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世界の株式市場に「AIへの楽観見通し」が広がる=日本固有のドライバーの実現が重要に-UBS証券の守屋氏

2025年11月20日 08時30分

守屋のぞみ氏

 UBS証券は、来年の経済・市場見通しについてメディア勉強会を開催した。調査本部 株式ストラテジストの守屋のぞみ氏は、日本株式の上昇要因について「世界の株式市場で『AI(人工知能)への楽観見通し』が広がっており、米国経済と親和性の高い日本市場にも海外投資家の資金が流入している」と分析した。

 その上で、政府の成長戦略や企業改革を推進することで、日本固有のドライバーを実現することが重要になると強調した。主なポイントは以下の通り。

◆FRBの「不況なき利下げ」が始まる

-世界の株式市場の状況は

守屋氏 米国の関税政策によるショックが緩和されて市場心理が改善する中、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待が広がっている。さらに、AI主導の生産性向上により成長期待が上昇するという「AIへの楽観見通し」が広がっており、マーケットは「リスク・オン」のモードに入っている。

 UBSグローバル株式戦略チームは、2026年のバブル発生確率を35%に引き上げた。これまでは25%としていた。FRBの「不況なき利下げ」が始まったことと、AI関連の期待が高まっていることがその理由だ。

◆海外投資家は「米国と親和性の高い市場」に注目

―日本株式の現状と見通しは

守屋氏 日本株式は、企業による自社株取得の着実な増加と、海外投資家からの資金流入をドライバーに上昇してきた。

 海外投資家の間では、「米国経済と親和性の高いマーケットに資金を配分しよう」という投資家が増えており、米国株式に対する楽観的な見通しが広がる中で、今後も海外からの資金流入が日本の株価上昇のドライバーになる可能性が十分にある。

 日本株市場の資金流入動向を見ると、海外投資家の買入額はアベノミクス時のピークの5~6割程度にとどまっている。依然として海外投資家の投資余力は大きい。高市政権の成長戦略や日本の企業改革によって、日本固有のドライバーが進展するかどうか-、が非常に重要になっている。

 UBS証券では、2025年末の日経平均株価を5万円、2026年末を5万7000円と予想している。

◆「AI・半導体」「エネルギー」「防衛産業」

-高市政権の注目政策は

守屋氏 高市早苗首相は、強い経済の実現を目指す「日本成長戦略会議」を開き、17分野の重要施策案を公表した。海外投資家は、政治の強いリーダーシップや、日本企業の成長性に関心を持っており、楽しみな政策だ。官民連携で進めることで、企業による成長投資を後押ししていく可能性がある。

 特に注目している分野は、「AI・半導体」「エネルギー」「防衛産業」だ。この三つは、グローバルにも重要なテーマになっている。

◆企業改革が「事業ポートフォリオ管理」「成長投資」に進展

-日本の企業改革の状況は

守屋氏 企業改革は三つのステップで進んで行く。「株主還元」「事業ポートフォリオ管理」「成長投資」だ。増配や自社株買いなどの「株主還元」は着実に進んできた。

 現在は「事業ポートフォリオ管理」に注目している。日本企業のバランスシートには、例えば政策保有株式、遊休不動産など、まだまだ無駄に見えるものが残っている。低採算の事業を見直すなどして「稼ぐ力」を高めることが求められている。

 その上で三つ目のステップとして「成長投資」が期待される。資本構成と事業構成を適正化し、コア事業にフォーカスした上での成長投資であれば、高いリターンが期待される。政府の経済政策とかみ合って推進されることで、日本企業の成長力が向上し、日本株式のアップサイドが広がる可能性は、十分にあると見ている。

 

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