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〔証券情報〕日本株、下がりにくい需給構造に=外国人売りに耐性

2021年01月29日 10時32分

1990年8月以来の高値を更新した日経平均株価の終値を示す電光ボード=14日午後、東京都中央区1990年8月以来の高値を更新した日経平均株価の終値を示す電光ボード=14日午後、東京都中央区

 日経平均株価は約30年ぶりの高値水準に上昇し、ドル建ての日経平均や日経500種平均株価は既に過去最高値を更新した。日銀の上場投資信託(ETF)買い入れと企業による自社株買いの合計額が年間10兆円を超え、「下がりにくく、上がりやすい」(東海東京調査センターの仙石誠氏)需給構造になっている。「日経平均の値動きを決めているのは海外投資家」というのが東京市場の定説だが、今は海外勢の売りにはある程度、耐性がついているようだ。

 ▽待機資金は過去最高

 新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済はダメージを負ったが、在宅勤務や巣ごもり消費を支えるIT製品やインターネットサービス、ソーシャル・ディスタンスの確保につながる自動車などは需要が拡大し、製造業を中心に追い風が吹く。2021年度は企業業績の回復が見込まれ、「足元の株価上昇には正当な理由がある」(中堅証券)との声も聞かれる。

 仙石氏の調べによると、20年に日銀は7.1兆円、信託銀行は2.2兆円、事業法人は1.3兆円の日本株を買い越した。信託銀行の買いには上場企業の自社株買いも一部含まれているという。一方、海外投資家は6.1兆円の売り越し。投資信託は2.2兆円、個人投資家は9000億円をそれぞれ売り越した(数字は現物と先物の合計)。

 海外投資家が日本株を売り越す中で日経平均が10%超上昇したのは2000年以降では初めてという。また、個人投資家の待機資金であるマネー・リザーブ・ファンド(MRF)の残高は20年末時点で13.6兆円と過去最高に積み上がっている。

 日銀や自社株買いを行う事業法人は、株取得後は基本的に手放さない。一方、その他の投資主体はおおむね売り越しとなり、「多くの投資家が株価上昇局面で売り、日本株の残高を積み上げられないまま年初を迎えている可能性が高い」(仙石氏)。待機資金が多いと押し目買いは入りやすくなる。

 岩井コスモ証券の林卓郎氏は「日本株の指数が相次いで節目を突破するパターンが続く。海外投資家や個人投資家の日本株に対する見方が変わってきてもおかしくない」と語る。足元の業績予想との比較で割高に見える好業績株が人気を集め、株価が5桁の値がさ株が東証1部の売買代金上位にひしめく現状の裏には、「割高でも有望な投資テーマに沿った銘柄を買いたい」という投資家の割り切りがあるとみられる。

 ▽自社株買いの存在感高まる

 1~3月は企業から政策保有株の売りが出やすい時期になる。また、米バイデン政権の発足後100日の「ハネムーン」期間終了後に米国株が調整することも考えられ、日本株には逆風が吹きやすい。しかし、外部環境に大きな変化がない限り、一年を通してみれば今年も株価が下がりにくい構造は続くだろう。

 微妙な変化が起きる可能性はある。日銀は1月から、ETFの1日当たりの買い付け額を従来の約700億円から約500億円に減額した。仙石氏は、20年に7.1兆円だった日銀のETF買いが21年には6兆円程度に減少すると見込む。一方、企業の自社株買いは業績回復とともに増加し、日銀と自社株買いの合計額は12兆円規模になるとみている(20年は11.5兆円)。

 TOPIX連動型が大半を占める日銀のETF買い入れが減り、個別銘柄ごとに株式を市場から吸い上げる自社株買いの存在感が高まると、企業が自社株買いを実施するか否かで株価の動きに差が出ると予想される。21年はこれまで以上に自社株買いが注目されそうだ。(了)

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