〔証券情報〕レバレッジ型ETF、高い人気=株価急変の一因にも
2020年07月03日 12時33分
日経平均株価の変動率の2倍といった高い利益が得られる可能性がある金融商品「レバレッジ型上場投資信託(ETF)」が個人投資家の人気を集めている。基準となる指標が日経平均と分かりやすく、うまく運用すれば短期で高い利益を得られるのが特徴だ。新型コロナウイルスの感染拡大が経済に影響を及ぼし始めた今年1月からは、日経平均の上昇率だけでなく、下落率に応じて価値が上がるタイプも取引が急増している。
ただ、値動きが期待通りにならなければ損失が多額に上るリスクがあり、取引には特に注意が必要だ。「株価の急変動をもたらす一因になっている」(市場アナリスト)との指摘も聞かれる。
▽売買代金上位の常連
インターネット証券最大手、SBI証券が公表した2日の日本株売買代金ランキングの首位は、レバレッジ型ETF「日経平均レバレッジ」。日経平均先物に投資するもので、例えば投資家が10万円を投じて買うと、証券会社がさらに10万円分のポジションを積むため、市場には20万円分が購入されたのと同じインパクトが反映される。購入時から日経平均が10%上昇すると、価値が20%分上昇し、投資家は少額の投資で大きな利益を得ることを期待できる。
こうした特徴が受け、売買代金は新型コロナのワクチン開発で注目されるアンジェス<4563>やソフトバンクグループ<9984>を上回った。
4位には「日経平均レバレッジETF」と逆に、日経平均が10%下落した場合に価値が20%上昇する「日経平均ダブルインバース」がつけた。日経平均が急落する直前に買っておけば、大きな利益を手にすることができる。
SBI証券によると、「日経レバレッジ」はここ数年、ランキング上位の常連だが、新型コロナが経済への悪影響を及ぼし始めた今年1月以降は「日経平均ダブルインバース」も上位5位以内に常駐するようになった。市場関係者は「ダブルインバース」人気の背景を「コロナ禍で株価が下落し、損失を出す人が多い中、自分が利益を得るとうれしく感じる心理を突いている」と説明する。
▽初心者は要注意
日経平均はコロナショックに伴い3月中旬につけた1万6000円台の底値から回復軌道をたどってきた。ただ、6月15日には前営業日比774円安、翌16日には逆に1051円高と乱高下する局面があった。
その週のSBI証券のランキング(6月15~19日)を見ると、「日経レバレッジ」は不動の1位で、「日経ダブルインバース」も2~4位で推移。東証関係者は「機械取引の浸透などと相まって、レバレッジ型ETFが株価変動に一役買ったのは間違いない」と分析する。同様の波乱現象は「今後も起きうる」という。
ファイナンシャルプランナーで金融商品の開発に詳しい古田拓也氏は「株価は薄商いの日などに持ち高調整だけで大きく動く場合がある」と指摘。「投資初心者には株価動向を経済ニュースだけで解釈しようとする人が多く、短期的な株価の先読みにも慣れていないため、多額のレバレッジ型ETF保有はリスクが大きい」と注意を呼び掛ける。「老後資金2000万円問題」を契機に新たに資産運用に関心を持つ層は増えているが、レバレッジ型ETFの取引に際しては、商品特性を十分に理解しておく必要がありそうだ。(了)
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