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楽天証、独立アドバイザーと連携強化=資産形成層の開拓狙う

<2019年10月25日>

2019/10/18 11:36

 

 インターネット専業大手の楽天証券(東京)が独立系金融アドバイザー(IFA)との連携を強化している。特定の証券会社に属さないIFAを介して顧客の相談に丁寧に応じられる体制を整備。対面店舗を持たない弱みを補いつつ、「老後資金2000万円問題」で資産形成に関心を高める現役世代のニーズを取り込んでいく狙いだ。

 ▽中間層の資産形成を支援

 同社は2008年10月にIFA法人との連携事業を開始。IFAを通じての預かり資産は堅調に増加し、現在、全体の約1割を占める。

 楠雄治社長は「働く中間層の資産形成をきちんと支援していきたい」と強調。個人の金融資産1800兆円余りの大半が現金・預金や保険にとどまる日本で、中間層の資産運用ニーズに伸びしろが大きいと見込んでいる。

 今年5月には、IFAとの連携事業で、個々の取引に対する手数料を受ける従来の「コミッション型」ではなく、顧客の預かり資産額に対し年1.0%の手数料を受ける「フィー型」の料金体系を国内証券会社として初めて導入した。

 コミッション型では、ノルマを課された証券会社の営業担当者が、長期的視野で運用すべき投資信託などを早期に売却し、別の商品を購入するよう促すといった「回転売買」を勧める弊害が指摘されてきた。フィー型は、顧客の資産を長期的に増やす動機をIFAが共有しやすいため、信頼性向上が期待できるとみている。

 ▽個人金融「最後のフロンティア」

 IFA法人大手GAIAの中桐啓貴社長は「個人の資産運用で先行する米国では、すでにフィー型が浸透している」と説明し、日本でも定着していく可能性があるとの見方を示す。

 米国でも一時、IT機能で自動的に資産構成を提案する「ロボアドバイザー」の登場に伴い、対面相談の需要がなくなるシナリオがささやかれた。しかし同社長によると、「複雑なお金の相談は人にしたいもので、対面需要も伸びてきた」という。

 同社長は「IFAは個人向け金融サービスの最後のフロンティア(未開拓分野)だ」と話し、日本でネット証券とIFAの連携が今後一層活発化していくと予想する。

 一方、対面証券大手の幹部は、証券会社とIFAの連携について「特定の証券会社と契約していれば、顧客からは実質的にその営業担当者とみなされる」とクギを刺す。

 IFAが無理な販売などを行った場合、証券会社が訴訟を抱えるリスクがあるほか、IFA側に法令順守を徹底させるための教育も不可欠となるため、同幹部は「証券会社のコストは大きくなる」と距離を置く。

 またフィー型の料金体系では、フィーを上回る運用利回りを確保できなければ顧客に利点はない。現役世代を資産運用に向かうよう促せるかには不透明が残るといえそうだ。

 IFAとの協業で的確な助言を行い、顧客の信頼を勝ち取ることができるのか。楽天証の取り組みの成否が注目される。〔本記事に対するご意見などを下記のアドレス宛て電子メールでお送りください。時事通信社〕メールアドレス【station@grp.jiji.co.jp】(了)

 

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