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「第2段階」難航必至=構造改革焦点に―米中貿易協議
<2019年12月27日>
2019/12/14 18:08
米中両国が貿易協議「第1段階」で正式合意した。トランプ米大統領は来年秋の大統領選を視野に、本丸に位置付ける中国の産業構造改革に切り込む「第2段階」の交渉を急ぐ考えだ。一方、中国は構造改革に強く抵抗しており、協議は難航必至とみられている。
◇農家にアピール
「非常に大きな合意に達した」。トランプ氏は13日、中国から巨額の米農産品購入を取り付けた第1段階合意を自賛し、支持基盤である農家に向けて成果をアピールした。
米中は農業分野のほか、知的財産権や技術移転強要、金融サービス、為替などの問題で一致。来月には双方の閣僚級がワシントンで合意文書に署名する見通しだ。
ただ、トランプ氏の視線は既に、より注目度の高い第2段階に移っているようだ。選挙前の最も効果的な時機を見計らって合意を発表し、支持率アップにつなげる―。再選を強く意識する同氏がそのようなシナリオを描いていても不思議ではない。
◇思惑が浮き彫り
第1段階は対立の小さい分野に絞って合意にまでこぎ着けたものの、それでも両国の発表ではそれぞれの思惑が浮き彫りになった。
追加関税の撤回を重視する中国は、米国が「段階的撤回」に同意したと強調。米国は追加関税の一部を引き下げるとしたものの、撤回には言及しなかった。米国は先月、段階的撤回に異論を唱えたが、中国は自国の声明に盛り込むことで既成事実化を図った。
一方、中国による米農産品購入では、中国が数字を出さなかったのに対し、米国は年400億~500億ドル(約4兆4000億~約5兆5000億円)に達すると説明。これは貿易摩擦が激化する前の水準の約2倍であり、中国がこれほど多くの農産品を実際に消費できるかは不透明だ。それでも米国は金額の開示にこだわり、事実上の目標に設定した。
◇産業政策の変更迫る
第2段階で交渉の焦点になると予想されるのが、中国の産業構造改革だ。国有企業への補助金支給を通じた産業育成策を米国は問題視しており、見直しを求めている。
ただ、国家主導の産業育成策は習近平指導部の進める「製造強国」建設と密接に結び付いており、外圧に負けて方向転換を迫られる事態になれば、習指導部の求心力にも影響を与えかねない。中国は要求を突っぱねる構えを崩しておらず、持久戦に持ち込むとの観測も取り沙汰されている。
13日のニューヨーク株式相場は合意発表を受けて急伸したものの、内容が伝わると値を消し、ほぼ横ばいで引けた。期待先行の米中合意を象徴するような値動きだった。(北京、ワシントン時事)