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デロイトトーマツ矢守氏:新型コロナ、情報も急拡散=慎重な対応重要
<2020年4月17日>
2020/04/13 16:42
デジタル分野と社会の関わりに詳しいデロイトトーマツグループの矢守亜夕美マネジャーは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、デマを含む情報の急激な拡散が起き、不安が広がりやすくなったとして、個人や企業の慎重な対応が重要になると指摘した。インタビューは10日、オンラインで実施。主なやりとりは次の通り。
―新型コロナをめぐり不確実な情報が出回っている。
2002年以降のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時と比べ、世界の情報伝達の度合いは68倍に増えたと分析している。インターネット交流サイト(SNS)が普及し、1人が受け取る情報、発言の全体数が急増し、個人でも多大な情報を拡散できるようになった。助け合いにつながる情報が増えたが、真偽が不確実な情報も拡散している。感染拡大のように情報が急激に拡散する「インフォデミック」が懸念される。
2月末以降のトイレットペーパー不足は、「中国産が品薄になる」という虚偽のツイートではなく、それを否定する「正しい投稿」がかえって不安をあおった面もある。感染したとされる人の実名を名指しする投稿も見られる。真実であったとしても拡散して良い結果につながらないことがSNS上では起きやすい。利点と副作用が表裏一体だ。
―情報拡散への対応は。
16年の米大統領選以降、「フェイクニュース」をめぐる問題意識が世界で強まった。新型コロナでは国内外で真偽を確認する「ファクトチェック」の枠組みが出ている。感染対策の医療専門家がネットで若者などに発信し、不安に対処する動きも進んでいる。一方、公的機関や政府がニュースなどの情報を「正しい」「正しくない」と判断するのは監視や検閲につながりかねず、各国ともに対応を模索している。
―個人が対応できることは。
デマは事案の「importance(重要性)」×「ambiguity(あいまいさ)」で流通量が決まるとされる。重要性は変えられず、あいまいさを小さくすることでしか対応できない。(感染拡大という)危機時には、分かりやすいシンプルな表現が評価されがちだが、一人ひとりがすぐに判断を付けず、あいまいさに耐え、情報を見極めることが求められる。「接した情報が正しいのか」「誤情報をばらまくのではないか」という慎重な姿勢でSNSに向き合うことが大切ではないか。
―企業は。
企業の対応も難しい。会社のSNSでは、個人に運用を任せているケースも多い。平時ならば個人の人柄が表れる運用は人気を集めやすいが、緊急時はリスクになり得る。正しいと思って拡散した情報、不適切な発言が問題となる。運用ガイドラインの見直しや一時停止が課題になる。
―日本でもオンライン会議の機会が増える。
同じ企業でも社員、部署によってリテラシーが大きく異なる。個別の企業、業界で使い方が確立されていく。できる限り、ガラパゴス的にならないことが大切だ。業界ごとに文化、使い方が全く異なるとオンラインの意味が薄い。オンライン・サービスを提供する事業者はこれまで以上にセキュリティー、プライバシーへの配慮が必要になる。
―日本の組織が変わる機会になるか。
日本の企業、官庁は対面、紙での決裁を重視し、ITが浸透しにくい面があった。感染拡大という厳しい事態だが、会議のオンライン化や業務のIT化が進めば、そういったサービスを扱う国内のスタートアップ企業にとっては追い風になる可能性もある。データの共有化、共通化、標準化が重要になり、政府のデジタル経済ルール策定の在り方が注視される。(了)