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日米の株価反転は本物か…金利上昇とドル高に警戒感

2022年07月08日 17時15分

EPA=時事EPA=時事

 7日の米国市場でS&P500指数が3900台を回復し、東京市場では東証株価指数(TOPIX)が節目の1900を上回った。ともに約2週間ぶりの水準だが、日米ともに金利上昇やドル高進行への警戒感は消えていない。株式市場全体の反転トレンド入りはまだなのか。

 S&P500は6月30日安値から7月7日高値まで4.6%高、TOPIXはS&P500に半日遅れる形で7月1日から8日高値まで3.9%高と上昇した。米WTI原油先物が5日に1バレル=100ドルの大台を下回ったほか、6日には米10年物国債の利回りが2.7%台前半と、3.3%に迫った6月中旬に比べて大幅に低下したことが買い材料とされた。株価だけを見る限り、インフレ懸念が去ったかのような印象だ。

 ただ、市場関係者はインフレへの警戒感を緩めていない。

 米国株情報の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は6日早朝「ドル高で打撃を受ける8銘柄」とする記事を配信。インフレ圧力やウクライナ情勢を背景とするドル高がマイナス要因になる企業として化粧品のエスティー・ローダーやカジノ運営のラスベガス・サンズ、半導体のエヌビディアなどを紹介した。IT関連の指標銘柄のひとつとなっているエヌビディアについて、バロンズは5月にも環境悪化を警告済み。今回は売上高の84%を海外で計上するエヌビディアにとって、厳しい試練となりそうだ、と述べている。

 同記事によると、ゴールドマン・サックスのストラテジスト、デービット・コスティン氏は米国内売上高の多い企業は今年に入ってから、海外売上高の多い企業をアウトパフォームしていると述べ、海外依存型企業の苦戦を遠回しに指摘している。

 直近の株価上昇の原因について、みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「テクニカル要因で米国債利回りが低下し、それを好感して株価が反発した程度の話ではないか」との見方を示す。日米株価上昇をもたらした米10年債利回りの低下は連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和縮小に伴う資金の一時的な偏りが原因であり、景気後退を本格的に織り込んだものではないという。

 FRBは6月に月間475億ドルのハイペースで量的緩和縮小に着手。このため、一時的に債券の需給が緩んで利回りが上昇したが、中旬以降は緩和縮小のインパクトが一巡し、債券高(金利低下)を招いた可能性がある。また、米国債利回りは夏場にかけて低下する季節性が強い。

 小林氏は「現状は制御不能なインフレが制御可能になりつつあるように見えるといった程度であり、本格的なインフレ率の抑制にFRBが成功できると断言できる状況には未だほど遠い」と指摘している。

 

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