米ドル債利回り急上昇、8%超えも…ETFの投資妙味増す
2022年09月28日 12時30分
米国の債券市場では、利回りの上昇が著しい。10年物国債は利回りが4%に迫り、高リスクとされるジャンク債(くず債)は8%を超えており、米国の債券市場に分散投資するETFの投資妙味が増している。
米国債は日本時間9月28日午前の時間外取引で2年物が4.30%、10年物が3.99%前後で推移している。「利回り4%は日経平均が1年で1000円上昇するのと同じで、四半期ごとの評価損計上とは無縁の個人投資家にとって魅力的な選択肢になる」(国内運用会社)との指摘が聞かれる。
米国株メディア「バロンズ・ダイジェスト」は9月25日付で「今、ジャンク債は買い時か」と題する記事を掲載。米国のジャンク債の平均利回りが年初の4.4%から8.8%に上昇したことを紹介し、「投資家にとって魅力が増しているようだ」としている。ジャンク債の高利回りはデフォルト(債務不履行)リスクの代償だ。しかし、ジャンク債市場はあと一歩で投資適格となるBB格が半分以上を占め、投機的なCCC格は10%に過ぎないという。
米国は自己責任が徹底しているが、ジャンク債の多くは機関投資家などを対象とする私募債の形式で販売され、個人による購入のハードルは高く設定されている。そこで同記事は個人投資家がジャンク債に投資するルートとしてiシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETF、SPDRブルームバーグ・バークレイズ・ハイ・イールド・ボンドなどのETFを紹介している。
ただ、連邦準備制度理事会(FRB)は人為的に景気の腰を折ってでもインフレ沈静化を優先させる姿勢を示している。景気が後退に向かい、財務体質の弱い企業の信用リスクが増大すれば、ETF運用会社はジャンク債を売却できなくなる恐れがある。ETFが多数の銘柄に分散投資していると言っても、ジャンク債の潜在的リスクは決して小さくはなさそうだ。
もっとも、信用リスクを極力抑え、インフレ下の高金利だけを目的とする投資も可能だ。9月25日付の記事「株価下落と金利上昇。苦痛だが市場は正常化」では、エバーコアISIのストラテジスト、ジュリアン・エマニュエル氏が「2019年以来初めて長期債券に価値が出てきている」との見方を示し、iシェアーズ米国債20年超ETFについて強気に転じたことを紹介している。
9月21日の連邦公開市場委員会(FOMC)後に公表されたドットチャート(FOMC委員が予想する政策金利の分布図)では、FF(フェデラルファンド)レートの誘導目標の中央値は4.5~4.75%。1年前から考えると途方もない高水準に映るが、1954年以降のFFレートの月次平均は4.6%なので、今回の連続利上げ局面で米国金利はようやく中立水準に戻ることになる。債券の利回りが消えて株式に偏重せざるを得なかった時代から、株式と債券のバランスを考えて運用する、教科書的には当たり前の時代への過渡期にあるようだ。(編集委員・伊藤幸二)