ステート・ストリート、リテール事業を本格展開=インデックスファンドを個人投資家に直接プロモーション
2025年05月13日 07時00分
米国の大手運用会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(ステート・ストリート)はメディア説明会を開き、日本法人の越前谷道平社長が個人投資家向けのリテール事業を本格展開する方針を明らかにした。
同社が提供する、業界最低水準の低コスト・インデックスファンド「SSGAインデックス・シリーズ・ライト」は今年、大手オンライン証券が相次いで取り扱いを始めた。稲寛彰常務執行役員は「デジタルチャンネルを活用し、個人投資家に直接プロモーションしていく」と述べた。主な発言は、以下の通り。
米国のステート・ストリートは1978年の設立。93年には米国初のETF「SPDR®S&P500®ETF」を上場、その資産総額は約5729.88億ドル(25年5月6日時点)と世界最大規模に成長している。また、2004年には米国初の現物の金を裏付けとするETF「SPDR®ゴールド・シェア」を設定するなど、ETFのパイオニアだ。
◆インデックス運用に強み、リテールを強化
-事業展開の方向性は

越前谷社長 ステート・ストリートは、社のパーパスに「資産形成を通じて人生を豊かにするお手伝いをすること」を掲げている。また、ミッションに「革新的で、資産形成に資する良質なソリューションを提供すること」を挙げている。
当社の特徴は、三つある。一つはインデックスについての対応能力・柔軟性が非常に高いことだ。二つ目は、運用商品のパフォーマンスが精密であること。三つ目は、顧客サービスが手厚いことだ。
当社グループは現在、グローバルで成長路線を推進している。機関資家向けのサービス提供に定評があるが、さらに個人投資家を対象としたリテール・ウェルス向けのサービスの拡大に取り組み、そのためのソリューションの展開を進めている。
◆低コスト・インデックスファンドやETFを拡充
-具体的なソリューションの展開は

稲常務 個人投資家向けの商品の拡充を続けている。公募投資については、新NISAのスタートに合わせて、2024年1月に低コストのインデックスファンドを「SSGAインデックス・シリーズ・ライト」として新規設定した。7本のラインアップで、米国株式の代表的な指数である「S&P500」を初めとする国内外の株式や債券の主要なインデックスに投資できる。これにより、ステート・ストリートが日本で提供する公募投信は30本になった。
ETFについても、11銘柄の米国上場ETFを金融庁に届け出た。取り扱いを決めた証券会社の外国証券口座を通じて、米国株式と同じように売買ができる。東証に上場している「SPDR® S&P500®ETF(証券コード1557)」「SPDR® ゴールド・シェア(同1326)」「ABF汎アジア債券インデックス・ファンド(同1349)」の3本を含め、日本の投資家が売買できる当社のETFは62銘柄になった。
ステート・ストリートの特徴は、インデックスというソリューションを全ての投資家に提供した「民主化のイノベーター」だ。当社が32年前に米国で初めて上場した「SPDR®S&P500®ETF」が起点になって、ETFの市場は世界中に拡大してきた。さらに、21年前には金を裏付けとする「SPDR®ゴールド・シェア」を米国で初めて設定した。世界中で活用されている。
今後もこの2銘柄を主力としながら、個人投資家が望むソリューションに合わせた商品を展開していきたい。
◆資産形成は人生を豊かにする選択肢

-2年目を迎えた新NISAの評価は
越前谷社長 一般的に資産運用というと、定年退職する60歳や65歳を頂上として目指している人が多いと思う。私は、資産形成をすることで人生の選択肢が広がると思っているので、定年後も資産形成をしながら、例えば健康寿命の80歳くらいまで投資を通じて人生の選択肢を広げ、豊かにしていけるのではないか。
NISAは、英国の貯蓄制度(ISA)を元にデザインされた。日本においては、資産形成に対するマインドセットの変化が期待される。今後、20年、30年をかけて、日本に資産形成という文化が根付いていくのだろうと想像している。新NISAは、そうした初動としては、非常に良い形で資産形成が浸透し始めたと感じている。
◆デジタルを活用、個人投資家に直接プロモーション
-低コストファンドの展開方法は
稲常務 日本においては、新NISAとともに、インデックスファンドの認知度が一般消費財のように広がっている。
そうした中で、当社の低コストインデックスファンド「SSGAインデックス・シリーズ・ライト」は、業界最低水準のコストを実現していることやクオリティーの高さが評価され、大手オンライン証券会社での取り扱いが始まった。
低コストインデックスファンドの展開に当たっては、当社から直接、個人投資家にアプローチする「BtoC」のプロモーションの準備を進めている。当社は、資産運用のコアとなる商品を取りそろえているので、SNSを使い、Webサイトを充実するなど、デジタルのチャンネルを活用してアピールしていく。
◆透明性や流動性の高いETFが有効なツールに
-マーケットの変動が高まっているが
越前谷社長 ステート・ストリートはたくさんのETFを提供しており、投資家のさまざまニーズに応えることができる。
例えば、機関投資家がポートフォリオでオーバーウエートしてきた米国資産の修正を行う場合、そのツールとして流動性や透明性が高く、低コストで取引できるETFが役立つ。また、ドルの信認低下が懸念される中で、金(ゴールド)のETFがヘッジ機会を提供している。さらに、金利においても、イールドカーブのスティープ化(長短金利差の拡大)が進む場合でも、債券ETFを活用することで、対応することが可能だ。
機関投資家は、ETFを活用することで、さまざまマーケット環境に対応して、ポートフォリオの調整ができる。
◆インデックスファンドは、お客さまのポートフォリオ管理にも有効
-リテールマーケットの見通しは。
越前谷氏 当社がメインで提供するインデックスファンドやETFは、透明性や流動性が高く、さまざまな資産にアクセスできるツールだ。デジタルプラットフォームとの相性がとても良い。早い、安い、簡単、便利などの特徴がある。このため、オンラインを経由したソリューションの提供が、当社のメインターゲットになっている。
海外の動向を見ると、対面販売の世界では、有価証券の売買によって発生するコミッション(手数料)ではなく、証券会社や金融機関がお客さまの資産を預かって、その資産を管理することでフィー(報酬)をいただくビジネスモデルへの転換が進んでいる。
このビジネスモデルでは、お客さまの資産のポートフォリオ管理のアドバイスが必要になる。当社は、ポートフォリオ運用のエンジンとなるインデックスファンドや、ポートフォリオ管理のノウハウを提供することができるだろう。