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長期投資の視点で、海外情報をいち早く日本語で提供=新しい金融情報サイトを開設-モーニングスター・ジャパンのチャン・ユーツン社長らに聞く

2025年12月25日 08時00分

(左から、元利氏、島田氏、チャン・ユーツン社長)(左から、元利氏、島田氏、チャン・ユーツン社長)

 独立系大手投資調査会社のモーニングスターは、日本の個人投資家向けに、金融情報ポータルサイトを開設した。無料で、日本やグローバルの投資情報を閲覧したり、ファンドや国内外の株式を検索してさまざまなデータをチェックすることができる。さらに、自分に合わせて株式やファンドのウォッチリストを作成することも可能だ。

 モーニングスター・ジャパンのチャン・ユーツン社長、島田知保チーフ・エディター、元利大輔マネジャー・リサーチ部長に、新サイトの狙いやポイントを聞いた。

◆投資家の成功をサポート

-情報サイトの特徴は

チャン・ユーツン社長 モーニングスターは1984年に米国シカゴで設立された。「Empowering Investor Success(投資家の成功をサポート)」をミッションに掲げて、独立・中立の立場で金融情報を分析・提供し、世界各国で個人投資家向けの情報サイトを運営してきた。こうしたサイトを日本で運営することは、当社にとって長年の悲願だった。

 この情報サイトの特徴の一つは「長期投資」を重視していることだ。長期投資の視点に基づいて、ニュースに関する洞察やインサイト、中長期のトレンド、リサーチなどを提供している。

 「モーニングスター、市場ニュース&投資情報」(https://global.morningstar.com/ja)のサイトの上部に表示しているように、主に「マーケット」「株式」「ファンド」「ETF」の四つの区分でニュースを提供していく。これに加えて「リタイアメント」や「ESG(環境・社会・ガバナンス)」、「サステナブルファイナンス」などの話題も取り上げていく方針だ。

 もう一つの特徴は、海外の情報を日本語にして、いち早く日本の個人投資家に提供することを目指していることだ。日本においても、米国株式や海外ETFに対する関心が高まっている。こうした個人投資家のニーズに応えていきたい。

 このサイトは、モーニングスターが全世界に提供する情報サイトの一部でもあるので、日本のサイトを経由して海外のモーニングスターのサイトに容易にアクセスして、英語でより深掘りした情報を閲覧することもできる。

◆即時的にグローバルとコンテンツを共有

-サイト強みや編集方針は

島田氏 世界各国のモーニングスターが同じプラットフォームの上で編集作業を行っているため、即時的にグローバルにコンテンツを共有できることが、強みだ。米国だけでなく、香港や英国の記事を読み込んで、日本語に翻訳して編集し、すぐに公開することもできる。

 日本では、多くの個人投資家が米国株や世界株のファンドで資産運用している。「海外で何が起きているか」「海外投資家の動向がどうなっているか」について知ることはとても重要だ。

 編集方針については、短期的な価格変動には重きを置いておらず、その背景にあるものや、長期の視点で見たときの過去の事例との比較などを重視していきたい。モーニングスターは、株式の評価にしても、短期の株価変動ではなく、中長期で企業価値が成長するか、といった視点で分析している。ファンドの評価においても、中長期投資の考え方を貫いている。

 具体的にいくつか記事を紹介すると、米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が引退することを取り上げたモーニングスターの記事は、彼が投資で成功したことよりも、投資以上に大切にしていた姿勢を取り上げている。

 また「2026年の投資に対する心構え」をテーマにした記事では、中長期の視点に立ち、投資の基本に立ち返ることを呼びかけている。モーニングスターは、事あるごとに繰り返し、長期投資の考え方をアドバイスしている。

 海外のリサーチ担当者などが登場する動画は、日本語のスクリプトを表示している。例えば、米国モーニングスターで人気のコラムニスト、クリスティン・ベンツ氏のパーソナルファイナンスの動画を英語で見ながら、日本語訳を読める。

◆日本で一般的になっていない考え方を紹介

-日本の投資家向けに工夫していることは

(出所)モーニングスター・ジャパン(出所)モーニングスター・ジャパン

島田氏 日本の投資家の中で、まだ一般的になっていない考え方を紹介したいと考えている。例えば、米国や世界株のインデックスファンドを保有している投資家は、ポートフォリオの上位を占める、米国のAI関連のビッグ・テック株式を多く保有している。さらにAIファンドを購入しようとする投資家に、注意喚起する記事を掲載している。

 海外では、資産形成にアクティブETFやプライベート資産が活用されており、注意点もある。そうしたことも紹介しつつ、モーニングスター・ジャパン独自の日本の運用会社やファンドに関するリサーチについても、分かりやすい解説記事を掲載していく。

◆ファンドのレーティングを掲載、各国株式を同じ様式で横比較

-ファンドや株式データの活用方法は

(出所)モーニングスター・ジャパン(出所)モーニングスター・ジャパン

元利氏 登録して検索ツールを使うことで、日本株や海外株、ファンド、ETFについて、さまざまなデータを無料で入手できる。

 例えば、株式のレポートでは、個別株式の概要やチャート、主要指標や財務諸表を閲覧できる。国内外の株式を同じ様式で比較できる点が、このサイトならではの特徴だ。

 ファンドについても、過去の運用実績を★の数で評価した「スターレーティング」と、包括的な将来見通しを勘案した「モーニングスター・メダリスト・レーティング」の両方を掲載している。さらに、チャートやリスク、ポートフォリオについて、図やグラブを交えて、視覚的に分かりやすく表示している。

 個人ごとにパーソナライズした「ウォッチリスト」では、国内外の株式やETF、ファンドを一緒にリストアップできる。いろいろな資産を1カ所にまとめて見ることができる点が特徴だ。

 キーワードの空欄に、ファンド名の一部を入れるとファンドを検索できる。例えば「Slim」と入れると、「eMAXIS Slim」シリーズの一覧を作れる。

 今後は、当社のアナリストがカバーしているファンドや運用会社を紹介するコメントなどを加えることで、よりシンプルで分かりやすい内容にしていきたいと考えている。

 海外では、ファンドマネージャーの情報も提供している。「誰がいつからこのファンドを運用しているのか」、「その人が運用するほかのファンドは何か」などだ。運用会社に開示を求め、日本でもそうした情報を提供していきたい。

 日本の個人投資家にとって、グローバルな視点を持つことは、とても重要なことだ。人と違う見方・分析ができることで、長期投資を充実したものになるだろう。

 

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