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〔取引所FX20年②〕FX事業を強化、金利先物は復活へ=廣田TFX社長

2025年07月02日 11時00分

インタビューに答える東京金融取引所の廣田拓夫社長=4月9日、東京都千代田区インタビューに答える東京金融取引所の廣田拓夫社長=4月9日、東京都千代田区

 東京金融取引所(TFX)の廣田拓夫社長は時事通信のインタビューに応じ、20周年を迎えた外国為替証拠金取引(FX取引)市場「くりっく365」について、アジア進出や品ぞろえ拡充を通じて事業を強化する方針を示した。株価指数証拠金取引の「くりっく株365」では暗号資産(仮想通貨)の導入に向けた検討を進め、金融機関向けのホールセール事業では金利先物取引の復活を目指す考えだ。

 ◇投資家に安心を

 ―波乱の市場環境の中でくりっく365の20周年を迎えた。

 4月のトランプ関税ショック後、要人の発言次第で相場が急騰・急落する、非常に読みにくい動きとなってしまった。投資家にとって、大幅な値動きは収益機会となる可能性もあるが、なかなか厳しい状況だと思う。幸いTFXとしてのシステム上の問題は起きていないが、投資家が安心できる環境づくりを心がけたい。

 ―20年前の開始当時も、テーマは「安心」だった。

 1998年の外為法改正を機に解禁されたFXは、店頭FX業者が乱立し投資トラブルが多発していた。われわれは公的な取引所として、信頼できる場所でFX取引をしたいという顧客の要望に応えてきた。結果的にFXは規制強化で健全化し、市場は拡大、個人投資家による巨大な外為マーケットが形成された。これは日本独特で世界的に類を見ないものだ。

 ◇暗号資産に意欲

 

インタビューに答える東京金融取引所の廣田拓夫社長=4月9日、東京都千代田区インタビューに答える東京金融取引所の廣田拓夫社長=4月9日、東京都千代田区

―現在の中心的な顧客層は。

 中長期スタンスの富裕層投資家が多く、比較的高年齢だ。高金利通貨を買い、円との金利差調整分(スワップポイント)による収益を狙うタイプの投資家も多い。そうした投資家は証拠金を安心して長期にわたり預けられる環境を選好する。くりっく365は証拠金がTFXの下で安全に管理されている上に、為替レートの透明性も高い。

 店頭FX業者のような超短期トレードの若い投資家の割合は少ないとはいえ、ビジネスは競争である以上、環境や業界動向、投資家の好みに合わせて、われわれも変化する必要がある。取り扱う通貨の品ぞろえを増やし、顧客のニーズ多様化に応えるつもりだ。法人向けのFX取引の普及拡大も図りたい。

 ―くりっく365は2017年に、台湾規制当局から、同国の投資家が取引可能な海外先物市場の商品として認可を受けた。

 日産証券の協力のもと、マーケティングしやすい環境が整いつつある。台湾で実績を積み、他のアジアの国々でもくりっく365を展開したい。

 ―もう一つの事業の柱である株価指数証拠金取引「くりっく株365」の戦略は。

 直近5年間に金や原油など多様化を図ってきた。特に金は人気を集めている。今後は暗号資産もやらない手はないと思っている。ただ、金融庁の規制動向を見守る必要があり、取引所としてルール整備を進める上でも、激しい値動きに対応した証拠金や清算預託金をどう設定するかなど、解決すべき課題はいろいろある。

 ◇金利のある世界

 ―祖業である金利先物への取り組みは。

 日銀のゼロ金利政策やマイナス金利政策の中で、長年苦戦を強いられてきたが、金融正常化に伴い、ようやく「金利のある世界」が戻りつつある。われわれも23年3月に「TONA3カ月金利先物」を上場し、金利先物市場の復活を目指している。長年の慣れで金利リスクのヘッジにOIS取引を使っている金融機関はまだ多いが、金利先物市場の重要性は理解されている。徐々に取引は増えるだろう。

 ―4月には金融機関向けサービスの「信用リスク管理基盤(CRMP)」を立ち上げた。

 金融機関が抱えるリスクには、市場リスク、金利リスクのほかに、信用リスクがある。欧米ではポートフォリオ上の信用リスク調整のため債権売買が活発に行われているが、日本ではまだ手つかずだ。

 金融機関にはまず、CRMP上で債権売買についての情報交換を行ってほしい。ゆくゆくは取引そのものがプラットフォームの上で行われるようになり、金融市場の健全化に役立てば良いと思っている。(金融市場部 編集委員 宮崎恒裕

 

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