〔証券情報〕IT頼みの復調=構造変化を先取り?、いびつな上昇に警戒も

2020年05月15日 12時00分

大幅続伸した日経平均株価を示す電光ボード=8日、東京都中央区
大幅続伸した日経平均株価を示す電光ボード=8日、東京都中央区

 世界的に株式相場が復調している。新型コロナウイルスの流行がいったん峠を越え、経済活動を徐々に再開する国が増えたことで、株式などへ投資資金が戻り始めた。ただ、上昇の中身を見ると、日米ともに情報技術関連など一部の業種に買いが集中する。リモートワークの拡大など生活様式の変化が追い風になるとの思惑がこれらの業種に買いを向かわせているが、限られた業種に支えられた株高については「いびつで、不安を感じさせる」(中堅証券)との指摘もある。

 日経平均株価は3月の安値から5月の大型連休明けに付けた直近高値まで約4000円上昇するなど、日米ともにコロナショックで大きく下げた株価は感染収束を先取りする形で値を戻してきた。この上昇過程で強さが目立った業種が、「その他製品」で、3月の安値から3割近く値上がりしている。その他製品をけん引したのは任天堂<7974>株で、3月半ばから4月下旬にかけて1万5000円超上昇。外出が減り、家庭用ゲームの需要が伸びたことが株価の追い風になった。

 さらに、主力業種の一角である「電気機器」も堅調に推移した。コロナの影響で企業の生産や雇用、消費が大きく落ち込む中、景気敏感株に位置付けられる電気機器を支えたのが半導体・電子機器関連銘柄だ。「リモートワークの拡大も手伝い、5G整備促進などを見越した動きが出た」(銀行系証券)とみられる。米半導体工業会(SIA)が毎月公表している世界の半導体売上高は3月も前年同月比0.9%増と緩やかながら増加傾向を維持しており、電子部品の需要は「基調としては強い」(前出の銀行系証券)という。

 コロナショックによる急落局面で強かったのが「情報・通信業」だ。東証株価指数(TOPIX)は今年の高値(1月20日)から安値(3月16日)までに30%近く下落したが、同じ期間の情報通信業の下落率は20.7%で、「電気・ガス業」(18.9%下落)の次に下落率が小さい。

 1月20日から5月13日までを見ても、「電気・ガス業」(2.7%下落)、「医薬品」(5.2%下落)、情報・通信業(5.5%下落)の下げが相対的に緩やかだ。一方、1月から5月までの成績が悪いのは、空運業(40.6%下落)、鉄鋼(40.4%下落)、鉱業(37.6%下落)で、移動制限で需要が消えたエアラインと、景気悪化の影響を受けやすい資源関連業種が売りを浴びた。

 情報通信や半導体・電子部品関連の強さは日本だけではない。米国市場でも3月下旬以降、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)や情報技術銘柄の影響が大きいナスダック総合指数の上昇率がS&P500を上回る日が多くなっている。「コロナ以前からFANG(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルを傘下に持つアルファベットの4銘柄)など競争力と成長性がある銘柄は買いを集めていたが、疫病による生活の変化でその傾向がさらに強まった」(投資助言会社)とされる。

 ただ、「限られた銘柄に支えられた株高は、あまり良い傾向ではない」(前出の中堅証券)との指摘もある。別の市場関係者は「言葉は悪いが、電灯の光に虫が吸い寄せられるように、今、強い銘柄を深く考えずに買っている印象もある」(大手証券関係者)と話す。これまで日本株が上昇する際にけん引役となってきた海外投資家は4月、現物を8000億円以上売り越している。3月までの急落局面に比べると東証1部の売買代金は少なく、まだ買いに及び腰の投資家が多いようだ。(了)