マーケットニュース

日銀、世界的な緩和競争を警戒=追加策ためらえば円高リスク

<2019年7月26日>

2019/07/18 14:05

 

 米中貿易摩擦など世界経済の先行き不透明感の強まりを背景に欧米などの中央銀行が金融緩和スタンスを強めている。日銀は「現在の大規模な金融緩和を粘り強く続けていく」(黒田東彦総裁)構えだが、欧米が緩和に踏み切る一方で、日銀が緩和をためらい様子見を決め込めば円高を招く恐れが強い。ただ、マイナス金利拡大など一段の追加策は副作用も大きく、日銀では、欧米に巻き込まれる形で世界的な緩和競争に発展することへの警戒感が強まっている。

 「成長持続へ適切に行動する。やや緩和的な金融政策が必要な条件が整っている」。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は16日、パリの講演で7月末の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げする可能性を強く示唆した。

 米経済は雇用環境が底堅く、株式市場でもダウ工業株30種平均が最高値圏で推移しており、日銀内からは「米国は今、本当に利下げが必要な状態なのか」(幹部)との声も聞かれる。

 しかしトランプ大統領は「利下げをしていれば(成長ペースは)ロケットのようになっていた」とFRBをけん制。市場では7月末の予防的利下げを「完全に織り込んだ状態」(外資系証券)となっている。

 欧州でもドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の後任に、金融緩和に積極的とみられるラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事の就任が決定。緩和路線の継続が視野に入る。

 これに対し日銀は4月に大規模な金融緩和の継続期間を示す政策指針について「当分の間」から「少なくとも2020年春ごろまで」と修正した。これは政策指針の明確化という位置づけで、緩和強化ではないが、日銀も欧米中銀と歩調を合わせる形で「ハト派」をアピール。日銀だけ緩和に消極的という印象を少しでも薄める狙いがあった。

 背景には2008年のリーマン・ショック後に海外中銀との協調利下げを見送り、その後円高に見舞われて「日銀は対応が後手に回った」との批判を浴びたことがある。09年に入りコマーシャルペーパー(CP)や社債の買い入れなど異例な策を打ち出すが、「いったん対応が遅いという印象を持たれると、思い切った政策を打ち出しても小出しで遅過ぎると批判された」(日銀OB)というトラウマは今も大きい。

 為替市場では、欧米中銀が緩和スタンスを強めているにもかかわらず、今のところ円高圧力は限定的。ただ、市場の雰囲気は突然変わる可能性があるだけに、日銀も神経をとがらせている。万一、大幅に円高が進めば緩和圧力が一気に高まることも想定される。

 黒田総裁は追加緩和の具体的な手段として(1)マイナス金利の拡大(2)長期金利操作目標の引き下げ(3)国債など資産買い入れの拡大(4)資金供給量の拡大-の四つを挙げ「これらを組み合わせることを含め、状況に応じて適切な方法を検討していく」と説明している。

 ただ、マイナス金利の拡大は地方銀行などの収益悪化に拍車をかけることが懸念される。また、長引く量的緩和の拡大で日銀の国債保有額は400兆円を突破し、発行全体の4割強に達しており、財政規律を緩ませるとの指摘もある。

 このため、欧米との緩和競争に巻き込まれた場合、どこまで実効性のある追加策を繰り出せるのか懐疑的な見方も根強い。日銀としては、マイナス金利や資金供給量の拡大など「実弾」を伴う緩和カードをなるべく温存しながら、早期に対応が必要になれば「20年春ごろまで」としている政策指針の延長などを選択する可能性もありそうだ。(経済部・宇山謙一郎)

 

メールマガジン
最新のリアルタイムマーケットニュースとデータをお手元に
よく読まれている記事
メルマガ採録記事一覧

メルマガ採録記事一覧へ

メルマガ一覧

過去分を表示する

関連製品 & お知らせ