規模に見合ったインパクト投資を実践…かんぽ生命・春名常務執行役〔PR〕
2022年09月27日 11時20分
かんぽ生命保険は顧客数が2,105万人(2022年3月末、契約者数と被保険者数の合計)と、日本人の5人に1人が契約する巨大保険会社だ。全ての運用資産にESG(環境、社会、企業統治)要素を取り入れるだけでなく、巨大機関投資家として期待されるインパクト投資もスタートした。サステナブル(持続可能)な社会づくりを目指すかんぽ生命の実践を、運用チームを率いる春名貴之常務執行役に聞いた。
―運用体制は?
2022年3月末の総資産は67兆円を超えている。郵政省時代から引き継いだ社会での公的な役割を担う文化があり、2017年10月に国連責任投資原則(PRI)に署名し、同原則に沿ってESG投資を進めている。
2021年4月に設置したサステナビリティ委員会の下に弁護士やESGの専門家らで構成する責任投資諮問部会を置き(前身の責任投資諮問委員会は2017年8月に設置)、社会的責任を踏まえた投資をしているかを年2回チェックしている。運用部門全体が参加する毎月の運用戦略会議では、リスクとリターンだけでなくESGについても議論し、全社で認識を共有することに努めている。
PRI署名以来、東証株価指数(TOPIX)を上回る投資成果を上げており、長期投資に向けて順調な滑り出しとなった。投資とESGは遠からず不可分なものになるだろう。
―インパクト投資の工夫は?
「インパクト”K”プロジェクト」と銘打った投資を実践している。Kは「かんぽ」「きずな」「共創」「協力」などを意味する。一例だが、東京都内11カ所の保育園に投資する不動産ファンドに資金を拠出している。待機児童をなくし、地域の女性の就業を支援するのが狙いだ。年5%前後のリターンを確保しており、社会課題の解決と経済的利益追求の両立が可能だと考えている。
インパクト投資を厳密に実行するには、IMM(インパクト測定マネジメント)といってインパクト創出状況の検証と対応が必要になる。保育園ファンドであれば、投資の前後で、保育園周辺地域の子どもを持つ女性の就業率が何%向上したかを計測するなどの検証が必要だろう。これは、難易度が高く、かなり重い負担が想定されるが、投資案件にあわせてIMMをある程度柔軟にとらえることで、当社の規模に見合うインパクトを積み上げていきたい。インパクト投資を装う「インパクト・ウォッシュ」を疑われないよう、「インパクト”K”プロジェクト」の案件については、運用企画部で承認する仕組みを既に構築している。IMMのルールが厳密すぎてインパクトに繋がる投資にブレーキが掛かる状況があるとすれば、それは好ましくないだろう。
―運用資金量が多すぎてインパクト投資は難しい?
独立系運用会社のコモンズ投信(東京)と組んで今年5月、上場株のインパクト投資を始めた。サステナビリティ(持続可能性)について当社が認識する重要課題である「Well-being向上」「地域と社会の発展」「環境保護への貢献」といったテーマに沿ったインパクトを創出する国内上場企業株に長期投資する。上場株への投資なので、ある程度の金額の運用が可能だ。
―インパクト投資は普及するか?
手がけてみることで得られる貴重な経験値がある。かんぽ生命のような「公に近い企業」が引っ張っていくことで、他の金融機関にプラスの影響が広がることを期待している。
当社も「地域と社会の発展」を重要テーマのひとつに掲げているが、例えば地域金融機関が大学や地元の企業と組んで地域の社会課題解決へと盛り上げることが出来れば、雇用が生まれ、地域で資金が循環することになるだろう。インパクト投資により、社会課題の解決とリターン獲得の両立が可能だと考えている。
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用語解説:
・インパクト投資:経済的利益に加え、社会や環境への好ましい影響(インパクト)も目的とする投資。リスクとリターンという2つの項目に対して、インパクトは第3の軸といわれ、投資によって期待される社会的課題の解決の度合いが投資判断や投資成果を評価する際の基準として重要視される。
・国連責任投資原則(PRI):正式にはPrinciples for Responsible Investment。機関投資家が投資の意思決定や投資家としての権利行使に際して、ESG(環境、社会、企業統治)の課題を組み込むことなどを掲げている。2006年にアナン国連事務総長(当時)が提唱して発足した。PRIの2021年版リポートによると、60カ国4000以上の運用機関がPRIの趣旨に賛同して署名し、その運用資産総額は合計120兆ドル以上。
・Well-being:健康で安心な状態や幸福を意味する。生活満足度。もともと社会福祉分野の用語だったが、政府や地方自治体、企業などが国民・住民や従業員の健康や暮らしやすさ、働きがいを指す言葉として使用する例が増えている。
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