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黒田総裁失言で露呈した日銀の手詰まり(窪園博俊解説委員)

<2022年6月10日>

こんにちは。JFSメルマガチームの林千晴です。
つい先日、新幹線を利用する機会がありました。ホーム内が混雑していて「何事だ?」と見渡すとドクターイエローが停車中。ドクターイエローは別名「新幹線のお医者さん」と言われ、見ると幸せが訪れるという都市伝説があります。どんな幸せが訪れるのか楽しみです。
それでは本日の記事をどうぞ。

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2022/06/08 12:45

黒田総裁失言で露呈した日銀の手詰まり(窪園博俊解説委員)

講演する日銀の黒田東彦総裁=6日、東京都千代田区講演する日銀の黒田東彦総裁=6日、東京都千代田区

 黒田東彦日銀総裁が講演での一部発言が批判を招き、陳謝に追い込まれた。講演趣旨がうまく伝わらなかったのは、いわゆる「日銀文学」のうっかりミスとみられるが、その背景には「リフレ政策の強引さと行き詰まりがある」(日銀OB)と考えられる。「悪い円安」も助長するリフレ政策は「意固地に続けず、柔軟に見直した方がいい」(大手邦銀アナリスト)だろう。

 批判を招いたのは、6日の講演で「家計の値上げ許容度が高まっている」との発言だ。アドリブで飛び出したものではなく、講演テキストをそのまま読み上げた。これが切り取られ、結果的にネット上で批判を浴びた。同総裁は7日の参院財政金融委員会に呼ばれ、「必ずしも適切な言い方でなかった」と釈明。同日夕は記者団に「誤解を招いた表現となり申し訳ない」と陳謝した。

 日銀の講演テキストや声明文などで駆使される用語やフレーズは、「日銀文学」と称される。伝統的に無謬(むびゅう)性が重視され、かつて有力な企画幹部は「どこをどのように切り取られても問題にならない」と力説していた。従って「切り取られるリスク」への備えは十分なはずが、それでも問題になったのはうっかりミスと受け止められる。

 現在のコストプッシュの値上がりは、大半の家計には打撃であり、これを「許容している」と評するのは、一般的な感覚に照らすと違和感を持たざるを得ない。実際、日銀の「生活意識に関するアンケート調査」では、物価高を実感する家計が増大すると同時に「景況感」と「暮らし向き」の判断は悪化する一方であるからだ。家計はコストプッシュの全面的な物価高に困窮かつ諦観しているのが実態であろう。

 従って「許容」のフレーズは、消費者感情に照らすと選択ミスと言わざるを得ない。ミスの背景は、行き詰まる現行リフレ政策を強引に続けているからであろう。もともとリフレ政策は「物価を強引に引き上げる」という本質部分に無理がある。これまで物価上昇で空振りが続いたのは、日銀には不運だったが、家計は物価高の打撃を受けずに済んだ。日銀は空振りしたおかげで、結果的に家計から批判されずに済んだ、とも言える。

 ところが、日銀の狙った形ではないが、コストプッシュで実際に物価は上がり、家計は打撃を受けた。家計は、コストプッシュであろうがなかろうが、物価高を歓迎しないものだ。それでも日銀は、(良し悪しはともかく)物価高で家計のインフレ期待が高まり、値上げを受け入れると企業は価格引き上げが容易になり、リフレ政策が奏功して賃金主導の良い形での物価高が実現する、と期待したのだろう。

 そうしたシナリオが表現の選択ミスにつながったとみられるが、残念ながら「現行リフレ政策が賃金主導の良い形での物価高をもたらすチャネルはない」(先の日銀OB)のが実情だ。むしろ、現行政策を続けるほど内外金利差は拡大。コストプッシュの物価高を助長する「悪い円安」が進む弊害が大きい。意固地に続けると「消費者のさらなる批判を受け、政治的な反発も強まる悪循環に陥る」(同)とみられる。(窪園博俊解説委員・6月8日)(了)
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本日もメールマガジンをご覧いただき、ありがとうございました。素敵な週末をお過ごしください。 林

 

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