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EUの排出量取引制度拡大案に加盟国が難色示す

<2021年7月27日>

こんにちは。JFSメールマガジン担当の松原蒼空(あおぞら)です。
紆余曲折を経て、オリンピックがついに開幕しました。無観客になったことで、開催国が日本である感覚が薄まりましたが、日本代表選手たちが次々にメダルを獲得しているというニュースを見ると、うれしい気持ちになります。涼しい部屋で観戦するのも悪くないですね。それでは、今週の記事をどうぞ。

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2021/07/26 06:54

〔欧州週間経済動向〕「黄色いベスト」復活に懸念=EUの排出量取引拡大

AFP時事
AFP時事

【ブリュッセル時事=岩田馨】欧州連合(EU)欧州委員会が、気候変動対策の一環で打ち出した「排出量取引制度(ETS)」の適用対象拡大案に加盟国が難色を示している。燃料価格高騰を招き市民生活を直撃しかねないためで、フランスでは反政府抗議デモ「黄色いベスト運動」の復活も懸念されている。

 ◇暖房、車燃料に賦課

 「簡単にできるものは何もない。血のにじむような厳しさになるのは分かっている」。欧州委は14日、2030年に温室効果ガス排出量を55%削減(1990年比)するEUの新目標達成のための包括的な対策パッケージを発表。気候変動対策を統括するティメルマンス上級副委員長は記者会見で、対策実行に向けて待ち受ける困難さに覚悟を示した。

 パッケージには、35年までにEU域内でガソリン車やディーゼル車の新車販売を事実上禁じることや、域外からの輸入品に「炭素価格」を賦課する「炭素国境調整措置(国境炭素税)」導入などが盛り込まれた。いずれも実現へのハードルは高いが、とりわけEU内で調整が難航しそうなのがETSの適用拡大だ。

 ETSでは、対象となる域内企業に対し自社の温室ガス排出量に相当する「排出枠」を入札や市場取引で毎年確保するよう義務付けている。排出枠の発行総数を段階的に減らすことで排出削減を促す仕組みだ。現在は鉄鋼や石油精製、発電、航空輸送など域内排出量の約4割をカバーしている。

 欧州委は今回、ここに海上輸送を加えることや、建物の暖房や車の燃料を対象にした新たな排出量取引制度を別枠で設ける案を発表した。しかし加盟国からはこの新制度に疑問符が付けられた。

 中でもフランスは15日、環境連帯移行省が声明を出し「フランスは、この措置の妥当性や、家庭や小企業に与える影響を懸念している」とさっそく異議を唱えた。新制度で「排出枠」確保を義務付けられるのは燃料供給事業者だが、そのコストは製品価格に転嫁され、低所得者の生活や小規模事業者の経営に打撃を与えかねないというのがその理由だ。

 ◇「政治的自殺」

 特にフランス政府が危惧するのは、燃料増税に端を発し18年11月から全国に拡大した反政府抗議デモ「黄色いベスト運動」の復活だ。22年4月には仏大統領選を控えるだけに、ポピュリスト勢力を利する展開を防ごうと神経をとがらせている。

 マクロン仏大統領に近い欧州議会のカンファン環境委員長(仏選出)は、今回の対策パッケージ発表の前から、欧州委に「間違いを犯さないように。われわれはフランスでそれを経験した」と訴え、黄色いベスト運動騒動の二の舞を避けるよう要求。車や暖房の燃料へのETS適用は「政治的な自殺行為だ」とまで語り、反対姿勢を示してきた。

 これに対しティメルマンス氏は、「私は政治家だが、政治的な自殺はしない」と反論。低所得者や小規模事業者への影響を緩和するため、EU予算に7年間で722億ユーロ(約9兆3600億円)の新基金を設け対応策を講じることを強調する。

 基金は新制度のETS収入の一部を財源とし、電気自動車(EV)購入や充電設備設置、暖房設備の効率化などへの補助金として加盟国を通じて給付することが想定されている。

 ただ、20日に開かれたEU加盟国の環境相会議では、フランス以外からも異論が相次いだ。今年後半のEU議長国を務めているスロベニアのビジェク環境相は、「かなり多くの懸念が示された。相当難しい問題になる」と指摘。欧州委にさらなる説明を求めた。22年1月から半年間は、フランスがEU議長国に就くこともあり、ETS適用拡大をめぐる加盟国と欧州委とのせめぎ合いが激しくなりそうだ。(了)
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今週もメールマガジンをご覧いただき、ありがとうございました。台風8号が迫ってきているようですので、どうかお気をつけてお過ごしください。 松原

 

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