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20年春闘、脱「横並び」模索=業績悪化、足並み崩れ―賃上げどこまで

<2020年2月14日>

2020/01/28 19:00

 

経団連労使フォーラムで講演する連合の神津里季生会長=28日午後、東京都千代田区経団連労使フォーラムで講演する連合の神津里季生会長=28日午後、東京都千代田区

 2020年春闘が労使のトップ会談で事実上幕を開けた。先行きの不透明感が企業業績に影を落とす中、賃上げの勢いを維持できるかが最大の焦点だ。賃上げ継続で一致する労使だが、格差是正を訴える連合と、業績に応じた賃上げを求める経団連の溝は深い。政府が賃上げを要請する「官製春闘」は既に形骸化しており、労働組合側でも「横並び」の要求からの脱却を模索する動きが広がってきた。

 ◇格差是正と個別対応

 「この20年間で格差が開いてしまった。しぼんだ日本を膨らませるのに、賃上げは非常に大きい」。連合の神津里季生会長は28日のトップ会談後、こう強調した。

 連合は大手と中小、正規と非正規の格差是正を重視。基本給を底上げするベースアップ(ベア)にこだわり、集団交渉による社会的な賃上げ相場の形成が必要だと訴える。企業内最低賃金の対象範囲を広げる従来方針に加え、時給1100円以上などとする目標を初めて示した。

 これに対し経団連は、ベアを容認しつつ、業界内でも企業間の業績にばらつきがあるとして、各社の実情に応じた賃上げを求めた。政府の賃上げ要請に配慮し、18年春闘では指針に明記した数値目標を2年連続で見送った。企業内最低賃金の協定交渉も個別労使に委ねるべきだとの立場だ。

 加えて、働き手の意欲を高めるために実態に合わなくなってきた「日本型雇用システム」の見直しを提案。新卒一括採用見直しなど、中西宏明会長がかねて主張してきた慣行是正の検討を指針に盛り込み、中西色を打ち出した形だ。中西氏は会談後の講演で、「担う役割や仕事で処遇の違いが明確になり、全社員一律の要求は適さなくなってきた」と連合に反論した。


 ◇変わる様相

 こうした中、組合側には業績の悪化や厳しい事業環境などを背景に「横並び」から脱却する動きが出始めた。きっかけは、春闘相場をリードするトヨタ自動車労組による方針転換だ。

 脱・横並び交渉を先導するトヨタ労組は前回の春闘で、ベア要求額を非公表とする方式に変更。上部組織の自動車総連のほか、マツダ労組も同じ方式をとった。自動車総連幹部は「多くが上や横を見て水準を決めていたが、自主的に決める労組が増え、中小企業の賃上げ幅が大きくなった」と話す。

 トヨタ労組は今回、人事評価に応じたベア配分額の差を広げるよう要求する。ホンダの労組もベア要求額を引き下げる一方、意欲を評価する制度分の増額を求める方針に見直した。

 また、電機メーカーなどの労組でつくる電機連合は回答のばらつきを初めて事前に容認する方針を打ち出した。慣例の集団交渉は堅持する構えだが、労働問題に詳しい日本総研の山田久副理事長は「春闘の様相が変わってきた」と指摘する。

 政府は14年春闘以降、7年連続で賃上げを促してきたが「形骸化している」(山田氏)のが実情だ。自動車大手労組幹部は「ベアが進む効果はあるものの、それ以上のことはない」と距離を置く。
 政府が当初主導する形で6年続いた賃上げの勢いを保ち、成長に向けた新たな交渉の在り方をどのように再構築するか。労使は新たな道を探り始めた。(了)

 

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