SBIレオスひふみのKiffy、寄付プラットフォーム「solio」を譲り受け=藤野会長兼社長らが記者会見
2025年04月23日 08時00分

SBIレオスひふみ(東京、藤野英人会長兼社長)の子会社で、寄付事業を行うKiffy(キッフィー、白水美樹社長)は4月17日、ジャンルを選んでスマートフォンから寄付ができる「solio(ソリオ)」を、SOLIO(大阪市、今井紀明代表)から譲り受けた。藤野会長兼社長ら3人が記者会見し発表した。
「solio」は、2020年にスタートした寄付のプラットフォームだ。「まちづくり」「環境」「教育」など12個の社会課題から支援したいジャンルを選び、好きな金額を毎月寄付できる。寄付したお金は、それぞれのテーマに沿った活動を行うNPOやNGOに送られ、支援を必要とする人や団体に届けられる。自分が選んだジャンルとその割合は、スマホ上に分かりやすく円グラフで表示され、毎月の寄付額や累計額も確認できる。
記者会見での3人の主な発言は以下の通り。
◆全ての人が、資本主義の恩恵を受けられる世界-藤野氏

藤野氏 SBIレオスひふみは、4社の子会社を擁している。運用会社のレオス・キャピタルワークス、ベンチャーキャピタルのレオス・キャピタルパートナーズ、金融教育のフィナップに続いて、今年3月に設立したのが、寄付プラットフォームのKiffyだ。
私たちは、ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)を実現したいと考えている。一般的に金融と言うと「お金持ちがお金を回しながら大きくしていく」というイメージがあるが、私たちは「お金が循環することで、若い人からシニアの方まで豊かな社会を築くこと」や「金融の格差によって、世の中の格差をつくらないこと」を考えている。
こうした中で私たちが課題として考えたことは、「積立投資ができる人は生活に一定の余裕がある人であり、恵まれた人ではないか」ということだ。世の中には、こうした投資ができない人もたくさんいる。こうした人は、資本市場の恩恵を受けることができない。さまざまなボタンの掛け違いのようなことで、苦労して、苦しい状態の人がいらっしゃる。
私たちは「資本主義の枠外にいる人たちも、資本主義の恩恵を受けられる世界を作ることはできないか」という課題をずっと考えてきた。私たちがこれからやりたい世界は、月々数万円の積み立て投資をする人に「ごくわずかでいいので、毎月「つみたて寄付」のような形で、寄付をしていただけませんか」ということを呼びかけていきたい。
一人一人の小さな寄付が、集まることで大きな金額になる。これらの寄付を、さまざまな支援を行うNPOやNGOを通じて、資本主義の枠外にいる人に届ける。こうした人たちを資本主義の世界に旅立っていけるように支援することができれば、結果的に世の中が良くなるし、資本主義の市場も広がっていく。
寄付によって社会が発展し、社会が発展することで資本主義のベースが拡大し、ベースが拡大することで社会も豊かになるし、私たちの暮らしも豊かになる。そうした社会を実現することを本気で考えている。
SOLIOの今井代表は古くからの友人で、私自身、さまざまな形で支援してきた。寄付プラットフォーム「solio」にはスタートした時から、ずっと注目してきた。このたび、今井さんの想いを引き継ぐ形で「solio」を譲り受けることになった。今井さんには、今後も「solio」についてアドバイスをもらったり、力を貸していただいたりして、一緒に成長して行くことを考えている。
◆寄付を使って、社会課題解決の新しいモデルを生み出す-今井氏

今井氏 寄付をするには、寄付したいジャンルのNPO・NGOを探して、そのサイトに行って活動内容を確認し、寄付するNPO・NGOを自分自身で選択することが必要だ。私自身、寄付型のNGOを運営しているのだが、寄付者の方から「NPO・NGOを選択するのに時間が掛かり、判断の負担が重い」、「寄付をしたいけど、寄付先が分からない」といった声をいただいていた。
それであれば「ジャンルを選んで手軽に寄付ができるプラットフォームを作ればいいのではないか」と考え、「solio」は開発した。現在は、12ジャンルから選択することができる。また、30弱のNPO・NGOが登録している。
月額500円から寄付ができる。ジャンルを複数選び、割合を指定することで、ポートフォリオを組める点が特徴だ。割合に応じて、それぞれのジャンルへの寄付額を、自動で振り分けてくれる。また、マイページから、ジャンルごとの割合を円グラフでみることができる。
私は、認定NPO法人D×P(ディーピー)の理事長として、子どもたちの支援活動を行っている。寄付を通じた活動によって、国や行政や会社ができない、まだマーケットになっていない分野の社会的課題を解決することができると感じている。
繁華街に集まる子どもたちに、寄付のお金を使ってスペースを確保し、年間4000人ほど支援した。それがきっかけになって、地方自治体が子どもたちの住居支援をスタートし、国への政策提言も検討している。寄付によって事業モデルができ、NPOが地方自治体や国に提言することで、状況を改善することができた。
寄付にはまだまだ広がる余地がある。「solio」は、寄付の裾野を広げることに貢献できるサービスだが、私自身、NPOの活動があるため、十分に力を注げなかった。Kiffyに「solio」を引き継いでいただき、一緒に広げていきたい。
寄付には社会を変えていく力がある。NPOが寄付を使って、今までなかった事業モデルを生み出していく環境をつくっていければと思う。
◆「寄付をもっと身近に」、人と人が支え合う『共助』の未来-白水氏

白水氏 SBIレオスひふみは、ファイナンシャル・インクルージョンを掲げて、主にレオス・キャピタルワークスで、投資信託という形で、国民の資産形成を応援してきた。
私は以前、レオス・キャピタルワークスでマーケティングを担当していたので、日本全国津々浦々でお客さまとお話する中で、「投資を始めたいが、なかなか投資に回すお金がない」という声を聞いた。また、NPOで日本文化の継承に励んでいたり、高齢者や子どもたちの支援する方々にお会いした。そうした中で「いつか寄付のポータルサイトを立ち上げて、こうした団体にお金を循環させることはできないか」と考えていた。
社名のKiffyだが、寄付(kifu)に「fy(~化する)」を付けることで、「寄付をもっと身近に感じてほしい」「寄付を『自分ごと化』していただきたい」という私たちの想いを込めた。ロゴマークは、「うつわ(器)」をモチーフにしており、一人ひとりの小さな「つみたて寄付」が、社会という器を少しずつ満たしていくイメージを投影した。
当社のミッションとして、「寄付をもっと身近に」を掲げている。寄付に対する不便・不信・不安をなくし、「寄付がもっと身近で自然な選択肢となる社会」、「人と人が支え合う『共助』の文化が息づく未来」を目指したい。
日本の2020年の個人寄付総額は1.2兆円と米国の30分の1だった。寄付経験者の割合は、全世代平均で40%ほどだ。1人当たりの年間寄付額の平均は3.7万円(中央値は1万円)。ふるさと納税や災害寄付、寄付元が主体となったクラウドファンディングなど多様化している。

日本において寄付が浸透しない理由については、寄付に対する不安・不信、税制上の控除の問題などがあるだろう。さらに、手元にお金を置いておきたいという漠然とした将来に対する不安も大きいように思う。この部分は、投資を広げる際にも障害になった。
ただ、日本人は「利他」の行動や気持ちを持っている。内閣府の「社会意識に対する世論調査(令和5年11月)」によると、約6割の人が「社会の役に立ちたい」と思っている。それを行動に移せていないのは、何かハードルがあるためだと考えている。障害を一つ一つ取り除き、「solio」をさらに発展させていきたい。