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レナウン経営破綻、頼みの中国資本に誤算=老舗アパレル、時代に対応できず
<2020年5月22日>
2020/05/18 20:17
老舗のアパレル大手レナウンが民事再生手続きに入り、新型コロナウイルスの感染拡大後、上場企業としては初めて経営破綻した。バブル期に世界最大級のアパレルメーカーへと上り詰めたが、その後は時代の変化に対応できず低迷。頼みの綱だった中国企業との提携も誤算が続き、社名に託した「栄光」を取り戻せなかった。
◇「柔軟性なかった」
「時代に合わせてやり方を変える柔軟性がなかった」。大手商社の関係者は、レナウンについてこう語る。バブル期の成功体験があだとなり、新たなブランドや新規ビジネスも育てられなかった。
レナウンは1902年創業。22年に来日した英皇太子が乗った巡洋艦にあやかって商標に採用し、後に社名に取り入れた。
表舞台に躍り出たのは60年代。同社のテレビCM曲の「ワンサカ娘」が一世を風靡(ふうび)した。ゴルフの傘のマークで有名な「アーノルドパーマー」は飛ぶように売れ、バブル期の90年12月期は売上高が2317億円に達した。
その後は衰退の一途をたどった。90年代後半以降、ファーストリテイリングの「ユニクロ」に代表されるファストファッションが台頭。インターネット通販も広がり、レナウンが主力販路とする百貨店は若い世代を取り込めなかった。
売上高がバブル期の4分の1程度に縮小する中、レナウンは2004年、グループ会社の紳士服大手旧ダーバンと経営統合し、事業のてこ入れを図った。だが再生はできず、最後に頼ったのが中国繊維大手の山東如意科技集団だった。
◇起死回生の中国進出失敗
レナウンは、山東如意との提携により、自社ブランドで中国市場に大量出店する起死回生の絵を描いた。10年5月の記者会見で、北畑稔社長(当時)は「日中企業提携の成功例として記憶されるようベストを尽くしたい」と抱負を語った。
しかし、中国への出店を主導した山東如意は「立地や賃料の市場調査がなく、一等地に店をつくらなかった」(レナウン関係者)。1000店舗以上とした目標にはほど遠く、100店程度をピークに撤退した。
追い打ちを掛けるように米中貿易摩擦が勃発し、筆頭株主である山東如意の体力は低下。レナウンの19年12月期連結決算(10カ月決算)は2期連続の赤字に沈んだ。山東如意子会社から支払いがなく、53億円の貸倒引当金を計上した影響が大きい。
山東如意側は「米中摩擦で中国経済が厳しく、払えない」と説明したという。今月も回収に向けた交渉を続けたが、新型コロナによる百貨店の一斉休業で現金が入らず、資金繰りに行き詰まった。
レナウンは店舗販売を続けるものの、不採算店の整理・統合は避けられない情勢だ。経営破綻でブランドの価値が毀損(きそん)しており、スポンサー探しは容易ではない。英語で「名声」「栄光」の意味があるレナウンは時代に対応できないまま、落日を迎えた。 (了)