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4~6月、上値最多2・9万円=ウクライナ懸念で下振れ―時事・株価フォーキャスト

2022年04月01日 14時00分

 

 時事通信は4~6月の日経平均株価の見通しについて市場関係者にアンケートを行い、26人から回答を得た。最多予想は上値が2万9000円(8人)、下値は2万6000円、2万6500円、2万7000万円(それぞれ5人)。日経平均はロシアによるウクライナ侵攻を受けて3月上旬に年初来安値を付けた後、回復基調をたどったが、先行き不透明感が依然強い。上値最多は1~3月について3カ月前に聞いた際の3万1000円から下振れした。

 米国内のインフレ進行を受けた米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ姿勢も上値予想を抑える要因。日米金利差の拡大で円安が進み、日本経済に悪影響が及ぶとの懸念も聞かれた。

 一方、下値予想は2万6000円台付近に集中。ウクライナ情勢の悪化で原油などが一段高となり、FRBによる利上げ加速を警戒する見方もあった。福田理弘フィデリティ投信インベストメントディレクターは下値のめどを2万3000円とした。調査は3月30日までに実施した。(了)


【市場関係者の株価予想】
 市場関係者の回答は以下の通り。
 ①日経平均株価の4~6月の予想レンジ
 ②上値実現の条件
 ③下値実現の条件


◆ 新井洋子:三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ・グローバル投資ストラテジスト

①2万5000~3万2000円

②中国政府による一連の政策が同国の景況感の改善を後押しし、米国経済も堅調さを維持する。こうした中、外需を牽引役に日本企業の業績拡大が続き最高益を更新する。供給制約による悪影響は続くものの半導体などの先端製品の需要が好調を維持し、原材料高の悪影響は、価格転嫁、円安、数量増などで相殺する展開となる。また、資源高・円安による内需への影響も、超過貯蓄や日本政府による政策によって限定的となる。

③中国のゼロ・コロナ政策が長期化し、中国経済の成長が弱含み、FRBによる金融引き締めが米国景況感の拡大を鈍化させる。供給制約の影響が年後半にかけても継続し、景況感が悪化するなか企業はコスト増の価格転嫁が難しくなり、業績が悪化トレンドとなる。資源高・円安が消費を鈍化させることで、内需企業の業績回復がとん挫する。


◆ 圷正嗣:SMBC日興証券チーフ株式ストラテジスト

①2万7000~3万1000円

②ウクライナ情勢の好転、コモディティ価格の上昇一服、インフレ懸念後退。

③ウクライナ情勢の悪化、コモディティ価格上昇等による、企業業績へのマイナス影響の顕在化。


◆ 市川雅浩:三井住友DSアセットマネジメントチーフマーケットストラテジスト

①2万3800~3万0700円

②停戦合意などによるウクライナ情勢の安定化、WTI原油先物価格が1バレル=100ドルを割り込んで低下、世界経済の先行き不透明感の払拭。

③ウクライナにおける一段の軍事的緊張の高まり、WTI原油先物価格が過去最高値(1バレル=147.27ドル)を超えて上昇、世界経済の先行き不透明感の強まり。


◆ 証券系シンクタンク

①2万7000~3万円

②世界の経済成長見通しがやや鈍化する可能性があるが、大きく落ち込まないこと。日本企業による株主還元強化が継続し、自社株買いが増加すること。

③インフレやロシア情勢などのによる世界経済の下振れにより、日本企業の業績が悪化すること。


◆ 大塚竜太:東洋証券ストラテジスト

①2万6000~3万円

②業績回復基調が見えてくれば、買い安心感が出よう。夏の参院選を見据えた経済対策も、株価の上昇に寄与し得る。

③ウクライナ情勢が再び緊迫するなど地政学リスクは下押し要因になる。原油など資源価格の上昇や為替のドル高・円安などコスト増が懸念される中、企業が発表する新年度の業績予想が市場の想定以上に保守的になると、失望感が出るかもしれない。チャートに開けた窓を埋める形で、再度2万6000円程度まで押される展開は考えられる。


◆ 益嶋裕:マネックス証券マーケット・アナリスト

①2万5000~3万円

②コロナの収束傾向継続、FRBの引き締めペースが加速しない、日本のインフレ加速に対して日銀が早期の金融引締めを行わない、方針を示さない。

③コロナが再度増加、FRBが引き締めペースを加速(加速の意志を表明)、日銀が金融引締め姿勢を表明、米欧日vs中露などの政治対立が本格的な経済対立に波及(米中貿易摩擦がより深刻に拡大)。



◆ 福田理弘:フィデリティ投信インベストメントディレクター

①2万3000~3万円

②ウクライナ問題に収束の方向性が見え、商品相場が落ち着きを取り戻す。また、FRBの利上げも5月と6月に続けて0.5%ずつ引き上げられるようなことにはならない。日本企業の2022年度決算予想が増益見通しとなる。

③ウクライナ問題がさらに悪化し、商品相場が一段高、インフレ上昇圧力が加速する。その結果、FRBは5月&6月と続けて0.5%ずつの利上げを実施する。日本企業の2022年度決算予想が減益へと転じる。


◆ 浪岡宏:T&Dアセットマネジメント・チーフ・ストラテジスト

①2万4500~2万9900円

②ウクライナを巡る地政学リスクが後退して、原油価格が緩やかに下落する展開。WTI原油価格が1バレル=80ドルくらいまで落ちれば、原油価格が懸念材料から外れてくるだろう。そして、米中の経済指標が底堅く推移するなかで、日本企業も良好な業績を生み出せるだろうという認識が広まる。

③ウクライナを巡る地政学リスクが長引く中で、原油価格がさらに上昇すれば株価の重しとなり得る。原油需給がひっ迫する中で、原油の生産から流通までにかかわるどこかで(ウクライナ問題と無関係な場所でも)事故や攻撃があれば、価格は上振れしやすい。また、FRBが引き締めを行う米国の経済指標(消費や住宅)が悪化することや、ゼロコロナ戦略を堅持する中国の経済指標が悪化すれば日本株にも重しとなりうる。


◆ 北原奈緒美:内藤証券投資調査部シニア・アナリスト

①2万6000~2万9700円

②米連邦準備制度理事会(FRB)の連続利上げやバランスシート縮小の織り込みが進み、下値不安が和らいだ。国内の物価上昇を受けて政府が緊急対策に乗り出したことで、個人消費が停滞するリスクも後退している。しかし、金融課税強化や自社株買い規制への懸念が市場でくすぶっているうちは、3万円回復のハードルは高いのではないか。

③地政学リスクの再燃。ロシアへの対応をめぐる西側諸国の結束が乱れれば、投資家の不安を呼ぶ恐れがある。


◆ 井出真吾:ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト

①2万7000~2万9500円

②ウクライナ情勢や、ロシアへの経済制裁で世界経済に下押し圧力がかかっても、GDP(国内総生産)のプラス成長や景気回復は続き、日経平均株価のEPSは増加していく。米国の利上げは大方織り込まれ、円安のプラス効果もある。

③ウクライナ情勢の先行き不透明感。円安や資源高による物価・コスト高。新年度業績が見通しづらい。決算発表で新年度の業績予想が示される大型連休明けごろまで、積極的になれない。


◆ 山本信一:岡三証券シニアストラテジスト

①2万6500~2万9500円

②ウクライナ情勢鎮静化による資源価格の落ち着き、コロナ収束による国内経済活動の本格再開、半導体などの供給不足解消。

③資源価格の高止まり、日本企業の慎重過ぎる2022年度業績見通し、米金融引き締めへの過度な警戒による米国株の不安定化。


◆ 壁谷洋和:大和証券チーフグローバルストラテジスト

①2万6500~2万9500円

②足元の株価は堅調に推移するが、相場の先行きについて、視界が完全にクリアになったわけではなく、依然として不透明な部分は残っている。ウクライナ問題の解決、インフレの沈静化、米金利上昇の一服、コロナ後の経済再開など、株価の本格反騰に必要な条件を満たしていくことで、株式市場は正常化に向かうと想定される。

③ウクライナ問題の長期化や、米金利および原油価格の上昇が続いた場合には、株価の下押し圧力が強まる可能性がある。また、日本は経済再開に時間を要したことや、エネルギー価格上昇による業績下押し懸念もくすぶるため、年度決算の発表時に企業が極端に保守的な業績見通しを示してきた場合は要注意と考える。


◆ 三宅一弘:レオス・キャピタルワークス経済調査室長

①2万6500~2万9500円

②ウクライナ戦争の停戦、資源エネルギー価格のピークアウト(軟化)。

③戦争継続、資源エネルギー価格の上昇。


◆ 小林真一郎:三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員

①2万5500~2万9500円 (引き続き値動きの激しい展開を予想)

②ウクライナ情勢の緊張緩和(停戦合意にまで至れば、3万円超えも)、原油など資源価格の下落。

③ウクライナ情勢の悪化、原油など資源価格の一段の上昇と世界的なインフレ懸念・金融引き締めの加速、新型コロナウイルスの再拡大(第7波)による経済活動の抑制・停滞。


◆ 馬渕治好:ブーケ・ド・フルーレット代表

①2万7000~2万9000円

②中期的には世界的な景気回復により、機械や電子部品など設備投資関連業種を中心に戻っていくイメージを描いている。ウクライナ情勢も既にテーブル上にある問題だ。市場が最も気にしているエネルギー価格も、一段高とならなければ株価が再び大きく調整することはないだろう。

③目先は5月のFOMC、ウクライナ情勢など不透明要因がまだ多く、上昇しにくい。円安による輸入インフレへの警戒感も出ている。


◆ 野坂晃一:証券ジャパン調査情報部副部長

①2万6500~2万9000円

②買い戻しなどによる足元の回復基調が4月中旬ごろまで継続すると予想する。

③原油など資源をはじめとする原料コストの上昇。次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)を機に金利先高観測が一段と強まる可能性がある。開催日は5月3、4日の予定で、大型連休明けの東京市場が短期的に動揺する恐れがある。ただ、直近2年の平均買いコストに近い500日移動平均線が下値を支えるだろう。


◆ 大谷正之:証券ジャパン調査情報部部長

①2万6000~2万9000円

②原油価格が下がり、米国の金利上昇ペースも鈍れば、株価の戻りの原動力になる。ただし、3万円手前は昨年6月からのもみ合いで出来高が多く、株価が戻る局面で需給の壁になりやすい。

③景気や業績の見通しが慎重になること。資源高により原材料価格が値上がりして業績に悪影響を及ぼす可能性がある。日本の大型連休中にFOMCが開かれることもあり、決算が出そろう5月にかけて株価は調整しやすい。


◆ 糸島孝俊:ピクテ投信投資顧問ストラテジスト

①2万6000~2万9000円

②ロシアとウクライナの停戦 、1ドル=120円台の円安定着(企業業績予想の上方修正期待)など。

③ ロシアとウクライナの消耗戦(エネルギー価格高止まり)、インフレによるコスト高(企業業績予想の下方修正リスク)など。


◆ 三井郁男:アイザワ証券ファンドマネージャー

①2万5500~2万9000円

②ウクライナ情勢が織り込まれている以上に悪化しない(ロシアへの制裁を含む)。強いインフレ圧力に対し、5月のFOMCの0.5%利上げやQT開始などに対し過度にネガティブな反応が出ない。円安に対し「悪い円安」の評価より、輸出企業の収益改善効果をより織り込む。夏の参院選に向けある程度経済に効果的な経済対策が出される。

③ウクライナ危機がエスカレートし地政学的リスクが強まる。インフレ圧力が収まらず利上げスピードの加速とQTの前倒し観測が強まる。来年度の業績見通しが、市場コンセンサスに比べ大幅に下回る。悪い円安が意識され日銀の金融政策が行き詰まる。


◆ 小高貴久:野村証券シニア・ストラテジスト

①2万5000~2万9000円

②1-3月期の決算発表を受けて、業績上方修正が確認され、決算発表を受けた企業の2022年度業績ガイダンスも良好な場合。かつ、FRBの利上げ加速とQT(量的引き締め)開始をもってしても、事前に周知・織り込みがなされていて、市場が安心してイベント通過となった場合。

③FRBの急激な金融引き締めが景気に過度な下押し圧力になると認識され、逆イールドの深化など金融市場の混乱が急拡大する場合。なおかつ、対ロシア経済制裁などで、半導体や特殊部品の生産の目詰まりが発生し、幅広い産業の生産に支障が出るとの見方が浸透した場合。


◆ 窪田朋一郎:松井証券シニアマーケットアナリスト

①2万4000~2万9000円

②ウクライナ/ロシア間の停戦成立、米インフレのピークアウト確認。

③米金利の上昇に伴う米経済の減速、世界的なインフレに伴う個人消費の減退。


◆ 服部誠:丸三証券専務(エクイティ本部長)

①2万5500~2万8800円

② ウクライナ紛争の早期停戦によりWTI原油先物相場が100ドル割れで落ち着くこと。 FRBの金融引き締め加速をマーケットが織り込むこと。ドル円が120円台で推移し日経平均の寄与度の高い輸出企業の来期業績見通しに円安効果が反映されること。

③ウクライナ紛争の長期化に伴う原油価格の高止まり。5月以降に開始が予想されるQTの規模が市場予想より大規模なものになること。インフレ長期化を背景に3月期決算企業の来期見通しが想定より慎重になること。


◆ 藤代宏一:第一生命経済研究所主任エコノミスト

①2万7000~2万8500円

②4月に株価が大きく押されることがなければ、2万8500円前後での推移が予想される。自動車産業の供給制約に改善が見られたり、米国のインフレが落ち着く兆候があれば、日本株の支えになる。大企業・製造業が日経平均に占めるウエートは高く、円安も日本株にとってはポジティブだ。

③5月のFOMCがかなり強い引き締めイベントになりそう。大型連休中に開催されるため、東京市場は流動性の少なさも嫌気されやすい。逆イールドなど景気後退を連想あせるサインが出ており、株式市場でもいずれ景気が真剣に議論される局面は訪れそうだ。



◆ 伊井哲朗:コモンズ投信社長

①2万6500~2万8500円

②買い戻しがほぼ一巡したため、2万8000円からの上値は限られそうだ。ただ、部品不足が逆風となっている自動車などは円安進行に救われる形となりそうだ。「まん防」解除で国内経済が再び回りはじめる公算は大きく、旅行や飲食、エンターテインメント業界の2022年度業績の上向きが期待できる。

③3月9日の2万5000円割れが底値になったとみている。株価回復ペースが急だったため、4月以降は反動安でいったん下落する場面があるだろう。米国が金融引き締めに向かっているため、変動の大きい相場となりそうだ。


◆ 菊池真:ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表取締役

①2万4000~2万8500円

②ロシアとウクライナの停戦交渉が合意し、資源価格が軟化する。

③ コスト上昇の悪影響により、2022年度の企業業績が21年度比減益になることを市場が織り込む。


◆ 村山大知:カイカ証券アナリスト

①2万6000~2万8000円

②足元の水準が6月までの高値とみている。円安を材料としたトヨタなど輸出株買いにも限界があり、日経平均は頭打ちとなるのではないか。

③米国の利上げペースの加速。円安が進み、円の価値がどんどん毀損(きそん)している。日米の金利差は開く一方とみられ、「悪い円安」の進行も株価に悪影響を与えかねない。(了)

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