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トヨタ、新型コロナで苦境=販売減、リーマン以上―危機克服へ正念場

<2020年5月15日>

 日本の産業界をリードするトヨタ自動車が、新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に直面している。経済活動の停滞で新車販売が落ち込み、2021年3月期は本業のもうけを示す連結営業利益が前期比8割減少する見込み。打撃の大きさは、世界中の需要が蒸発した08年のリーマン・ショックをも上回る。危機を克服し、再び成長軌道に戻ることができるか、トヨタは正念場を迎えた。

 ◇年明けに様相一変

 「リーマンの時よりも販売落ち込みのマグニチュードは大きい」。トヨタの豊田章男社長は、12日のオンライン記者会見でコロナ禍の打撃に触れ、険しい表情を浮かべた。

 リーマン危機直後の09年3月期には、グループ全体の世界販売が前期比で約110万台減と急激に落ち込んだが、21年3月期の減少幅は約155万台に達する見通しだ。

 トヨタは19年末時点で、20年の世界販売を過去最高の1077万台と予想していた。しかし、年明けに中国で新型コロナの流行が始まると様相が一変。混乱は瞬く間に国境を越えて広がり、人の移動制限や部品供給網の寸断に伴って、国内外の工場が続々と停止に追い込まれた。

 稼ぎ頭の米国では3月23日から全工場が止まり、今月11日にようやく段階的に操業を再開。インドやブラジルなど新興国では今も停止が続き、お膝元の国内では6月まで生産調整を行う。

 近健太執行役員は「販売は4月を底に徐々に回復し、年末から年始にかけて通常に戻る」とのシナリオを描く。ただ、「多くの地域でロックダウン(都市封鎖)が続き、先々を見通すのは非常に難しい」(同氏)のが現状だ。感染動向や経済の先行きを含め、事業環境の不透明感は拭えない。

 ◇危機で体質強化

 一方、リーマン危機当時と比べ、トヨタの収益性は格段に向上している。09年3月期は4610億円の営業損失を計上し、71年ぶりの赤字に転落した。純損益は4369億円の赤字だった。これとは対照的に、21年3月期は5000億円の営業黒字を死守する計画だ。

 豊田氏は「09年の就任以降、数多くの危機を乗り越える中で、企業体質は少しずつ強くなった」と説明。大規模リコール問題や、東日本大震災といった難局があっても、お家芸の原価改善を地道に進めた成果が表れた格好だ。

 リーマン危機の直後には、黒字化を急いで研究開発費や設備投資の削減にも手を付けた。しかし、豊田氏は「スリムになったが必要な筋肉まで落としてしまった」と反省の弁を語る。現在は自動運転や電動化などで、自動車産業が「100年に1度」とされる激変期にある。次世代技術の開発で世界のライバルに後れを取れば、将来の競争力低下を招く。

 豊田氏は、逆風下でも「未来への種まきではアクセルを踏み続ける」と強調。ライバル各社も苦闘する中で「コロナ後」の世界をにらむ。(了)

 

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