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資産運用、次の主役は「地域金融機関」=「資産運用アドバイス」が最後のフロンティア-日本資産運用基盤の大原社長

2025年04月24日 07時00分

大原啓一社長

 日本資産運用基盤(東京、大原啓一社長)は「『金利のある世界』の資産運用ビジネス~地域金融機関が主役になる新たなフェーズへ」をテーマに記者勉強会を開催した。

 大原社長は「ブローカレッジやポートフォリオ運用の利潤が消失・減少する中で、最後のフロンティアとして『資産運用アドバイス』が注目を集めている」と指摘。「その担い手として、地域金融機関の重要性が増している」と話した。主なポイントは以下の通り。

◆ゴールベースアプローチに基づく資産計画アドバイス

-証券・資産運用領域の現状は

大原氏 大手ネット証券が国内株取引を無料化し、新NISAでは低コストのインデックスファンドが人気になっている。このため、証券等の売買執行による「ブローカレッジ業務」の利潤はほぼ消失し、株式や債券等に投資する「ポートフォリオ運用業務」の利潤は減少傾向にある。

 こうした中で、最後のフロンティアとして注目を集めているのが、「資産運用アドバイス業務」だ。利潤がしっかりと存在し、お客さまに提供する付加価値が広く存在している。

 ここで言う「資産運用アドバイス」とは、「ゴールベースアプローチに基づく資産計画アドバイス」のことだ。「ポートフォリオ運用アドバイス」と混同している人もいて、「資産運用アドバイス」への移行がなかなか進んでいないところもある。

◆「将来に備える」を意識する

-ゴールベースアプローチとは

大原氏 ゴールベースアプローチとは「何かに使うため」という目的のことだ。全ての金融機能は本来的にゴールベースアプローチを前提にしている。

こうした視点で考えると、資産運用は「将来に備えて効率よく運用すること」だ。一方、投資とは「儲かりそうな機会に資金を投じて儲けを得ること」だ。将来に備えるための「資産運用」と、生活を豊かにするための「投資」は、まったく違うことを意識することが大切だ。

例えば、金融リテラシーを高めるに当たっても「将来に備える」ということを意識するなら、株式や投信の知識を増やすことより、「老後の生活に必要な資金はいくらか」といった、将来に備えるために必要最低限の知識を持ち、それを準備するために必要なアクションを知ることが重要になる。

◆プランを立て、目的地まで継続的にサポート

-具体的なイメージは

大原氏 遠くの目的地までドライブすることをイメージしてほしい。カーナビゲーションがなかったころは、地図を持ち出して自分でプランを立てることが必要だった。

今はカーナビゲーションに目的地と到着予定時間を打ち込むだけで済む。カーナビゲーションは、ルート案内しながら、渋滞などアクシデントがあればルートを変えるなど、継続的にサポートしてくれる。

 これからの資産運用サービスにおいて、カーナビゲーションの役割を果たしてくれるのが、金融機関だ。将来に必要となる金額を可視化した上で、さまざまな経済ショックに直面することがあっても、継続してサポートして、私たちを目的地に送り届けてくれる。

 こうしたサービスは、デジタルではできない。その土地に住むご夫婦が何歳でリタイアするのがハッピーなのか、健康や仕事の状況はどうなっているか、アドバイザーが対面でヒアリングをしながら、最適なプランを設計してサポートし続けることが必要で、そのことが、付加価値になる。

◆役務としてプランを作成、継続的にアドバイス

-具体的な金融サービスは

大原氏 ゴールベースアプローチに基づく資産計画アドバイスを提供する際に、最適なツールが「ファンドラップ」だ。お客さまと投資一任契約を結ぶことで、手数料に対する「役務」として、契約者それぞれに合ったプランを設計し、それぞれに最適な資産運用を行い、継続的にサポートして目的地まで案内することができる。

 投資信託は、ポートフォリオ運用の付加価値を提供する仕組みなので、全て受益者に対して同じ成果を提供する。受益者それぞれの人生設計をポートフォリオに織り込むことはできない。また、金融機関のアドバイザーが、マネープランを作ってくれても、それは投資信託のサービスに含まれるものではなく、契約外のボランティアだ。

◆退職前後のマス層などアドバイスを必要とする顧客層

-地方金融機関の役割は

大原氏 地域金融機関は「金利のある世界」が復活する中、ネット銀行等に預金流出が起きている。スマホを使って金融サービスを利用する人が増加していることが、こうした流れを後押ししている。

 地域金融機関が、預金の粘着性を高めるには、個人のライフプランに踏み込むファミリー戦略が必要になっている。そのための手段の一つとして、ゴールベースアプローチに基づいた資産計画アドバイスがあるだろう。

 ネット証券やネット銀行が若年層を、大手証券や信託銀行が富裕層をそれぞれ主な顧客基盤とする中で、退職前後のマス層は、専門家がしっかりマネープランを設計し、サポートを受けながら100歳を目指すための適切なアドバイスを必要としているのに、十分に提供されていない。こうした層は、地方金融機関が本領を発揮する顧客基盤になるだろう。

 日本資産運用基盤は、「GBA(ゴールベースアプローチ)ラップ事業支援」を実施しており、GBAラップのシステムや運営ノウハウ等を、大手証券会社や運用会社などのプラットフォーマー(サービス基盤企業)に提供している。これらのプラットフォーマーを通じて、地域銀行や地方証券会社が、GBAラップをお客さまに提供している。既に4社(運用会社2社、証券会社2社)がプラットフォーマーとして参画しており、新たに2社の大手金融機関が準備を進めている。

 

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