〔ウォール街報告〕FRBの緩和姿勢、別次元に=ホリコCM・堀古氏
2020年09月02日 15時49分
ホリコ・キャピタル・マネジメント社長・堀古英司氏=FRBのパウエル議長は8月27日、ジャクソンホールでの講演で、これまで長期的物価上昇率目標として掲げてきた2%を、今後は「平均」として捉え、とりわけ現在のように比較的長期間物価上昇率が2%を下回る状況が続いた後は、将来2%を超える時期を一定期間設ける事が合理的である、という内容を新たなFOMCの方針として発表した。
ジャクソンホール講演は2010年、当時のバーナンキFRB議長が実質的にQE2(量的金融緩和第2弾)を打ち出した事で一躍有名となり、その後毎年注目されてきた。しかし実際には翌年にFRBのコミュニケーション方針が定められ、基本的に決定していない金融政策の内容を事前に口外することは禁止されることになった。自ずからその後ジャクソンホールからサプライズが飛び出す事はなくなっていたのである。しかしながら、今回はパウエル議長の講演開始時間に合わせてFOMCの方針変更が発表されるという異例の形を取る事によって、このような大幅な方針の変化がジャクソンホール講演で飛び出すことになった。
これまで市場関係者の間には「長期的」物価上昇目標であることから、2%をやや上回る水準も容認されるとの見方はあった。しかしながら、このような曖昧な形ではなく、FOMCの公式見解として2%を上回る水準が容認されるとなると、次元は一段上がる。FRBがインフレ目標の指標としているPCEデフレーターは0.9%前後で推移しており、2%からはほど遠い。失業率が高止まりする中、コロナ前の1%台後半に戻るだけでもかなりの期間を要すると見られる。さらに2%を超えるとなると、現在進行中の超金融緩和と空前の流動性供給は、少なくとも数年続くのが確実な状況だ。
これは、株式市場にとってはこの上なく恵まれた環境だ。これまでも低金利局面はあったが、殆どが、またいつ反転するか分からないという状況だった。しかし今回は少なくともこの先数年はこの心配をしなくてよい。アメリカ株の割安は比較的長期間割安な状態が続いてきたが、適正価格への回帰、さらにはバブルと言われる水準に向かって進もうとしているように見える。(了)
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