〔感応度・石油関連株〕元売り3社、想定原油相場は90~100ドル=23年3月期
2022年06月20日 10時00分
ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、原油価格は2008年以来の高値水準にある。代表的な米国産標準油種WTI先物相場は、米欧諸国によるロシア産原油の輸入禁止などの制裁決定を受け、3月初旬に1バレル=130ドル台を超える水準に上昇、現在も1バレル=120ドル前後で推移している。原油価格の上昇はガソリンや電気料金などの値上がりを招き、国内の企業活動や消費者にとってはマイナスの影響が大きいが、石油関連など一部の企業には「原油高メリット」をもたらす側面もある。
時事通信社が石油関連企業を対象に調べたところ、石油元売り大手3社の23年3月期の想定原油相場(いずれもドバイ原油価格)は、ENEOS〈5020〉が1バレル=90ドル、出光興産〈5019〉とコスモエネルギ〈5021〉はともに同100ドルとしている。原油価格が上昇すると備蓄石油の評価額が膨らむなどして元売り各社の利益を押し上げるが、その感応度を見ると、ドバイ原油が想定より1バレル=1ドル上昇した場合、ENEOSは84億円、出光興産は37億円、それぞれ営業利益が押し上げられ、コスモエネルギは経常利益で29億円のプラス寄与があるという。
さらに、円安局面ではドルベースの備蓄石油評価額が膨らむため、3社は「円安メリット」も受ける立場にある。各社の想定為替レートはENEOS、出光興産がともに1ドル=120円、コスモエネルギは同123円。1ドル=1円円安が進んだ場合の為替の感応度は、営業益ベースでENEOSが約94億円、出光興産が約30億円、コスモエネルギーが経常益ベースで約26億円となっている。
資源開発大手では、石油資源〈1662〉の23年3月期想定原油相場が原油CIF価格(運賃・保険料などを組み込んだ価格)で1バレル=70ドル、INPEX〈1605〉は22年12月期の期初時点で、ブレント原油で同75ドルと設定。原油市況に対する感応度はINPEXが60億円、石油資源は1億7000万円の純利益増加要因になるとされる。
原油高を背景に元売り3社は22年3月期に、純利益がそろって過去最高を記録するなど好決算を記録。23年3月期は原油高騰が一段落するとして3社とも減益を予想するが、石油関連企業について株式市場からは「7月下旬ごろから本格化する4~6月期決算発表で、業績予想を上方修正する企業があるか注目したい」(国内証券)と、業績上振れを期待する声も聞かれる。(了)