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海運市況が異例の高値 コロナ禍の巣ごもり特需で

<2021年5月18日>

2021/05/17 13:01

〔商品ウオッチ〕海運市況、巣ごもり特需で異例の高値=中国の輸入増も押し上げ

AFP時事
AFP時事

 新型コロナウイルスの影響による海上物流の逼迫(ひっぱく)を受け、海運市況が異例の高値で推移している。コロナ禍で発生する世界的な巣ごもり特需や、いち早く経済を再生させた中国の資源・穀物の輸入増大が主な要因だ。ただ、海上運賃の高騰が長引くようだと、コスト増を背景に、企業の収益悪化や経済回復の足かせにもなりかねない。

 ◇3月のコンテナ運賃、前年比2.9倍

 在宅勤務の浸透や外出制限による巣ごもり生活の定着などに伴い、国際物流の要となる海上輸送が活発化している。

 コンテナ船では、ベンチマークとなるアジア発米国行きの北米航路の荷動きが大きく伸びている。日本海事センターによると、同航路の3月のコンテナ輸送量は前年同月比78.1%増の181.5万TEU(1TEUは20フィートコンテナ1個分に相当)と急増し、9カ月連続でプラスとなった。また「上海―ロサンゼルス」間の運賃は、20フィートコンテナ1個4130ドルと前年比2.9倍となり、過去7年間では最高値水準にある。

 大型経済対策が相次ぐ米国で多額の給付金が支給され、消費が拡大している。家具や寝具などの生活雑貨や、電化製品、玩具などが輸入品目の上位を占める一方、米西海岸の港では、コロナ禍での港湾労働者不足や荷揚げ作業の遅れが深刻化。同センターの後藤洋政研究員は「港湾の処理能力が低下する中、一方で物流量が大きく膨らんだために両者のギャップが拡大し、運賃高騰を招いている」と指摘する。

 ◇バルチック指数、11年ぶり高値

 鉄鉱石や穀物などの主要貨物も、中国の調達拡大の動きを映し、高値水準を維持している。「ばら積み船」市況の代表的指標バルチック海運指数(BDI)は4月末、2010年6月以来約11年ぶりに3000の大台に乗せた。その後も堅調地合いが続き、5月14日時点でも2939と高止まりしている。

 鋼材の主原料となる鉄鉱石は、中国向けの輸送需要が旺盛だ。中国国内の活発な建材需要を背景に、国内メーカーが粗鋼生産の拡大に取り組む中、「鉄鉱石の国際価格が大幅に上昇しており、資源メジャーの出荷意欲も高い」(海運会社)という。また、中国は南米の天候不順や国内の養豚向け飼料需要の増加に対応するため、米国産大豆やトウモロコシなどの穀物も大量に買い付けている。こうした動きが、ケープ、パナマックスサイズのばら積み船用船料(船のチャーター料)を押し上げている。

 さらに、3月下旬にエジプト・スエズ運河で起きた大型コンテナ船の座礁事故が、窮迫に輪を掛けた。1週間弱で運河の通行は再開したが、「船舶の到着の遅延により、当初の物流計画が進まないケース」(業界関係者)が発生し、グローバルなサプライチェーン(供給網)の下、連鎖的な影響が尾を引く。

 ◇インフレ懸念で経済回復の重荷に

 海運市況の行方をめぐっては、中国の高水準の粗鋼生産量がそろそろ頭打ちとなり、「夏場にかけて鉄鉱石を運ぶケープ船市況は落ち着く」(海運会社)との見方もある。コンテナ船も、追加の用船確保、船舶の回送効率化とコンテナの早期回収などを通じ、混乱は解消に向かい始めた。

 ワクチン接種の普及で、コロナ禍からの出口が意識され始めたが、本格的な経済再開となると、なお時間がかかる見通しだ。こうした中、米国の4月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比4.2%上昇し、12年7カ月ぶりの大幅な伸びを示すなど、欧米を中心に物価上昇圧力が高まりつつある。

 素材・原材料高や輸送費の高騰がインフレ懸念をくすぶらせる。企業がコスト増を価格に転嫁できなければ収益は悪化し、価格転嫁すれば個人消費を冷え込ませる恐れもある。海上輸送の逼迫が短期で収束する可能性が低い中、物流費などの高止まりが続けば、回復途上の実体経済には重荷となり、景気の腰折れ不安に警戒感が募りそうだ。(小田・5月17日)

 

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