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米中摩擦、リスクの質が変化 人権問題の影響も

<2021年4月20日>

2021/04/16 11:42

〔証券情報〕米中摩擦、織り込み難の局面に=トランプ時代から一転、リスクの質変化

AFP時事
AFP時事

 新型コロナウイルスの感染拡大前は、米国と中国の経済協議に関するニュースに世界の株式市場は一喜一憂していた。バイデン米大統領就任後は、トランプ前大統領の頃のように米中摩擦が株式相場を直接左右するケースは見られないが、市場の警戒心は逆に高まっているように見受けられる。矢嶋康次ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストは「トランプ前大統領の時代は先が分からないというリスクが中心だった。現在のリスクは、もし実現すれば軍事衝突というようなイチかゼロの世界になる。リスクの質が変わり、事態が起きた後にしか対応できず、市場が織り込むのは現実的に難しい」と指摘する。

 対中政策に関するトランプ政権とバイデン政権の違いは、「トランプ前大統領は貿易赤字を減らし雇用を呼び戻すために関税に手を付け、知的財産や人権の問題があるから制裁を科すという論法を使ったが、バイデン大統領はもう少し原理的に基本的な考え方の不一致を問題にしている」(伊藤高志野村証券シニア・ストラテジスト)点にあるというのが衆目の一致するところだろう。伊藤氏は、通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)など事業内容を問題視する中国企業に対する米政府の態度はバイデン大統領の就任前後で変わっていないとみている。

 今週の株式市場では、16日の日米首脳会談を控えて「菅義偉首相が訪米時に対中強硬姿勢の同調を求められる可能性に対して、中国ビジネスに支障が出始めるとの警戒感が出てきている」(木野内栄治大和証券理事チーフテクニカルアナリスト)といった声が多かった。投資家は米中関係に神経質にならざるを得なくなっている。

 ▽人権問題影響か

 日経平均株価は方向感のないレンジ相場が続くが、個別銘柄に目を移すと中国の人権問題が影響しているとみられる事例が散見される。

 ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は8日の決算会見で、中国・新疆ウイグル自治区での人権問題や取引について問われ「政治的に中立でいたい。ノーコメント」と述べた。少数民族に対する強制労働への関与が疑われる新疆産綿花の不使用を表明し中国で不買運動の対象となった海外企業とは一線を画した。良品計画は14日、決算に合わせて新疆の綿を使う考え方を発表。監査では法令や同社の行動規範に対する重大な違反は確認していないと表明した。松崎暁社長は決算会見でこの件に関する言及を避けた。両銘柄とも決算発表の翌日は売りが膨らみ、株価が下落した。

 工場の製造装置に使うサーボモーターを手掛ける安川電機が9日公表した本決算は、中国向けの売り上げが伸びて好調だった。一方、今期(2022年2月期)の業績予想は市場予想を下回った。翌営業日(12日)に同銘柄は下落し、その後も決算発表前の株価を回復できていない。「成長期待が強すぎた反動」というのが市場の一般的な見方だが、米中対立の余波に対する投資家の懸念と無縁とは言い切れない。

 ▽プラスの側面も

 バイデン政権は半導体などについて、中国を締め出したサプライチェーン(供給網)の構築を目指す。米国と中国が互いを頼らないサプライチェーンを構築するため、市場には「場合により日本の半導体製造装置メーカーなどには漁夫の利となる」(大手証券)との期待がある。米中摩擦が日本株に与える影響はプラスとマイナスの両面がある。

 前出の矢嶋氏は「生産する場所として中国と付き合う企業は(生産拠点を)動かせば良いという発想になるが、中国を需要として捉えている企業にとっては分けきれず、業績が成り立たなくなる。業種、企業により影響はバラバラだ」と指摘する。その上で、尖閣諸島問題を抱える日本にとっても、安全保障と経済を切り分けることは難しくなると予想している。(了)

 

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