東証、地盤沈下に危機感=米欧中に後れ、改革なお途上
2022年04月04日 17時25分
東証の新市場が4日、始動した。60年ぶりの再編に踏み切ったのは、世界の主要な証券取引所に後れを取り、東証の地盤沈下が進んだことへの危機感がある。再編で魅力を高め投資マネーを呼び込む意向だが、最上位プライム市場の顔触れは大きく変わらず、「看板の掛け替え」との批判も根強い。東京市場再興へ改革はなお途上にある。
「上場企業の持続的成長に向けた取り組みが進展していく」。東証を傘下に収める日本取引所グループ<8697>の清田瞭最高経営責任者は4日の式典でこう期待を示した。ただ、東証をめぐる現状は厳しい。市場規模を示す時価総額でニューヨーク証券取引所や米ナスダックに大きく水をあけられ、中国・上海証券取引所に抜かれた。
東証によると、プライム上場企業1社当たりの時価総額の中央値は今月1日時点で594億円と、ニューヨークやロンドンに遠く及ばない。プライムの上場基準に満たず、「経過措置」の適用を受けプライムに移った企業も295社に上り、構成銘柄は総じて小粒で米欧に見劣りする。株主対応を企業に助言する会社の担当者は「1年後でも基準を満たせなければ、プライムから退場させ新陳代謝を促すべきだ」と指摘する。
一方、再編をきっかけに上場企業に改善の兆しが見られる。プライム上場の電子部品製造I-PEX<6640>は、インターネットに常時接続するコネクテッドカー(つながる車)などの需要拡大を見込み、先行投資を活発化させる構えだ。
同社は純利益に占める株主配当の割合を2021年12月期比2倍の30%に引き上げる中期目標を掲げた。財務担当幹部は「株主や金融機関から預かったお金で利益を生み、還元する姿勢が不十分だった。プライム上場を社の体質改善の道具にしたい」と意気込む。
日本株に投資する米機関投資家は「社外取締役に経営・市場戦略で高いスキルを持つ女性を登用する中堅企業も出てきた」と、多様性重視の姿勢を評価。コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の浸透が奏功しており、「中期的に優良銘柄に育っていく」とみる。
上場企業に生まれつつある変化の芽を育てて価値向上を促し、さらなる投資を呼び込んで成長を加速させる好循環をつくり出せるか。改革の実行力が問われている。(了)
東証新市場
2021年4月末現在、1部に上場する企業は2191社。「プライム」は証券市場で実際に取引される株式の時価総額などの基準を厳しくするため、約7 …