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アベノミクス、未完の終幕=株高演出も経済再生は幻に

2020年08月28日 16時16分

ニューヨーク証券取引所で「アベノミクス」について講演する安倍晋三首相=2013年9月、ニューヨーク
ニューヨーク証券取引所で「アベノミクス」について講演する安倍晋三首相=2013年9月、ニューヨーク

 安倍晋三首相の辞意表明で、海外からも期待された経済政策「アベノミクス」は未完のまま終幕を迎える。円安・株高を演出し、戦後2番目に長い景気拡大を実現したものの、回復の実感は乏しい。新型コロナウイルス禍が追い打ちを掛け、公約に掲げた日本経済の再生は幻に終わった。

 2012年12月に政権が発足する前の日本経済は、デフレ不況にあえいでいた。安倍首相は就任時に「経済再生にロケットスタートを切る」と表明。①大胆な金融政策②機動的な財政政策③民間投資を喚起する成長戦略―の「3本の矢」から成るアベノミクスを始動させた。

 日銀の「異次元緩和」で円安が進み、製造業を中心に企業業績は大きく改善。政権発足と同時に始まった景気拡大局面は18年10月まで71カ月続いた。12年末に1ドル=80円台だった円相場は一時120円台まで下落。1万円程度だった日経平均株価は18年10月に2万4270円の高値を付けた。

 自信を深めた首相が米ニューヨーク証券取引所で、「バイ・マイ・アベノミクス(アベノミクスは買い)」とアピールする場面もあった。

 ただ家計に景気回復の実感は乏しかった。物価変動の影響を差し引いた実質賃金は13年以降、16年と18年の2年を除いてマイナス続きで、個人消費は盛り上がりを欠いた。

 物価は日銀の2%目標に届かず、デフレ不況に逆戻りする恐れがないことを示すデフレ脱却宣言は行われないままだ。2度にわたる消費税増税の延期と度重なる景気対策で、国の財政は一段と悪化した。

 成長戦略も不発に終わった。政権は地方創生や1億総活躍社会、働き方改革など看板を掛け替えたものの、経済の実力を示す潜在成長率は1%を割ったままだ。

 足元の経済は、コロナ禍で20年4~6月期の実質GDP(国内総生産)が年率換算で戦後最悪の27.8%減を記録。雇用と所得の不安は増している。

 ◇安倍政権の経済政策の歩み
12年12月 第2次安倍政権発足。景気拡大局面入り
13年 1月 政府・日銀が2%の物価目標実現に向けて政策協定
    3月 黒田東彦日銀総裁就任
    4月 日銀が量的・質的金融緩和(異次元緩和)決定
    9月 首相がニューヨーク証券取引所で「バイ・マイ・アベノミクス」と演説
14年 4月 消費税8%に引き上げ
   11月 消費税10%への引き上げ延期決定
16年 1月 日銀がマイナス金利政策決定
    6月 消費税10%への引き上げ再延期決定
    9月 日銀が長期と短期の金利を操作する金融政策を決定
18年 4月 黒田日銀総裁再任
   10月 日経平均株価2万4270円の高値。景気後退局面入り
19年10月 消費税10%に引き上げ
20年 4月 新型コロナウイルスで緊急事態宣言
       歳出総額25.6兆円の20年度第1次補正予算成立
    6月 過去最大の総額31.9兆円の20年度第2次補正予算成立
    8月 4~6月期の実質GDP速報値、戦後最悪の年率27.8%減
(了)

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