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「非常時」の財政とは

<2021年11月5日>

こんにちは。JFSメルマガチームの中島 知乃(なかしま ともの)です。
先日ふらっと書店に立ち寄ったところ、2022年版のスケジュール帳が大きく売り出されておりました。定番のものから変わり種のものまで、ワンフロアを占めるほど豊富なバリエーションに驚いてしまいました。最近は紙のスケジュール帳をあまり利用していませんでしたが、手元に形として残るものとして来年は使ってみようかと検討しています。
それでは、本日の記事をどうぞ。

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2021/11/02 12:00

〔世相実相〕「非常時」の財政とは

 「政治というのはお金を使いたがるので防波堤が必要だ」

矢野康治財務事務次官
矢野康治財務事務次官

 1996年、日銀法改正を議論する政府の審議会で、ある憲法学者がこう指摘した。「放漫財政への歯止めの意味からも日銀の独立性確保は不可欠」という主張につながっていくこの発言は、審議会の議事録に残されている。「政治は金を配る欲求が強い」との認識はいつの時代でも一般的だ。

 しかし、国家の懐具合が怪しくなり、国民の監視も厳しくなってくると単純な浪費は難しい。そんなとき、「今は非常時だ」というセリフはちゅうちょなくお金を使える格好の口実となる。

 ◇破綻しない条件

 今回の総選挙は、「中小企業への給付金強化」「子供一人に10万円の配布」「所得税の免除」など大盤振る舞いのPR合戦だった。

 「ばらまきではないのか」という批判に対しては「今は非常時だ」という答えが用意されている。確かに新型コロナウイルスの感染拡大に伴い生活が困窮した世帯に対する支援は必要だが、所得制限も設けずに給付された現金が消費に回らず貯金を増やしただけというのも事実。

 そんな実態に対する批判的な論考が月刊文芸春秋に掲載された。筆者は財務省の矢野康治事務次官。いわく「バラマキ合戦のような政策論を聞いていて黙っているわけにはいかない」「このままでは日本が沈没してしまう」

 この人物は財政再建強硬派として知られる。「総理指示だからといって簡単に通すな」と部下たちに厳命。「そんな形をとれば予算が決まるというのは、げすの発想であり、官邸主導のはき違えだ」とまで言い切ったことも。

 各省庁がコロナに便乗、予算獲得のため案件を首相に上げ、「これは官邸の意向」などとして財務省に指示してもらう手法が一部に見られたことを意識しての発言だった。

 矢野次官の論考に対して自民党などからの批判は強く、高市早苗政調会長などは「自国通貨建てで国債発行ができる限り、デフォルト(財政破綻)しない」と強調した。

 ただ一般的に、この論理は経常収支黒字が中長期的に続き、かつ中央銀行は金融緩和政策を維持することが前提となる。今の日本はこの条件を満たしているが、ずっと続くのかは保証されていない。

 例えば、日銀は物価目標2%が達成されれば現在の異次元緩和から足を洗うことにしている。自民党のヒアリングに対して日銀幹部は断言した。

 「われわれは物価上昇率が安定的に2%になるまでは金融緩和を継続するが、それが実現すれば国債の買い入れはやめる。目標達成後まで日銀を当てにしてもらっても困る」

 矢野次官は周辺にこんなことを漏らしている。

 「与党にも、下手をすると財務省内にも、『配っておけば、多過ぎることへの批判はたいしたことはない。むしろ配ってないことへの批判が怖い』と保身に基づく発想がまん延しているのではないか」

 ◇問われる財務省

 財政の文脈で「非常時」という言葉が使われるようになったのは、33年度予算が前年度比5割増となったことを契機とする(松元崇「恐慌に立ち向かった男高橋是清」)。この時は予算の3分の1を軍事費が占めていて、この削減に失敗した日本は戦争へと突き進んだ。

 コロナとの戦いという非常時が続く中、選挙後には2022年度予算の編成が待つ。財務省の事務方トップとして、「保身に基づく発想」を排除できるか。次に姿勢が問われるのは矢野次官に率いられた財務省自身になる。(ジャーナリスト・軽部謙介)
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本日もメールマガジンをご覧いただき、ありがとうございました。お体にはお気をつけてお過ごしください。来週もよろしくお願い致します。 中島

 

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