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〔証券情報〕仮需は警戒領域に=解消なら下落加速

2021年03月12日 11時05分

日経平均株価の終値を示す電光ボード=5日午後、東京都中央区日経平均株価の終値を示す電光ボード=5日午後、東京都中央区

 裁定取引や信用取引の買い残が昨秋以降、積み上がっている。日経平均株価が上げ足を速めた時期と重なっており、買い残の増加は先高感を映しているが、ひとたび投資家心理が弱気に傾けば株安を加速する要因になる。米国の長期金利上昇への警戒感から市場が不安定さを増す中、需給面でも下値不安がつきまとう。

 東証が日々公表している「裁定取引に係る現物ポジション」(株数)は、今年に入って売り残が減少傾向、買い残が増加傾向となり、3月4日には買い残(4億4648万株)が売り残(4億2464万株)を上回った。金額を見ても、2月26日は売り残1兆2453億円、買い残8413億円と売り残が多かったが、3月5日時点では売り残1兆2021億円、買い残1兆4111億円と逆転した。裁定買い残の水準も、直近ピークの2019年3月末(1兆4428億円)に近づいている。

 前回、買い残が売り残を上回ったのは19年12月。この際は、やや遅れて「コロナショック」が訪れ、日経平均株価はその後一時1万6000円台まで押された。今回も、米国市場で再び調整色が出ると「先物売りが裁定解消売りを誘発して下げ幅が広がりやすく、警戒が必要だ」(銀行系証券)という。

 信用取引でも買い残が増えている。日経平均は今年2月のザラバ高値から5%程度調整しているが、2月5日時点で2兆7381億円だった買い残は、3月5日時点で2兆9841億円まで積み上がり、3兆円目前だ。

 日経平均は2月16日のザラバ高値から5%程度調整したが、「個人の信用評価損率はまだ低水準で、運用意欲は衰えていない」(大手証券)とされる。2月5日時点で3.26倍だった信用倍率は、3月5日には3.69倍まで上昇。調整局面でも「ナンピン買いを入れている」(前出の銀行系証券)という投資行動からは先高期待の根強さがうかがわれるが、株価が上昇に転じた局面では買い残の多さが戻り売り圧力となって、上値の重しになる可能性もある。

 米国の大規模な経済対策や新型コロナウイルスワクチンの普及による景気回復期待は強く、中期的な株高シナリオを描く市場関係者は多い。ただ、株価は同じ材料を「何度も蒸し返す」(投資助言会社)形で上昇し、上昇ペースも速かったため、調整未了感は残る。年度末まで残り営業日は少ないが、年金基金のリバランスなど期末特有の売買とともに、仮需の動向にも注意を払う必要がある。(了)

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