異例の緩和、「恒常化の危険」=拡大続けるETF購入―日銀の10年下半期議事録
2021年01月25日 18時04分
日銀は25日、2010年7~12月に開いた金融政策決定会合の議事録を公表した。円高・株安への危機感から、上場投資信託(ETF)などを買い入れる異例の金融緩和に踏み切ったが、白川方明総裁(肩書は当時、以下同)は「いつの間にか恒常化する危険性がある」と指摘していた。懸念した通り日銀はその後ETF購入を拡大、日本最大の株主として異形の存在感を示している。
日銀がETF購入を打ち出したのは10月4、5日会合。欧米経済の減速懸念に伴う円高・株安に歯止めをかけるため、5兆円の基金を通じた包括緩和に動いた。ETFの購入枠は4500億円。会合では、「(株式)価格の下支えではない」(須田美矢子審議委員)、「(損失が出れば)国民負担になる可能性がある」(西村清彦副総裁)との懸念が相次いだ。
翌年の東日本大震災を受け、日銀は購入規模を拡大。現在の黒田東彦総裁が13年4月に打ち出した「異次元金融緩和」で、ETF購入はさらに加速した。現在は年間12兆円を上限に買い入れており、20年末時点の保有残高は簿価ベースで35.3兆円。ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏の試算によると、時価ベースでは46.8兆円に上り、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を抜いて国内首位の株主となったもようだ。
日銀のETF購入は評価が分かれる。昨年来の新型コロナウイルス禍では、買い支え効果により株価の底割れを防ぎ、日経平均株価を約30年ぶりの高値に押し上げた。その一方で、株式市場は「官製相場」の色を濃くし、実体経済とも乖離(かいり)。井出氏は「日銀を意識して投資判断しなければならないのは不健全だ」と指摘する。
「最終的に(日銀に)ロスが発生する可能性が高まる」。当時の白川総裁はこう危惧していた。保有残高が増えるほど、株価の下落は日銀の財務を直撃し、中央銀行としての信認低下を招く。こうした「副作用」を無視できなくなった日銀は、今年3月の会合をめどに金融政策を点検するが、ETF購入の見直しも焦点となる。(了)
ETF
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