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〔潮流底流〕菅首相、政権浮揚へ正念場=野党対決色、先行き不透明―国会開幕

<2021年1月22日>

2021/01/18 21:38

衆院本会議で施政方針演説に臨む菅義偉首相=18日午後、国会内衆院本会議で施政方針演説に臨む菅義偉首相=18日午後、国会内

 緊急事態宣言下で通常国会が開幕した。昨年9月の発足時は高支持率でスタートした菅内閣だが、新型コロナウイルス対応への不満が政権批判につながり支持率は続落。菅義偉首相は早くも正念場を迎えている。

 ◇首相に疲労感

 「『国民のために働く内閣』として全力を尽くしていく」。首相は18日の衆院本会議で、就任後初の施政方針演説を語気を強めて締めくくったが、全体を通じ淡々と読み上げる姿勢が目立った。

 首相が就任以来、最優先に掲げてきたのは「コロナ対策と経済の両立」だ。しかし、観光需要喚起策「Go To トラベル」の継続にこだわる姿勢は国民の目に「コロナ軽視」と映り、報道各社の世論調査で6割超あった内閣支持率は3割台まで下落した。

 関係者によると、首相は最近、疲れを見せる場面もあるという。周辺は「コロナ対策がうまくいかず、肉体的にも精神的にも疲労している」と明かす。演説前日の17日には周囲の助言を受け入れ、就任後初めて宿舎に終日こもった。

 ◇宣言延長不可避か

立憲民主党の代議士会であいさつする枝野幸男代表=18日午前、国会内立憲民主党の代議士会であいさつする枝野幸男代表=18日午前、国会内

 逆風にさらされる首相としては、通常国会で2020年度第3次補正予算案とコロナ対策の特別措置法改正案を2月初めまでに処理し、21年度予算案を確実に年度内成立させたいところだ。さらに、看板政策のデジタル庁設置のための関連法案などで成果を積み重ね、政権を浮揚させる青写真を描く。

 だが、首相の思惑通り進むかは定かでない。衆院議員の任期満了(10月21日)を控え、立憲民主党など野党は、緊急事態宣言で状況が変わったとして予算案の組み替えを要求したり、当初賛成をちらつかせた特措法改正案に慎重姿勢を見せたりするなど対決姿勢を鮮明にしている。

 再発令された緊急事態宣言の期限は2月7日だが、自民党内では既に「延長は避けられない」との見方が広がっている。実際に延長されれば野党が予算委員会での審議で政府批判を強めるのは間違いない。

 安倍晋三前首相や吉川貴盛元農林水産相らの「政治とカネ」をめぐる問題なども引き続き追及する構えだ。

 立憲の枝野幸男代表は18日の党代議士会で「来年の通常国会を政権与党として迎えるため頑張ろう」と述べ、09年以来の政権交代に意欲を示した。

 ◇ワクチンに活路

 「ワクチン接種は感染対策の決め手だ。態勢を強化することにした」。首相は18日夜、突破力を期待する河野太郎規制改革担当相に、ワクチン接種の総合調整役を担わせると自ら記者団に説明した。

 2月下旬にスタートさせるワクチン接種には、超低温冷蔵庫の配備や輸送網の整備、大規模接種会場の確保など課題が山積みだ。首相が最近、周辺に「厚生労働省が動かない」といら立ちをあらわにするなど準備は遅れているという。

 コロナ対応を「後手」と批判され苦境の首相にとって、ワクチンは政権浮揚へ文字通り「切り札」となり得る。接種が進んで感染を一定程度抑え込むことができれば、経済社会活動のアクセルを再び踏み込める。

 施政方針演説直後の河野氏起用に「演説で打ち出せばよかったのに」(閣僚経験者)との声も漏れたが、3月25日には東京五輪の聖火リレーが始まる。ワクチンが政局のカギを握る展開だ。(了)

 

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