日本株に海外マネー流入再開…米国投資家には「バーゲンセール」
2022年07月15日 16時15分
◆日本株に海外マネー流入再開…米国投資家には「バーゲンセール」
7月に入って海外投資家が日本株を大幅に買い越している。円安と低いインフレ率から、米国など海外勢には日本株がバーゲンセールさながらのお得な掘り出し物に映るようだ。キーエンス(6861)や日立製作所(6501)には、米国の運用会社が熱い視線を注いでいる。
◆今年2番目の大幅買い越し
東証が14日発表した投資部門別の株式売買状況では、海外勢は7月1週(4~8日)、日本株を4307億円買い越した。4月1週(4~8日)の6857億円に次ぐ今年2番目の規模で、先物を含めると買い越し幅は1兆円を軽く上回る。
海外勢の大幅買い越しについて東京市場では、「国内機関投資家による四半期ごとの資産配分調整に伴う買いだけでなく、円安がもたらすドル投資家目線での値頃感からも買われている」(外資系証券)との指摘が聞かれる。
米国では6月の消費者物価の伸び率が前年同月比9.1%、前月比1.3%と、インフレが顕著だった。7月26、27日の連邦公開市場委員会(FOMC)を前に政策金利の1%引き上げも予想される。主要国の中央銀行がインフレ退治に手を焼く一方、物価上昇率がようやく2%台に乗った日本は「インフレと金利上昇リスクを回避できる唯一の先進国市場として注目されている」(同)という。
◆日立は「偽装グロース株」
米国株式市場の様子を日本語で報じる「バロンズ・ダイジェスト」は15日早朝、「円安・低インフレ、日本株を狙え」と題する記事で米国の日本株ファンドが強い買い意欲を示している様子を伝えている。
世界有数の機関投資家、米Tロウ・プライスが運用するTロウ・プライス・ジャパン・ファンド(PRJPX)はグロース(成長)銘柄を75%、バリュー(割安)銘柄を25%それぞれ組み入れている。PRJPXを運用するダニエル・ハーレー氏はグロース(成長)銘柄のうちキーエンスを「世界最高の工場自動化企業のひとつ」として推奨。バリュー株では、グループ再編後に配当を増やしたNTT(9432)を推している。
バリュー株の長期投資を得意とするヘネシー・ジャパン・ファンドを運用するマサカズ・タケダ氏は日立について「ソフトウエアやITにビジネスモデルを転換」した点を評価。「偽装グロース株」と表現して割安感を強調している。
◆目線はインフレ沈静化後に
マシューズ・ジャパン・ファンドの運用担当者はソニー(6758)のデジタルコンテンツの成長性が過小評価されている点を強調し、「ウォルト・ディズニーと比べれば非常に割安だ」と述べている。
米国のインフレが沈静化に向かえば、足元のドル高・円安の流れは逆転し、円安局面で仕込んだ日本の優良株は円高でドル換算値が膨らむことになる。四半期ごとの運用成績に一喜一憂しない長期投資ファンドは早くも米国のインフレ沈静化後を見越して日本株を買っているのかも知れない。