遠藤金融庁長官:地銀、「融資中心」から転換を=再編、公的資金も選択肢
2020年07月03日 18時19分
金融庁の遠藤俊英長官は3日、時事通信主催の金融懇話会でインターネットを通じて講演し、地域金融機関の経営について「融資を中心にしたビジネスモデルを大きく変える時代になった」と述べた。人口減少や超低金利などの厳しい環境下で、新型コロナウイルス感染拡大の影響が地方を直撃している。地域経済を支えるため、金融機関は再編や公的資金の活用も含め自ら改革を決断するよう求めた。
遠藤長官は「金融機関に求められる改革はコロナ前と変わっていないが、時間軸は短くなっている」と指摘。コロナ禍で融資先企業の業況が急速に悪化している現状に危機感をにじませた。中小企業の廃業を回避するため、事業承継や経営を担える人材の紹介、企業の合併・買収(M&A)など融資先の課題解決にどれだけ真摯(しんし)に対応できるか「地域金融機関の真価が問われる」と強調した。
地方銀行の生き残り策について、遠藤長官は「自分たちの組織の存立にとどまらず、中小企業や地域をどのようにしていくのか大きな視野を持って経営判断してほしい」と求めた。
その上で、経営の抜本強化へ「(国から)資本注入してもらうのか、他の金融機関と統合を目指すのか、異業態と資本提携するのか」と選択肢を例示。「(コロナ特例で経営責任を問われずに資本注入ができる)改正金融機能強化法も、一つのツールだ」と述べ、各行に決断を迫った。
一方、インターネット金融大手のSBIホールディングス<8473>と地銀の資本提携が相次いでいることについて「異業種と組むことで新たな金融サービスを顧客に提供でき、付加価値が増すと判断した結果ではないか」との見方を示した。
◇金融庁長官講演ポイント
一、融資中心のビジネスモデルを大きく変えなければいけない時代だ
一、金融機関に必要な改革は新型コロナウイルス感染拡大前と変わらないが、時間軸は短い
一、融資先企業への伴走姿勢で、地域金融機関の真価が問われる
一、組織存立にとどまらず、中小企業や地域をどうするか大きな視野での経営判断を求める
一、資本注入や他の金融機関との統合、異業態との資本提携などは各行の選択肢
一、(国が資本注入する)改正金融機能強化法は(生き残りの)ツールの一つ
一、異業種との提携は、新たな金融サービスを提供でき、付加価値が増すと判断した結果ではないか
(了)