後に、AIがもたらすものについて、お話したい。現在、チャットGPTなどのAIの台頭もあり、米国企業の労働生産性の向上が加速している。

 さらに、今年の下期以降、AIを活用したさまざまな事例やアプリケーションが登場する予定だ。こうした新技術は、米国にとどまらず、世界の企業や消費者に等しく行き渡るものだが、米国には、新しいものをいち早く取り入れる「進取の精神」がある。生産性の改善がさらに続き、名目GDPの成長や、米国企業のEPSの拡大につながる可能性があると見ている。

◆長期の資産形成に、「コア型」が有効

-新ファンドの特徴は

永井部長 新ファンドの「ティー・ロウ・プライス 米国株式リサーチファンド 愛称:S&P500 Pro」は、ティー・ロウ・プライスの「米国ストラクチャード・リサーチ株式戦略」を採用しており、運用スタイルで見ると、「コア型」になる。「グロース(成長株)」でも、「バリュー(割安株)」でもない、特定のスタイルに偏らない運用だ。

 ゼロ金利の時代が終わった。インフレが復活し、金利のある世界になった。金利が上がったり、下がったりする中で、ある時は「グロース」が良かったり、ある時は「バリュー」が良かったり、優位な運用スタイルが頻繁に変わることが予想される。こうした中で、投資スタイルの変化や相場環境に運用成績が比較的左右されにくい「コア型」のファンドを、ポートフォリオの中核資産として長期で保有することが、個人投資家の資産形成において重要な投資手法になるだろう。

◆全天候型で、勝率8割

-ファンドの仕組みは

永井部長 新ファンドの運用手法は、シンプルだ。マクロ経済見通し等のトップダウンの要素は一切なく、ポートフォリオ全体を業種で分けて、それぞれの担当のアナリストが、見通しの良いと考える銘柄の組み入れ比率を高めに、相対的に見通しの悪いと考える銘柄の組み入れ比率を低めに配分、あるいは除いて、ポートフォリオを構築する。

 業種などによってポートフォリオを30のパーツに分け、業界に精通したチームヘッド級のアナリスト30人が調査、分析を担当する。S&P500の構成銘柄のうち約300銘柄に分散投資し、1銘柄の配分がS&P500の構成から大きく乖離しないように制限を設けている。また全体としての業種配分比率についても、常時S&P500指数に近い水準になるよう維持する。

 アナリストが分析する際には、世界中にはりめぐらせた調査体制を活用して、グローバルなサプライチェーンの動向や、競合相手の欧州やアジア企業の活動をチェックしている。

◆勝率重視、コツコツ積み上げる

-リターンの特徴は

永井氏 この戦略は単年度でインデックスに大きく勝つことではなく、どんな相場環境でも安定的に勝つこと、つまり「勝率」を重視した商品設計になっている。S&P500の上昇時でも下落時でも、インデックスのリターンから大きく乖離しない範囲で超過リターンを獲得することを目指している。単年度の超過リターンは大きくなくても、勝率を高めることで、長期では累積で高い超過リターンを得られる、との発想だ。

 この運用戦略は、1999年から米国本土で25年を超える長期の運用実績がある。その実績をもとに、今回国内で設定する新ファンドの信託報酬率を差し引いた後の実質リターンは、25年間の累積でインデックスに年率0.86%上回った。

 このファンドは「全天候型」の運用を目指している。晴れている日も、雨の日も、継続的にパフォーマンスを上げ、S&P500に対する25年間の勝率は約8割だった。

◆米国市場で拡大する「エンハンスト・インデックス」

-新ファンドの注目点は

(髙松氏)(髙松氏)

髙松浩二投信営業部ヴァイスプレジデント このファンドは、米国で1999年5月に運用を開始した運用戦略を採用している。当運用戦略は、2024年12月末時点の運用残高が約13兆円に上り、ティー・ロウ・プライスの中で、4番目に大きな運用戦略だ。当社のフラッグシップ(旗艦戦略)といえる。

 この戦略は、S&P500構成銘柄の組入比率に細かい修正を加えながら、長期的に少しずつ着実にプラスアルファを乗せていくことを目指している。こうした戦略を、業界では「エンハンスト・インデックス運用」と呼んでいる。日本ではまだあまり馴染みのない用語だが、米国では特にプロの機関投資家が活用しており、運用資産は右肩上がりで増えている。最近では個人投資家からも資金流入が増えており、その中で当社の戦略の残高は、米ファンド評価会社のエンハンスト・インデックス・カテゴリー全体の3割強を占め、トップシェアだ。

◆インデックスを上回るリターンを実現

-実績リターンは

髙松氏 過去約25年間の円ベースの年率リターンは、S&P500が年率9.1%だった。これに対して、この運用戦略は、日本で新規設定するファンドの信託報酬を控除した後でも年率10.0%のリターンになっている。

髙松氏 一般的に「アクティブファンドは、インデックスファンドに比べてコストが高い」と言われるが、「S&P500 Pro」では、アナリストの調査・分析に応じて組み入れ比率を柔軟に調整することで、常にポートフォリオの最適化維持に努める。このようなプロによる緻密なメインテナンスが当ファンドに付加価値を与えていると考える。「S&P500 Pro」が採用する運用戦略では、当ファンドの信託報酬を差し引いた後で、インデックスを上回るリターンを上げている。過去のデータであって、将来を予測するものではないが、「インデックスファンドの次なる選択肢」として、投資家への訴求力が高いファンドだと考えている。

髙松氏 新ファンドは、愛称を「S&P500 Pro」とした。米国ではプロの投資家に広く採用されている運用戦略であることに加え、運用のプロの目利きが付加されたファンドだ。既にS&P500をベンチマークとするインデックスファンドを持っており、「もう少しスペックの高い商品がほしい」と感じている投資家に提案したいと考え、ワンステップ上を目指す「Pro」と名付けた。インデックスファンド投資の次の選択肢として、インデックス運用とアクティブ運用の双方の長所を生かすエンハンスト・インデックス運用のメリットを、「S&P500 Pro」を通じて個人投資家の方々に広めていきたい。

 

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