〔商品ウオッチ〕CRB指数、5カ月ぶりに150台回復=原油と金の上昇映す
2020年08月18日 12時26分
国際商品の総合的な代表指標であるCRB指数が17日、約5カ月ぶりに150の節目を回復した。指数を構成する中心銘柄の原油相場が、春先の急落前の水準まで回復し、コロナ禍で投資マネーが流入した金が、大きく値上がりしたことを映した。ただ、世界経済の先行きが依然不透明なこともあり、指数の上昇が持続するかは見通しにくい。
17日の国際商品市況は、外国為替市場でのドル安・ユーロ高の進行を受け、ドル建ての原油や金に割安感が生じた。CRB指数は前日比1.66ポイント高の150.87(終値)と、3月10日以来の高い水準となった。
同指数の構成比は、エネルギー銘柄が約4割で最も高い。中でも主力の原油は、3月に新型コロナウイルスの感染拡大懸念や、石油輸出国機構(OPEC)などによる減産協議の決裂を受け、指標となるニューヨーク原油(WTI)は、40ドル台から20ドル台に急落。4月には、受け渡し倉庫の関係で史上初のマイナス価格を付けた。このためCRB指数は4月21日に106.29まで下落した。その後は、世界的な経済活動の再開などを受けて戻り歩調となった原油に合わせ、上昇に転じた。
一方、構成比では6%の金が、この間に急ピッチで上昇。世界経済に対する不安や低金利を背景に、安全資産やマネーの逃避先として人気化し、7月には史上初めて2000ドルを突破、原油とともに指数上昇のけん引役となった。
◇株高頼みの原油高にはもろさ
しかし、CRBの上昇に対しては、懐疑的な見方が多い。前週急落した金は、最近の急伸の反動から一時的に下落したとみられ、低金利とリスク回避ムードの継続をよりどころに、市場では「上昇トレンドは崩れていない」との観測が大勢だ。
これに対し、原油にはもろさが付きまとう。原油相場の急落後にOPECなどが合意した減産継続体制は相場をサポートしているが、コロナ禍で停滞する世界経済の下、在庫水準は依然高く、需要は当面足踏み状態が続くと予想される。
原油高を実質的に支えているのは世界的な株価の上昇だ。新型コロナへのワクチン開発の進展をにらみながら、経済活動の本格的な再開への期待感が株価を後押しし、ニューヨーク株式市場は3月に付けた史上最高値圏に近づきつつある。株価上昇に原油が追随しているのが実態で、楽天証券経済研究所の吉田哲氏は「石油消費回復への思惑が先行する相場つき」と分析する。
過熱気味の株式市場に対し、実体経済との乖離(かいり)を警戒する声も出始めた。日本をはじめ、欧米先進国の2020年4~6月期実質GDP(国内総生産)の落ち込み幅は、リーマン・ショック後を大きく上回った。
景気悪化と株高という相反する要素が共存する中、世界ではコロナの新規感染者が急増しており、再び経済活動を制限する動きが広がっている。景気が減速すれば、燃料などのエネルギー消費は伸び悩み、原油相場に跳ね返る。ワクチン開発が遅れるリスクも排除できず、不安要素はぬぐい切れていない。
秋の米大統領選を控え、株高と金高の流れは続くとの楽観的な声がある一方、フジトミの齋藤和彦氏は「株価に大幅な修正が入れば、期待心理先行の原油相場の下落は必至」と指摘する。CRB指数の持続的な上昇は、金よりも原油相場に負うところが大きいようだ。(小田・8月18日)
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