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4~6月は上値の重い展開か=米関税政策の行方懸念―時事株価フォーキャスト

2025年03月31日 14時00分

日経平均25年4月-6月予想レンジ

 時事通信社は4~6月の日経平均株価の見通しを市場関係者に尋ね、16人から回答を得た。トランプ米大統領が掲げる輸入関税政策の強化と各国の報復措置で世界経済が冷え込むことへの警戒感が広がり、上値の重い展開を予想する見方が多い。

 年初から弱含みで3万7000円台中心へと水準を切り下げて推移した3月の相場から「回復基調をたどる」との予測と「レンジ内でもみ合いが続く」との見方が混在。予想の中央値は、上値が4万円、下値が3万6000円だった。

 上値実現の条件として「トランプ関税がマイルドな内容にとどまり、投資家心理が改善すること」(岡三証券の山本信一シニアストラテジスト)、「決算発表で予想EPS(1株当たり純利益)成長の切り上がりや株主還元策が確認できること」(アムンディ・ジャパンの石原宏美株式運用部長)といった声が目立った。「ロシアとウクライナの停戦協議に進展があればポジティブ材料視される」(レオス・キャピタルワークスの三宅一弘経済調査室長)との指摘も聞かれた。

 悲観的な株価シナリオでは、業績予想をかなり保守的に見積もる企業が相次ぐケースや、トランプ関税に端を発した世界的な景気失速などが想定されている。「国内の高インフレ持続による消費者センチメント低迷や、1ドル=135円までの円高進行」(JPモルガン証券の西原里江チーフ株式ストラテジスト)を警戒する声も聞かれた。

 調査は3月中下旬に実施した。(了)


【時事株価フォーキャスト(2025年4~6月)回答一覧】

◆名前・肩書き
①■万■~■万■円(方向感)
②上値の条件
③下値  〃


◆市川雅浩・三井住友DSアセットマネジメントチーフマーケットストラテジスト

①3万5000~4万2800円(上昇、6月末着地は3万8900円)

②ⅰ)トランプ関税が極めて柔軟な内容となり、市場の懸念が大きく後退すること、ⅱ)2025年度の会社予想で明るい見通しが示されること、ⅲ)国内物価が落ち着き、実質賃金の前年比プラスの伸びが早期に定着すること、ⅳ)投資家の視点を踏まえた質の高い資本効率改善などの取り組みと開示が想定以上のペースで増えること、ⅴ)中東情勢、ウクライナ情勢が一気に好転すること、これら5つが同時に実現すること。

③ⅰ)トランプ関税が行き過ぎた内容となり、各国が報復関税に動き、世界的に景気が冷え込むこと、ⅱ)2025年度の会社予想で極めて保守的な見通しが示されること、ⅲ)国内物価が高止まり、実質賃金の前年比マイナスの伸びが続くこと、ⅳ)投資家の視点を踏まえた質の高い資本効率改善などの取り組みと開示が停滞すること、ⅴ)中東情勢、ウクライナ情勢が大きく悪化すること、これら5つが同時に実現すること。


◆井出真吾・ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト

①3万5000~4万円

②トランプ関税への警戒感が和らぐなど、市場心理の改善。企業のファンダメンタルズも若干の改善しそうだ。2025年度の業績は、片手で表せる程度の小幅ではあろうが、増益が見込める。この二つが重なれば4万円回復もあり得る。

③市場心理の悪化。例えば、米国の関税や移民政策、中国やロシアの出方などによって心理が悪化することは考えられる。また、米国でスタグフレーション懸念が強まったり、連邦準備制度理事会(FRB)はタカ派姿勢だとの見方が出たりすると、市場心理を冷やす。


◆大塚竜太・東洋証券ストラテジスト

①3万6000~4万2000円 悪材料を織り込み、戻りを試す

②トランプ関税については、4月2日までに一通り織り込まれ、不透明感は解消する。関税の影響を踏まえた選別物色が始まる。3月期末を通過し、配当の再投資など、需給も改善する。

③トランプ米政権が、「移行期間」がより厳しい状態になることを予想させるような政策を打ち出すこと。国内では、参院選を前に政治をめぐる不安感が出ると、株価の重しになり得る。


◆宮嵜浩・伊藤忠総研マクロ経済センター長

①3万6000~3万9000円、もみ合い

②トランプ関税に対する過度な懸念が後退(関税適用除外への期待)。

③欧米景気の減速懸念の強まり。


◆石原宏美・アムンディ・ジャパン株式運用部長

①3万6000~4万2000円。上昇。

②トランプ関税などの米政策の不透明感後退。
3月決算の本決算発表で、予想EPS成長の切りあがり、株主還元策発表などポジティブな内容が確認できること。
米国景気に対し、楽観的な見通しが広がること。

③米国関税・貿易政策の実施で政策リスクに対する懸念の高まり。
米インフレ圧力が高まり、長期金利の上昇、利下げ期待の更なる後退。


◆西原里江・JPモルガン証券チーフ株式ストラテジスト

①もみ合い(予想レンジは非開示)。

② トランプ政権の関税政策が市場の想定より軽微。
 消費者物価の緩和を受けて消費者センチメントが改善、個人消費が回復。
 企業が新年度に想定よりも強いガイダンスを発表する場合(市場は24年度よりも保守的な減益ガイダンスを予想)

③トランプ政権の関税政策から米景気後退、スタグフレーションに陥る懸念が高まるケース。
 米政権から対中国の半導体輸出規制があるケース。
 国内の高インフレ持続により、消費者センチメントが低調にとどまるケース。
 135円(対米ドル)までの円高進行が起こるケース。


◆坪井裕豪・大和証券日米株チーフストラテジスト

①3万8000~4万1000円。下値切り上げ、じり高の展開

②米国の景気軟着陸想定の高まりが最重要の条件。トランプ政策の経済への影響を総合的に勘案し、その上で過度の米景気減速シナリオが後退していけばマーケットの安心感は高まっていこう。米景気が堅調さを保てば円高リスクも低下する。

③米景気不安の強まり、米関税策の直接・間接的影響の見極め、国内でのコストプッシュインフレの加速、国内政情不安を背景とした長期金利の上昇、半導体サイクルの予想より早期の調整などが株価にとってリスク要因と考える。


◆山本信一・岡三証券シニアストラテジスト

①3万6000~3万9000円 もみ合い

②トランプ関税がマイルドな内容にとどまり、投資家心理が改善する。

③トランプ関税発動で報復合戦となり、貿易減少で世界的な景気後退懸念が高まる。半導体関連の調整が想定以上に長引く。


◆土信田雅之・楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリスト

①3万6000~3万9000円(軟調な展開から上昇していく展開を想定)

② ・米国経済の減速が限定的
・日米企業業績見通しが悪化しない
・米トランプ政権のウエイト変更
 関税・歳出削減⇒減税・規制緩和

③・米スタグフレーション警戒の高まり
・想定以上の関税の悪影響
・経済活動の停滞


◆三宅 一弘レオス・キャピタルワークス経済調査室長

①3万5000~4万1000円 乱高下交えながらも上昇相場

②トランプ政策の痛み(高率関税、政府のスリム化・職員解雇など)が際立った1~3月期に対して、減税論議・成立やロシア・ウクライナ戦争の停戦協議進展などポジティブ材料が顕在化。米国株の底入れ・上昇相場に歩調を合わせる展開。米国の利下げ期待も顕在化

③トランプ政策の痛みの継続。日銀の利上げをきっかけに急速な円高進展、リスク回避の動き。石破内閣に対する支持率低下、国内政局 ・政治不安


◆北原奈緒美・内藤証券投資調査部シニア・アナリスト

①3万6000~4万円(もみ合い)

②5月ごろを予想。6月の株主総会ラッシュを前に自社株買いの増加が株価を押し上げると予想。人件費などコスト上昇を吸収して利益を伸ばす会社が増えてくれば、投資家の買い安心感につながる。

③円高と金利上昇が同時に進めば、株価の下押し材料となるだろう。
例年、企業が期初に開示する業績見通しは保守的なものだ。今年はトランプ米大統領による関税引き上げの業績への影響が懸念されている。また、追加利上げ時期の前倒しに対する警戒感が強まれば、株価の下押し材料となる。政策金利が1.0%に引き上げられれば、10年物国債利回りは1.6~1.7%に上昇することが予想されるが、現在の株価はそれを織り込みきれていない。


◆伊井哲朗コモンズ投信社長(値動き大きい)

①3万5000~4万1000円(瞬間安リスクあり)

②関税回避や撤廃なら日経平均は4万円を超える水準まで急速に戻すだろう。6月の定時株主総会を前に投資ファンドなどによる株主提案を材料に盛り上がりを見せる映画もありそうだ。

③期初特有の保守的な業績予想、さらなる関税の追加。


◆安田光・SMBC日興証券チーフ株式ストラテジスト

①3万6000~4万2000円(上昇)

②関税リスクの後退、米国景気 の再加速、円安進行

③米国景気の減速、企業業績の下振れ


◆服部誠・丸三証券エクイティ本部長

①3万6000~4万円(引き続きレンジ相場が続く。割安感のある銘柄の個別物色)

②・日経平均は日柄調整が足りず、引き続きレンジ相場の中でグロース株・バリュー株のローテーション物色が続きそうだが、4月は新年度入りでニューマネーが流入するほか、海外投資家が買い越す強いアノマリーがある。3月期決算企業の来期見通しが小幅でも増益予想となることや、1ドル150円を超えた円安水準が続くこと、グロース株の復調でNT倍率の修正が入るなどの条件が揃えば4万円台回復もあり得る。

③・トランプ関税が実体経済に悪影響を及ぼすことが顕在化し、世界的なリスクオンムードにはなりづらい。ただし関税についてはマーケットでの織り込みが進んでおり、3月安値を割り込むことにはならないだろう。


◆沢田麻希・野村証券ストラテジスト

①3万5000~3万9000円 方向性「→」

②現時点では、米国と日本では2025年も経済成長が続き、企業業績も堅調とみます。米国では米国産業のけん引役である先端テクノロジー分野を中心に企業業績の拡大が続くでしょう。国内では主要企業の業績は連続増益が続くとみられ、生産活動の正常化や在庫調整の進展が業績拡大に寄与するとみられます。市場の関心は24年度から25年度の業績見通しに移っていますが、25年度の期初計画段階では、会社の業績予想は例年通り保守的なものを想定しています。トランプ政権の関税政策に関する不透明感も業績予想の保守性につながりやすいとみています。ただし、4半期決算で期を追うごとに増益の確信度が高まる展開が想定され、年後半にかけては株価の上昇を予想しています。

③米国トランプ政権は、有利な条件を引き出す交渉材料として様々な国・地域や品目に対する関税政策を実施しています。一方、関税を課せられた国・地域も中国、カナダ、EUのように、報復関税を実施する国や、メキシコのように報復を抑制する国もあります。自動車や半導体製造装置、医薬品などトランプ大統領が関税賦課を発言しながら、具体的な手順が不透明なものも多く、今後の動向が懸念されています。関税を巡るトランプ大統領の発言によって、株式市場のボラティリティーが高まる局面があるとみられます。ただし、過去の関税発動を振り返ると、最初に投げられる厳しいボールから実際着地する際は、一定程度軽減されるパターンが多いように見えます。今後も様々な関税発言が相次ぐとみられますが、こうしたパターンを踏まえ、一番厳しい想定が示された後、株式市場がどのように回復していくのかを見るのがポイントであると考えます。


◆大西耕平・三菱UFJモルガン・スタンレー証券上席投資戦略研究員

①3万5000~3万9500円(局所的に下落する場面がみられるもトレンドは横ばい)

②トランプ関税の方向性とその影響が徐々にクリアになり、業績見通しに対する期待が高まる。26年11月の米議会中間選挙を見据え、トランプ政権の政策が経済・マーケットフレンドリーに傾く。

③トランプ関税が強硬に推し進められ、経済とマーケットの見通し不透明感がさらに深まる。日本経済・市場にとって、特に自動車への25%関税の影響は大きいと考えられるため、株価は一旦大きく下落する可能性も。企業の業績見通しが例年以上に保守的となり、ガイダンスリスクへの警戒感が広がる可能性もある。

 

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