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30年先を見据える資産運用…コモンズ投信・伊井氏〔PR〕

2022年09月27日 11時00分

コモンズ投信 伊井哲朗社長 (提供:コモンズ投信)コモンズ投信 伊井哲朗社長 (提供:コモンズ投信)

 独立系運用会社のコモンズ投信(東京都)は2009年1月から「コモンズ30ファンド」を運用している。「30年先の未来への投資」を掲げ、投資先を約30銘柄に厳選する独特な運用スタイルで設定以来、東証株価指数(TOPIX)を上回る運用成果を上げている。銘柄選定や経営陣との対話など随所にESG(環境、社会、企業統治)要素を取り込んできたフロントランナーとしても知られる。伊井哲朗社長に30年先を見据えた運用について聞いた。

―なぜ長期投資なのか。

 サステナビリティ(持続可能性)の出発点が長期投資だと考えている。運用者として期待するのは持続的に企業価値を向上していくこと。社会が不安定で、貧富の差やジェンダーで分断されているようでは企業は成長しにくい。

 長期投資と社会課題解決は切っても切り離せない関係にある。社会課題を解決するためにESG投資があり、一歩進んで社会に対してプラスの影響を与えることを目指すインパクト投資がある。今年5月には、かんぽ生命と組んで上場株を対象としたインパクト投資も始めている。

 金融の力を総動員しても解決できない問題には、寄付が有効だ。投資信託の受益者から受け取る信託報酬の1%を寄付に充て、社会起業家や障がい者スポーツの振興を応援している。よりよい世の中を次世代につなげる長期投資だと位置付け、顧客にもそう説明している。

―30銘柄に絞り込むのはなぜか。

 株価指数の全構成銘柄を機械的に買いそろえるインデックス運用が盛んだ。しかし、多くの銘柄を抱えることになるインデックス運用では、運用会社から企業への働きかけが限られる。議決権行使で態度を表明できても、企業との継続的な深い対話が難しい。サプライチェーン全体で炭素排出量を算定する「Scope」の考え方も、どの段階の目標を高くしたらいいなど投資先企業の事業内容に通じていないと運用会社は有用な提案ができない。スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードが掲げる情報公開や対話の充実も投資家が長期運用できて初めて役に立つ。


環境省 サプライチェーン排出量算定の考え方「サプライチェーン排出量におけるScope1、Scope2及びScope3のイメージ」


―機関投資家の役割は?

 「サステナブル」の考え方はZ世代と呼ばれる若い世代に支持されているが、決して彼らだけのものではない。ソニーが戦後間もない1946年、東京通信工業として起草した設立趣意書には「日本再建、文化向上」が盛り込まれている。松下電器産業(現パナソニック)を創業した松下幸之助氏は家電製品の普及で女性が家事や育児など家内労働に閉じ込められる状態を打ち破ろうとした。利益追求だけでなく社会変革を志す企業はいつの時代にもあるものだ。

 サステナブルな社会を実現するため、機関投資家はエクイティ(株式)もデット(負債)も含めて企業を支援していく必要がある。エクイティではESG投資やインパクト投資が力になり、デットは融資レートを優遇することで貢献できる。社会を変えるような画期的な商品やサービスの開発にはリスクを取れるエクイティがふさわしい。

 ただ、運用会社がサステナブル投資を展開するにはアセットオーナー、つまり資金の出し手の理解が欠かせない。アセットオーナーがサステナブルを志向し運用会社に積極的にオーダーを出していってほしい。

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用語解説:
・ESG:環境(Environmental)、社会(Social)、企業統治(Corporate Governance)の英頭文字を取った造語。持続的成長のため企業が重視すべき項目として、E(環境)では地球環境保全が、S(社会)では職場でのダイバーシティ(多様性)の確保や格差の解消などが、G(企業統治)では情報開示や法令遵守で裏付けられた企業統治体制の確立などがそれぞれ挙げられる。ESGを重視する企業の株式や社債を対象とするのがESG投資である。

・インパクト投資:経済的利益に加え、社会や環境への好ましい影響(インパクト)も目的とする投資。リスクとリターンという2つの項目に対して、インパクトは第3の軸といわれ、投資によって社会課題がどの程度改善したかの明確な評価が求められる。

・Scope:温室効果ガス排出量を把握する指標。温室効果ガスの排出量について、企業や団体が排出する量をScope1と定義。企業や団体が消費する電力を生み出す過程で排出する量をScope2、販売した商品の輸送や廃棄、雇用者の通勤など事業活動の結果として生じる温室効果ガスのうちScope1、2に含まれないものがScope3。

・スチュワードシップ・コード:「責任ある機関投資家の諸原則」の訳を充てることが多い。英国が2010年に策定したThe UK Stewardship Codeを参考に、日本では2014年に金融庁が日本版スチュワードシップ・コードを策定した。企業の持続的成長に向けて金融機関や保険会社、年金基金といった機関投資家が実行すべきこととして、投資先企業との建設的な対話や顧客に対する情報開示などを定めている。

・コーポレートガバナンス・コード:上場企業が順守すべき企業統治の基本指針。金融庁と東京証券取引所が策定し、2015年6月から適用している。企業が株主や顧客、地域社会など多様な利害関係者と望ましい関係を築き、中長期的な企業価値向上につなげるため、適切な情報開示と経営の透明性確保、株主との対話などが盛り込まれている。

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