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〔FOMC見どころ〕追加緩和が焦点=資産購入策で指針導入へ

2020年12月14日 09時47分

AFP時事
AFP時事

 【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)は15日から2日間、金融政策を議論する連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。新型コロナウイルスの感染が再拡大し、景気回復の足踏み感が強まる中、追加金融緩和を決めるかが焦点。量的緩和策に関する新指針を導入する見通し。政策金利の推移シナリオは、事実上のゼロ金利政策が2023年末まで維持されることが示されそうだ。

 ◇回復が鈍化

 コロナ流行が深刻化した3、4月以降、景気はFRBの想定を上回るペースで改善してきた。だが秋以降に感染が再拡大し、12月2日公表の全米12地区の連銀景況報告(ベージュブック)は「4地区の成長はゼロかほとんどなく、5地区はコロナ危機前を下回り続けた」と判断した。

 11月の失業率(12月4日発表)は6.7%と前月から0.2ポイントの改善にとどまり、非農業部門就業者数の伸びも大きく鈍化。パウエル議長は1日の議会証言で「最近数カ月の景気回復ペースは緩慢になった」との見解を示した。

 コロナ経済対策による現金給付や失業給付上乗せ、中小企業支援措置などが相次いで失効し、FRB高官は口をそろえて「追加経済対策が必要だ」と訴えた。警戒していた感染再拡大が現実化する一方で、議会与野党の対立で成立のめどが立たず、パウエル議長は「今後数カ月は試練に直面する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

 FRBがコロナを受けて今春に設置した中小企業向けの「メインストリート貸し出し」など五つの緊急融資・資金供給制度は、ムニューシン財務長官が12月末の打ち切りを通告。危機時のセーフティーネットが一部なくなった格好だ。

 ◇資産購入策

 FRBは「景気を下支えし、この困難な状況からの回復が可能な限りしっかりとしたものになるため、あらゆる措置を講じる」(パウエル議長)と表明している。コロナワクチンの普及に時間がかかる一方、不景気が長期化すれば失業が高止まりするリスクが膨らむ。「必要な状況になれば適切な政策手段を展開できる」(ウィリアムズNY連銀総裁)と、追加緩和も排除しない構えだ。

 FRBは3月に政策金利を事実上のゼロとなる年0~0.25%に下げているため、利下げ余地はほとんどない。このため追加緩和は国債などの資産を市場から買い入れ、資金を大量に供給する量的緩和策の強化が柱になるとみられている。

 現行の量的緩和策は、米国債を月額800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドルをそれぞれ購入するもの。追加策として①購入規模拡大②購入期間の長期化③買い入れる国債を長期債にシフトさせることによる長期金利押し下げ―などが検討されているようだ。

 ただクリーブランド連銀のメスター総裁は「金融政策は良い位置にある。なぜなら極めて緩和的な状況にあるからだ」と慎重だ。長期金利は歴史的な低さとなっており、ダラス連銀のカプラン総裁も「資産買い入れ規模の拡大、長期国債の購入が今後3~6カ月の懸案に対処するものなのか分からない」と否定的。ボストン連銀のローゼングレン総裁は、長期の追加緩和に伴う金融市場での不均衡増大リスクを懸念している。

 景気浮揚の「即効薬」としては金融政策よりも財政支援、税制策に軍配が上がる。コロナ経済対策をめぐる与野党協議は続いており、市場では「資産買い入れ拡大、買い入れ対象変更の用意はできていない」(バンク・オブ・アメリカのミシェル・メイヤー氏)と、今会合では「追加策カード」を温存するとの見方が多い。

 ◇ガイダンス強化

 11月4、5両日のFOMC議事要旨(25日公表)によると、「大半の参加者」は資産購入策に関する「定性的かつ(経済指標の)結果に基づいた指針」を支持。「多くの参加者がかなり近いうちに指針の強化を打ち出すべきだ」と判断した。出口戦略についても「フェデラルファンド(FF)金利を上げ始めるいくらか前に買い入れ減額や停止」を明らかにすべきだとの意見でおおむね一致している。

 FRBは8月、政策金利のフォワードガイダンスを強化し、雇用の最大化、およびインフレ2%の上振れ容認を明示した。量的緩和策については「今後数カ月間は少なくとも現行ペースで」国債とMBSを買い入れると説明しているが、エコノミストらは政策金利と同じようなフォワードガイダンスが今会合で決まると予想。「インフレ率に関連付けられたものになる公算が大きい」(ジェフリーズのチーフエコノミスト、アニータ・マーコウスカ氏)との観測もある。

 指針強化に伴い、FOMC後の声明も変更が加えられる可能性がある。バンク・オブ・アメリカのメイヤー氏は「インフレ率が長期的に2%で推移する十分な進展があるまで」買い入れを続けるといった表現になると例示。FRBは金融緩和を保つ姿勢をにじませるとみている。

 ◇政策金利・経済見通し

 FRBは16日のFOMC後、声明と同時に会合参加者17人による政策金利と経済の見通しを公表する。3カ月ごとに改定しており、今回は参加者が不確実性とリスクをどの程度考慮しているのかを指数(DI)として図式化(折れ線グラフ)した資料が加わる。

 パウエル議長は、コロナ危機に伴う失業者が今なお約1000万人に上り、「景気回復は長い道のりだ」と明言している。金融緩和を続けて持ち直しを後押しするため、金利見通しの中央値は引き続き23年末までゼロ金利となる可能性が高い。前回の利上げ予想は20年(0人)、21年(0人)、22年(1人)、23年(4人)。

 景気回復が想定を超えて進んだため、20年の実質GDP(国内総生産)の前年比(10~12月期比較)伸び率は、9月時点のマイナス3.7%から上方修正されそうだ。半面、21年は「コロナ再拡大で経済モメンタムが著しく鈍化した」(オックスフォード・エコノミクス)として4.0%からの下方修正を予想する向きが多い。

 米食品医薬品局(FDA)は12月11日、米製薬大手ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンの緊急使用許可を承認。米モデルナのワクチンが続く見込みで、改定見通しにはワクチン普及を反映する公算が大きい。パウエル議長は1日の議長証言で、ワクチン普及は「中期的には(景気の)上振れ要因」と語っている。

 ただコロナ経済対策の遅れによる経済へのマイナス効果と、ワクチン普及にるプラス効果は見通しづらく、追加金融緩和は「21年の春まで待つこともできる」(シカゴ連銀のエバンズ総裁)との意見もある。(了)

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〔FOMC見どころ〕について
ワシントン駐在の経済担当記者による連邦公開市場委員会(FOMC)の展望記事。米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を協議するFOMCの開催直前に、注目されるポイントや政策の見通しを詳しく解説します。

 

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