7~9月、「もみ合い」最多=インフレ焦点、上値2.8万円―時事・株価フォーキャスト
2022年07月01日 14時00分
(注)予想分布の上限3万1500円には3万1400円(1人)を含む。上限2万8000円には2万7750円(1人)を含む。下限2万5500円には2万5800円(1人)を含む。
時事通信は7~9月の日経平均株価の見通しについて市場関係者にアンケートを行い、24人から回答を得た。予想の最多は上値が2万8000円で6人、下値は2万5000円で8人。方向感は「もみ合い」が8人で最も多かった。上値、下値とも実現する条件については、米国や世界のインフレ動向次第との見方が大勢だった。
上限の予想レンジは2万7500円~3万1400円。上限に達する条件は、米国や世界的なインフレの落ち着きや景気への懸念後退を挙げる声が多い。国内企業業績の上方修正への指摘も目立った。
下限は2万4000円~2万6000円。条件は米国などでインフレが収まらず、金融引き締めが強化された場合を挙げる意見が多かった。
方向感は「もみ合い」に次ぎ、「上昇・上向き」が6人だった。調査は6月30日までに実施した。(了)
【市場関係者の株価予想】
市場関係者の回答は以下の通り。
①日経平均株価の7~9月の予想レンジ(方向感)
②上値実現の条件
③下値実現の条件
◆市川雅浩:三井住友DSアセットマネジメントチーフマーケットストラテジスト
①2万4500~3万1400円(もみ合い)
②WTI原油先物価格が1バレル=100ドルを割り込んで低下。世界的なインフレ懸念および景気減速懸念の後退。米国株の急騰。
③WTI原油先物価格が過去最高値(1バレル=147.27ドル)を超えて上昇。世界的なインフレ長期化と景気の大幅減速。
◆新井洋子:三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ・グローバル投資ストラテジスト
①2万5000~3万1000円(方向感はやや上昇)
②グローバル景況感が拡大基調を維持し、特に中国景況感が当局が実施する財政・金融政策によって改善基調が明確となること。ドル高・円安と原材料高による輸入物価の上昇による個人消費への影響が限定的となり、経済活動の正常化が国内景況感を明るくすること。
③インフレ高進によって国内消費の減速が鮮明化していくこと。供給制約が緩和方向に進まず、原材料高が企業利益を圧迫する。海外景気も米国経済の失速が鮮明化し、景気後退がより意識されること。
◆浪岡宏:T&Dアセットマネジメントチーフ・ストラテジスト
①2万5000~3万円(上昇)
②参院選の結果が重要なカギを握るとみている。自民党が幾分か議席を積み増し、岸田文雄首相の政権基盤をより強固なものにすることが重要だろう。そのうえで、日本維新の会が議席を積み増し、存在感を増すことで、政権に成長重視の姿勢を堅持するよう意識づけることも必要だとみている。「骨太の方針」を具体化していくなかで、「成長」「改革」という姿勢を打ち出していくことは海外投資家が日本株を見直すきっかけになるとみている。
③米中経済の減速次第では下限に到達しよう。米国経済は、来年前半に景気後退に陥るか、陥らなくても潜在成長率を大きく下回るだろう。足元の各種経済指標はそうした展開を示唆している。米連邦準備制度理事会(FRB)当局者の発言も全体的にタカ派化している点に要注意。中国については、ゼロコロナ戦略と経済政策の評価を軸に、今秋の党大会に向けて指導部の駆け引きが続くと予想。結果、経済政策は不十分となり低迷が続く可能性に注意している。いずれも日本の外需企業の1株当たり利益(EPS)切り下げにつながるため、要注意。
◆糸島孝俊:ピクテ・ジャパン運用・商品本部投資戦略部ストラテジスト
①2万5000~3万円(夏にいったん下落して秋に再上昇のイメージか)
②世界的インフレが(高止まりだが)いったん落ち着く。米国の利上げ幅縮小へ。ロシア・ウクライナ情勢の停戦合意期待高まる。中間決算発表で業績予想を上方修正。コロナ一巡で内需拡大も。
③世界的インフレが収まらず、米国の利上げ拡大へ。スタグフレーションの懸念もくすぶる。ロシア・ウクライナ情勢の長期化(悪化)。
◆小高貴久:野村証券シニア・ストラテジスト
①2万5800~2万9500円(横ばい圏から後半上昇)
②米国のインフレ抑制が顕在化。4~6月期企業決算で業績上方修正。日本で製造業を中心に挽回生産が顕在化。参院選後の政府の経済対策で構造改革が進むようなメニューが示される。
③米国でインフレが再加速し、利上げペースが加速。日銀が金融緩和を放棄し、日本の長期金利(10年国債利回り)が上昇してしまう。
◆北原奈緒美:内藤証券投資調査部シニア・アナリスト
①2万5500~2万9500円(上昇へ)
②物価高によるコスト増加の価格転嫁が進んでいることが確認できれば、日経平均はボックスの上限2万8300円を超えて上昇するだろう。6月13日発表の法人企業景気予測調査では、大企業・製造業の景況判断指数(BSI)が4~6月期のマイナス9.9から7~9月期は8.2と改善方向にある。先行きの企業業績の不透明感が指摘されるが、企業はインフレへの対策を打っているとみられる。一方、参院選後に金融課税強化の議論が再開されることへの警戒感から、7~9月は3万円の大台回復の手前で株価上昇が止まるのではないか。
③インフレによるコスト増への対応の遅れが判明した場合。
◆服部誠:丸三証券専務(エクイティ本部長)
①2万4500~2万9300円(↘↗、7月下旬に向けたイベントの結果次第で乱高下)
②政治の安定や割安感、円安による輸出企業の業績上振れ、経済活動の正常化といった日本固有の材料に着目した海外マネーの流入。米消費者物価指数(CPI)の前月比の伸び、また米長期金利が明確にピークアウトし、米株式相場が反転すること。
③米インフレ高進が予想外に長引き、長期金利が一段と上昇。年末から来年にかけての米景気後退が強く意識されること。サプライチェーンの混乱や原油高が長期化し、企業業績にダメージを与えること。
◆井出真吾:ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト
①2万6000~2万9000円(上向き)
②市場心理の改善。日本企業については期初予想が例年以上に保守的だった上、想定以上に円安になっており、第1四半期決算で多少なりとも業績予想の上方修正が出るだろう。
③物価上昇に落ち着きが見られず、9月以降の大幅利上げや7月に1%の利上げが行われるとの観測が広がった場合。
◆壁谷洋和:大和証券チーフグローバルストラテジスト
① 2万5500~2万9000円(基本もみ合いも、徐々に上値を切り上げ)
②日銀が金融緩和で日本の景気を支えようと思えば思うほど、円安の圧力を高めてしまいかねないのは悩ましいが、景気の状況としては、遅れてやってきた経済再開によって、足元の景気のモメンタムは良好。ドル建て日経平均の下落は、日本株の出遅れ・割安感を演出している面もある。海外勢にとって、投資妙味のある存在とみなされれば、当面の日本株にはそれなりに底堅い推移が期待できる。
③米国のインフレと金利上昇懸念がくすぶる状況に変化が見られない場合、投資家心理が劇的に改善することは見込みにくい。9月からの量的引き締め(QT)規模増額の影響も注視する必要がある。また、中国で再び新型コロナの感染が広がり、行動制限が強化された場合には、その悪影響が日本株に及ぶことは否定できない。
◆大谷正之:証券ジャパン調査情報部部長
①2万5500~2万9000円(上向き)
②利上げによりインフレがある程度沈静化。7月に0.75%の利上げを実施した場合、9月以降の利上げ幅は0.5%以下となり、利上げのピークアウトが見えてくるため、利上げへの警戒感も景気減速懸念も和らぐ。中国のロックダウンによるサプライチェーン混乱の影響も第1四半期でおさまり、第2四半期以降は業績回復が見込める。国内の消費回復で内需企業の業績もしっかりし、先行きの株高期待につながる。
③参院選を無難に通過した後、成長より分配が重視され過ぎると、株価下押しリスクとなる。米中間選挙も不透明要因。
◆大塚竜太:東洋証券ストラテジスト
①2万5000~2万9000円(上向き)
②米国のインフレが落ち着く。日本企業は、円安や経済再開もあって業績予想が上方修正されやすいと考えられる。
③ウクライナ情勢や米国の物価上昇が落ち着かないこと。また、日銀のイールドカーブ・コントロールが海外投機筋の売りに屈するとの警戒感が高まれば、株式市場にも影響が出よう。
◆小林真一郎:三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員
①2万5000~2万9000円(もみ合い)
②米国のインフレ圧力の緩和と米国株価の反発。新型コロナウイルスの感染拡大一服後の需要の順調な回復。
③米国の金融引き締め加速と米国株価の下落。国内の物価上昇を受けた個人消費の減速。
◆三井郁男:アイザワ証券ファンドマネージャー
①2万5500~2万8500円(もみ合いから上昇)
②米CPIが夏場にピークアウト感がでる指標が出る。米国株のボラティリティーが低下する。自民党が安定政権を樹立。財政政策の進展期待。インバウンドが拡大方向に向かう条件がそろう。サプライチェーンの混乱が収束方向に向かう。
③エネルギーなど供給不足が続く。米CPIが高止まりする。FRBの金融引き締めが加速する。円安が加速する。新型コロナウイルス感染再拡大。サプライチェーン問題や原材料高騰が続き業績下方修正が相次ぐ。
◆香川睦:楽天証券経済研究所チーフグローバルストラテジスト
①2万5500~2万8500円(目先のもみ合い商状後、戻り歩調を辿っていく)
②米国のインフレピークアウト→金融引き締めのペースダウン期待→米国株の底入れ~戻り基調
③米国のインフレ加速→金融引き締め強化懸念→景気後退不安の高まり→米国株の弱気相場継続
◆山本信一:岡三証券シニアストラテジスト
① 2万5500~2万8500円(もみ合い)
②米国でのインフレピークアウトと景気悪化懸念の後退。半導体不足の解消や中国の生産活動回復。
③7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも利上げ打ち止め感出ず。日本企業の4~6月期決算発表で想定以上の下方修正。
◆三宅一弘:レオス・キャピタルワークス経済調査室長
①2万5500~2万8500円を中心とするもみ合い(底練り、底値形成)
②2万9000円突破=米国の物価高騰のピークアウト感。FRBの大幅利上げ観測のスローダウン。米長期金利の低下。
③2万5000円割れ=米国の物価高騰継続。FRBの大幅利上げ継続(9月以降も0.75%利上げ)観測。米国景気の急速な景況感悪化(景気下ブレ観測) 。
◆野坂晃一:証券ジャパン調査情報部副部長
①2万6000~2万8000円(目先下落後、上昇へ)
②パウエルFRB議長の発言や経済統計から金融引き締めペースの鈍化の兆候を読み取れるようになれば、株価は上昇する。7月26、27日にFOMCがあり、8月下旬には米国で経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が予定されており、インフレ沈静化と景気底割れ回避を両立するシナリオを市場参加者が描けるようになれば、2022年度後半の日本株上昇につながるだろう。
③米国の金融引き締め強化を連想させる物価指標の過熱。
◆藤代宏一:第一生命経済研究所主任エコノミスト
①2万6000~2万8000円(横ばい、ないし下値切り上げ)
②株価反転のきっけとしては、ジャクソンホール会議で9月の米利上げ幅が0.5%に縮小するとの見方が固まり、米金利が安定することなどが考えられる。日本国内では、内需・インバウンドの回復や、自動車産業の緩やかな復活が期待される。中国も、ロックダウン解除と景気対策によるリバウンドが見込める。
③①で挙げたように米金利が安定するまでは、引き締め警戒感が強く、株価はダウンサイドリスクが大きい。
◆圷正嗣:SMBC日興証券チーフ株式ストラテジスト
①2万5000~2万8000円(もみ合い)
②世界的なインフレの減速。中国景気の景況感改善 。
③世界的なインフレの加速。米連邦準備制度(Fed)による利上げパスの上振れ 。
◆益嶋裕:マネックス証券マーケット・アナリスト
①2万5000~2万8000円(もみ合い)
米景気や米金融政策の不透明感、コストプッシュインフレというネガティブ材料と、円安による業績下支え、インバウンドによる消費増などのポジティブ材料の綱引きでもみあいとなる展開を想定。
②FRBが金融引き締め政策を現状の延長線で行うまたは抑えめにするとの期待感の醸成。日銀の緩和姿勢の維持 。
③FRBの金融引き締め政策の一段の強化とそれに伴うスタグフレーション不安。日銀の緩和姿勢の転換 。
◆村山大知:カイカ証券アナリスト
①2万4000~2万8000円(目先上昇後、下落へ)
②急落の反動高で上昇基調にある現在の勢いが継続する可能性がある。ただし、3月の今年最高値は超えられず、2万8000円程度で頭打ちと予想する。
③日本株固有のポジティブな材料は乏しく、米国株が今年最安値を更新する場面があれば、日本株も連動して下げるだろう。
◆伊井哲朗:コモンズ投信社長
①2万4000~2万8000円(下落)
②消費や雇用に関する米国統計で弱めの数字が出れば、インフレのピークアウト観測から株価が上昇するだろう。
③7~9月に2022年の最安値を付け、その後の株価上昇を予想している。7月26、27日のFOMCでは再度、0.75%の利上げが決まるとみている。パウエルFRB議長は利上げペース緩めるには物価の落ち着きが必要だとの認識を示しており、インフレ沈静化を示唆する経済統計が単月ではなく数カ月連続して出てくるまでは、FRBの金融引き締めが日本株の懸念要因となるだろう。
◆菊池真:ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表取締役
①2万4000~2万7750円(7月前半は戻りを試し、半ばから下落を始め、8月中に安値に到達。9月は安値圏でのもみ合い)
②目先は目立った新規材料がない中で、米国株が下げ過ぎの反動で、下落の半値戻し程度(NYダウで3万3000ドル程度)まで戻る。
③4~6月期の企業業績で高インフレとコスト上昇の悪影響が広がりを見せ、企業業績の今後の下方修正懸念が高まる一方で、インフレ高止まりを受けて7月27日FOMCでFRBは市場想定を超えて一段とタカ派化加速する。
◆福田理弘:フィデリティ投信インベストメント・ディレクター
①2万5000~2万7500円(基本感はレンジでのもみ合い)
②米国インフレの上昇率にピークアウト感が現れ、FRBの9月利上げが0.5%以下にとどまる。
③米国インフレの上昇率が高止まりしたまま、景気減速の兆候が広がる。
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