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新型コロナ猛威が国内外トップ=20年十大ニュース―時事通信

2020年12月14日 14時36分

AFP PHOTO / CENTERS FOR DISEASE CONTROL AND PREVENTION (CDC) / HANDOUT(AFP時事)
AFP PHOTO / CENTERS FOR DISEASE CONTROL AND PREVENTION (CDC) / HANDOUT(AFP時事)

 時事通信社は2020年の国内と海外の十大ニュースを選定した。それぞれ次の通り。

 【国内】

 ①新型コロナ猛威、初の緊急事態宣言

 1月16日、中国からの帰国者の新型コロナウイルス感染が国内で初めて判明した。2月に入ると海外渡航歴のない人の感染が相次ぎ、13日には国内初の死者が確認された。政府は27日に全国の学校に臨時休校を求めたが、感染拡大は止まらず、4月7日には7都府県を対象に新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を初めて発令し、同16日には全国へ拡大。可能な限りの外出自粛などを国民に要請した。

 新規感染者は4月上~中旬をピークに減少に転じ、宣言は5月25日までに全国で解除された。その後に到来した「第2波」は8月中旬をピークにいったん小康状態となったものの、感染者は11月に再び増加に転じ、「第3波」が続く。重症者数が増加し、医療崩壊の恐れが高まっている。

 ②東京五輪、1年延期

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、7月に開幕を予定していた東京五輪の1年延期が3月に決まった。安倍晋三首相らが国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と電話会談し、8月からのパラリンピックとともに「年内開催は不可能」との認識で一致した。世界最大のスポーツイベントとして知られる五輪が、開催年を延期したのは史上初。

 戦後復興の象徴だった1964年以来の大会開催は、疫病で持ち越された。経済的ダメージを避けるため中止は回避されたが、コロナ対策を含む新たな経費は東京都や政府が公費で賄うことになった。大会の簡素化も検討されたが、IOCは実施競技や開閉会式の規模縮小には消極姿勢。テレビ放映権料など、平和の祭典に利権が絡む負の側面が浮き彫りになった。

 ③安倍首相が退陣、後任に菅氏

 安倍晋三首相が持病の悪化を理由に9月16日に退陣した。経済政策「アベノミクス」を掲げ、国政選挙で連勝。「1強」体制の下で経済再生に取り組んだ。一方、桜を見る会などをめぐる疑惑も浮上し、政権長期化によるおごりも指摘された。悲願の憲法改正は実現しなかった。在任期間は第1次政権を含む通算、第2次政権以降の連続でともに憲政史上最長。

 代わって第99代首相に就任したのが安倍政権を官房長官として支えた菅義偉氏。安倍路線継承とともに「行政の縦割り、あしき前例主義の打破」を打ち出した。経済再生と新型コロナウイルス感染抑止の両立を政権の優先課題に位置付け新内閣をスタートさせたが、対応には批判も出ている。日本学術会議会員候補の任命拒否も露見し、波紋を広げた。

 ④九州で豪雨、死者多数

 7月3~8日、九州一帯を記録的な豪雨が襲い、多くの河川が氾濫して大規模な水害が発生。熊本県や福岡、鹿児島両県などで死者計75人、行方不明者2人を出した。被害の最も大きかった熊本県では、球磨川が氾濫し、球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」の入所者14人を含む65人が犠牲となり、4500棟を超える住宅が全半壊した。

 雨は中国~東北地方の広範囲で続き、気象庁は同月31日までの期間を「令和2年7月豪雨」と命名した。停滞する梅雨前線に湿った空気が流れ込んで大雨が長期化し、特に九州では積乱雲が連なる線状降水帯が多数発生したのが原因とされた。治水対策のため、熊本県は11月、環境保護などを理由に民主党政権下で建設中止となった、球磨川支流の川辺川でのダム建設を容認した。
⑤参院選買収事件で河井元法相夫妻逮捕

 2019年7月に投開票された参院選をめぐり、広島県内の首長や県議、後援会関係者らに現金を配布、買収したとして、東京地検特捜部は6月18日、公選法違反容疑で、河井克行元法相=衆院広島3区=と、この選挙で初当選した妻案里議員=参院広島選挙区=を逮捕した。国会会期中の国会議員には不逮捕特権があり、特捜部は通常国会が閉会した翌日に2人の身柄を拘束した。

 公判は起訴翌月の8月に始まり、早期判決を目指す「100日裁判」で審理されたが、克行元法相が審理途中で弁護人を解任。元法相の公判は案里議員と分離して進められることになった。案里議員は逮捕から4カ月ぶりに保釈され、公判は年内に結審する予定だが、元法相は身柄拘束が続き、判決がいつになるか、見通しが立っていない。

 ⑥藤井聡太さん最年少二冠

 将棋棋士の藤井聡太さんが史上最年少タイトル二冠達成の偉業を成し遂げた。史上最年少のプロ入りから無敗で29連勝という大記録を打ち立て、社会現象を巻き起こしたのは2017年6月。高校3年生となった今年7月16日、棋聖戦を制してついに八大タイトルの一つを獲得した。17歳11カ月での獲得は、屋敷伸之九段が保持していた18歳6カ月の最年少記録を塗り替えた。

 さらに棋聖となってわずか1カ月後の8月20日、今度は王位を獲得。18歳1カ月での二冠達成は、羽生善治九段の最年少記録21歳11カ月を大幅に更新した。日本中が再びブームに沸き立つ中、翌日の会見で藤井二冠は「まだまだ実力を高めなくてはいけない。王位戦で新たに見つかった課題もあるので、上を目指して行けたら」と語った。

 ⑦「鬼滅の刃」大ヒット

 吾峠呼世晴さんの漫画「鬼滅の刃」が大ヒットし、さまざまな方面で社会現象を巻き起こした。昨年のテレビアニメ放送をきっかけにブームに火が付き、コミックス全23巻の累計発行部数は1億2000万部を突破。10月から公開中のアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」も記録的なペースで観客を呼び込んでおり、興行収入は300億円を超えた。

 大正時代、家族を鬼に殺された少年の竈門炭治郎が、生き残るも鬼と化してしまった妹の禰豆子を人間に戻すため、仲間と力を合わせて鬼たちと戦うストーリーで、幅広い年代の読者を獲得。グッズ販売や企業コラボが多数展開されたほか、登場人物の名前や場面の風景と似たスポットにファンが押し寄せるなど、全国的に大きな経済効果をもたらした。

 ⑧コロナ対応で混乱

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍政権は首相官邸の主導で危機を乗り越えようとしたが、その対応は混乱を極めた。集団感染が発生したクルーズ船の感染防止策は、専門家が「悲惨な状況」と酷評。学校の全国一斉休校の呼び掛けは独断と批判を浴び、全戸配布した布製マスクも「アベノマスク」とやゆされた。

 政府と与党、自治体の足並みの乱れも深刻だった。4月に緊急事態宣言を発令した際は、東京都とのあつれきが表面化。全国民に一律10万円の現金給付では、対象絞り込みに公明党が猛反発し、閣議決定をやり直す失態を演じた。不協和音は菅政権になっても収まらず、需要喚起策「GoTo」キャンペーンの継続にこだわる姿勢に対して、政府分科会の専門家からも疑問の声が上がった。

 ⑨広がる「新しい日常」

 新型コロナウイルスの感染拡大は、国民生活に大きな影響を与えた。「ステイホーム」が求められた緊急事態宣言下には、トイレットペーパーやハンドソープが店舗から一時消え、食事のデリバリーや買い物の通販利用が拡大した。宣言解除後も、外出時のマスク着用や小まめな手洗い・消毒と換気、人混みの回避は常識化。感染リスクを高める密閉、密集、密接の「3密」、買い物時などに一定の距離を保つ「ソーシャルディスタンス」は、日常用語として定着した。

 テレワークやリモート会議の促進など、働き方も変わった。はんこに代わる電子署名やペーパーレスなどデジタル化が加速し、オンラインでの名刺交換も浸透しつつある。在宅勤務の拡大に伴い、都市部から地方への移住の動きも広がった。

 ⑩ゴーン被告逃亡、レバノンで会見

 日産自動車<7201>前会長カルロス・ゴーン被告が保釈中に中東レバノンに逃亡し、1月8日午後(日本時間同日夜)、首都ベイルートで記者会見。「公正な裁判を受けられる可能性がなく、正義を求めて離れた」などと、逃亡の正当性を主張した。楽器箱の中に隠れてプライベートジェットで不正出国したとみられ、東京地検特捜部は出入国管理法違反容疑でゴーン被告の逮捕状を取ったが、レバノン側が身柄引き渡しに応じる可能性は低い。

 ゴーン被告の報酬を隠したとされる金融商品取引法違反事件の捜査では、日本版「司法取引」が用いられ、特捜部と取引に合意した元秘書室長は元側近グレッグ・ケリー被告の公判に出廷。「金商法の趣旨に反すると思った」などと証言した。ケリー被告は無罪を主張している。

 【海外】

 ①新型コロナでパンデミック宣言

 中国湖北省武漢市で昨年12月から肺炎患者が相次ぎ、1月9日、新型コロナウイルスが原因と判明した。中国政府の初動が遅れる中、国内外に感染が拡大。世界保健機関(WHO)は1月30日に緊急事態、3月11日にパンデミック(世界的流行)を宣言した。患者の初確認から1年間で、世界の累計感染者は約6700万人、死者は約150万人に上った。

 各国でロックダウン(都市封鎖)が発動され、海外渡航も制限された。国際通貨基金(IMF)によると、今年の成長率はマイナス4.4%の見通しで、大恐慌以来と言われる経済危機に直面した。一方、大国間でワクチン開発競争も過熱。英国は世界に先駆けて米製薬大手ファイザー製のワクチンを承認し、12月8日から医療従事者らへの接種を開始した。

 ②米大統領選でバイデン氏勝利

 11月3日の米大統領選で、民主党のバイデン前副大統領(78)が共和党の現職トランプ大統領(74)に勝利した。バイデン氏は女性、黒人、アジア系として初の副大統領となるハリス上院議員をパートナーに、新型コロナウイルス対応を最優先課題にすると公約。郵便投票を含む投票率の増加で、史上最多の8000万票以上を獲得した。

 トランプ氏は昨年末、軍事支援と引き換えにバイデン氏関連の捜査をウクライナに要求した問題で弾劾訴追された。無罪となったものの、選挙戦ではコロナ禍で世界最多の死者・感染者を出した責任を追及され、経済も落ち込み、劣勢を挽回できなかった。トランプ氏や支持者らは選挙の敗北を認めておらず、「団結」を掲げるバイデン氏の前には根深い社会の分断が横たわっている。

 ③香港統制強める中国

 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は6月30日、香港の統制を強化する「香港国家安全維持法」の導入を決定、香港政府が即日施行した。同法は国家分裂や政権転覆など4類型を犯罪と定めたが、違法行為の範囲や内容が曖昧だとの指摘が続出。「一国二制度」に基づく高度な自治が形骸化し、言論や表現の自由が損なわれると懸念する声が国際社会から相次いだ。

 香港の裁判所は12月、昨年の大規模デモに絡み、違法集会を扇動した罪などで著名活動家の黄之鋒、周庭両氏に禁錮の実刑判決を下した。周氏はメディア界大物の黎智英氏とともに国安法違反容疑でも逮捕されている。中国・香港当局は著名活動家の動きを封じることで、萎縮効果や国際世論への働き掛け阻止を狙っているとされる。

 ④英国がEU離脱

 英国は1月31日、欧州連合(EU)を離脱した。2016年6月に行われた国民投票の結果、小差で離脱を選択。仏独が中心になって進める欧州統合を疑問視する風潮や、移民問題への反発が背景にあったとされる。実際の離脱をめぐっては世論が二分し、3回も延期されるなど迷走したが、19年総選挙で離脱派のジョンソン首相率いる保守党が圧勝して決着した。

 離脱と同時に、経済や社会の混乱を回避するため、20年末まで英国をEU加盟国並みの待遇で扱う「移行期間」がスタート。一方、3月に始まった英EU自由貿易協定(FTA)締結交渉は、漁業権や企業が公平な条件で競争する枠組みづくりで難航している。FTAなしに年明けを迎えれば、関税が復活し、物流など経済が大混乱に陥る恐れがある。

 ⑤全米で人種差別抗議デモ

 米中西部ミネソタ州で5月25日、黒人男性ジョージ・フロイドさん=当時(46)=が白人警官に首を圧迫されて死亡した。フロイドさんが「息ができない」と訴える様子を収めた動画がネット上で拡散すると、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」をスローガンに抗議デモが全米各地で相次ぎ、女子テニスの大坂なおみ選手ら著名人も抗議の意思を表明するなど、人種差別反対の動きが一気に広がった。

 トランプ大統領はデモ隊の一部が暴徒化したのを受け、「法と秩序」を訴えてデモに対して軍の動員も辞さない強硬な姿勢を示し、人種差別問題が11月の大統領選で争点の一つとなった。抗議運動は世界各地にも広がり、大規模なデモが起きたり、人種差別主義者とみなされた人物の像がデモ隊に引き倒されたりした。

 ⑥RCEP署名、アジアに巨大経済圏

 日本と中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など15カ国は11月15日、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名。世界経済・貿易総額の3割を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。日本にとっては中韓両国と初めて結ぶ経済連携協定(EPA)となる。工業製品を中心に、貿易自由化(関税撤廃)率は91%に上る。

 RCEPは、自動車などの工業製品や食品の関税撤廃、電子商取引、知的財産の保護ルールといった幅広い分野に及ぶ。一方、日本のコメや牛肉など重要農産物は関税撤廃の対象から除外された。安価な中国製品の流入を懸念したインドは2019年に交渉から離脱。協定発効から18カ月は新規加入を受け付けないが、インドはいつでも交渉に復帰できる仕組みを日本主導でまとめた。

 ⑦核兵器禁止条約発効へ

 核兵器禁止条約を批准した国・地域が10月24日、発効に必要な50に達し、同条約は2021年1月22日に発効する。核兵器の保有・使用を法的に禁じる初の国際条約となる。ただ、米英仏中ロといった核保有国や、日本など「核の傘」に依存する国は参加せず、実効性が疑問視されている。

 核軍縮の停滞を背景に非核保有国の主導で条約の制定交渉が始まり、17年7月に国連で122の国・地域が賛成して採択された。条約の採択に貢献した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」は同年ノーベル平和賞を受賞。非核保有国などは核廃絶への機運を高めたい考えだが、核保有国との溝は深まっている。唯一の被爆国である日本が今後、いかに両者を「橋渡し」していけるのかが注視されている。

 ⑧イスラエルとアラブ諸国が国交正常化

 イスラエルは9月15日、トランプ米政権の仲介で、ペルシャ湾岸のアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン両国と国交正常化する合意文書に署名した。アラブ諸国側との国交はエジプト、ヨルダンと合わせて計4カ国となった。ただ、パレスチナ問題をめぐり長年対立してきた両者の関係改善が進むことで、パレスチナ独立国家の樹立などといった中東和平の根幹が置き去りになるとの懸念が出ている。

 トランプ大統領は10月23日にイスラエルとスーダン、12月10日にはイスラエルとモロッコの関係正常化も発表し、外交成果を誇示した。今後は湾岸の盟主サウジアラビアとイスラエルの正常化が最大の焦点となるが、2021年1月に米国でバイデン次期政権に交代することで機運がそがれるとの見方もある。

 ⑨強まるGAFA規制論

 グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムの頭文字を取って「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる米国の巨大IT企業の規制強化を求める声が強まった。インターネット上で集めた利用者の膨大な個人情報を武器に、検索サービスやデジタル広告、アプリ配信などの分野で独占的な地位を築き、市場競争を阻害しているとの懸念が広がっているためだ。

 米議会の小委員会は10月、GAFAが市場での支配的な立場を乱用しているとして、事業分割を含む規制強化を求める報告書を公表。米司法省なども、競争相手を不当に排除しているとして、反トラスト法(独占禁止法)違反でグーグルやフェイスブックを提訴した。欧州や日本なども規制に動き始めており、世界的な機運が高まりつつある。

 ⑩民間初の有人宇宙船、ISSに

 米宇宙企業スペースXが開発した有人宇宙船「クルードラゴン」の試験機が5月30日、米国人飛行士2人を乗せて南部フロリダ州から打ち上げられ、翌31日、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキング、民間宇宙船による初の本格的な有人宇宙飛行に成功した。11月には日本人宇宙飛行士の野口聡一さんら4人を乗せた運用初号機が打ち上げられ、ISSに到達した。

 2011年の米スペースシャトル退役以降、ISSへの人員輸送はロシアの宇宙船「ソユーズ」が担い、スペースXは米航空宇宙局(NASA)との契約に基づき、有人宇宙船の開発を進めてきた。クルードラゴンの打ち上げ成功は、民間企業が人工衛星や物資輸送だけでなく有人宇宙飛行にも参入する「新時代の幕開け」となった。
(了)

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