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三菱UFJアセット、AIチャットボットを導入=「問い合わせチャネル」を拡充、お客さまの自己解決ニーズに応える

2025年04月24日 07時15分

(出所)三菱UFJアセットマネジメント(出所)三菱UFJアセットマネジメント

 三菱UFJアセットマネジメントは、ホームページの「お客さま問い合わせチャネル」に、人工知能(AI)を搭載したチャットボットを導入した。「自分で手軽に投資や投資信託について調べたい」というお客さまの自己解決ニーズに応え、サポート体制を拡充する狙い。

 チャットボットとは、「チャット(会話)」と「ロボット」を組み合わせた用語で、会話形式で問い合わせに自動応答するサービスだ。同社は、生成AIを活用した品質改善サイクルを組み込むことで、サービス開始後も回答精度を継続的に高めていく。

 カスタマー・コミュニケーション部の佐藤知美コンタクトセンター室長と、原晋平コンタクトセンター兼推進戦略グループ シニアマネジャーに話を聞いた。

◆新NISAで、問い合わせ件数が増加、質問に変化も

-チャットボット導入の狙いは

佐藤氏 お客さまに大きな変化が生じている。新NISAが拡大し、eMAXISシリーズを中心に低コストインデックスファンドが残高を伸ばす中で、問い合わせ件数が増加し、お問い合わせをいただくお客さまの年齢層や、問い合わせの内容も変わった。

 1対1の電話での対応など従来の方法だけでは、お客さまの多様化するニーズに十分にお応えできず満足度向上に繋がりにくいと考え、新しいツールを導入した。

 問い合わせ内容は、従来であれば「基準価額はいくらですか」といった質問や、「マーケットはどうして動いたのか」など、市況動向をお尋ねいただくことが多かった。

 しかし、新NISA導入後は、投資に向き合ったお客さまから、「投資はどのように始めたらいいか」「この商品はどのような内容なのか」「何を見ればいいか」というような、どちらかと言うと投資を始めたばかりの方や未経験者からと思われる質問が多くなった。

◆調べたいときに自由に調べる

-導入の経緯は

佐藤氏 当社は昨年6月、「よくあるご質問(FAQ)」をリニューアルした。さらにチャットボットを導入して、FAQと相互運営することで、お客さまの自己解決能力を高め、お客さまが調べたいときに自由に調べることができるインフラの拡充を行った。

 FAQは、自分が探したい内容が決まっている人が利用するのにぴったりな仕組みだ。チャットボットは、もう少し自由度が高くなっており、質問文を打ち込むことができるので、文章を作りながら、自分の聞きたいことを自分の中で落とし込んでいくのに適している。

 また、FAQの回答文は、金融サービスに日々接している当社社員が作成するので、初心者目線で回答できていない部分があるかもしれない。お客さまがチャットボットに打ち込んだ質問文から、お客さまが知りたいことを把握し、お客さまの目線を学ばせていただくことも多い。

(原氏)(原氏)

原氏 チャットボットは、ページごとにお客さまがどのような検索をしたか、ログを取れるので、どのページでどのような困りごとが発生しているか、お客さまの行動をより詳細に把握し、分析できる。

◆質問文が入力でき、質問の選択肢も用意

-チャットボットのサービス概要や特徴は

原氏 大規模言語モデルに力を入れている企業の高性能のAIを搭載した。質問の文章を入力するだけでなく、選択肢から質問を選ぶこともできる。また、チャットボット上に動画を出すなど、多様な表現に対応している。

 お客さまの質問に対する回答は、あらかじめ用意しているFAQのコンテンツの中から、AIが最適だと判断したものを表示してくれる。

 「オフィシャルサイト」と、インデックスファンドの「eMAXISサイト」、上場投信の「MAXISサイト」の3サイトに、それぞれチャットボットを設置している。サイトごとにお客さまの質問に応じた回答が出せるので、よりお客さまに寄り添った対応が可能になると考えている。

 それぞれに顧客層や質問内容が異なっているので、今後、AIがお客さまの質問に接することで、それぞれのサイトごとに回答精度がより高まることが期待される。

◆24時間365日、気軽に問い合わせをできる

-チャットボットサービスのメリットは

原氏 フリーダイヤルのコンタクトセンターの対応は、午前9時から午後5時までに限られている。「お問い合わせフォーム」を通じたお問い合わせも可能だが、個人情報を入力いただくため、ご利用いただくことにハードルがあるかもしれない。

 チャットボットは、24時間365日、気軽に問い合わせをできる点が、大きなメリットだと考えている。お客さまは、自分のスケジュールの中で、空いている時間を使って、投資に向き合うことができる。

 回答内容は、私たちが電話や問い合わせフォームで受け取ったお客さまの生の声を元に作成しているので、ほかのお客さまにも共通する「知りたいこと」をしっかり反映できていると考えている。

-分かりやすさ、使いやすさの工夫は。

(出所)三菱UFJアセットマネジメント(出所)三菱UFJアセットマネジメント

原氏 お客さまが視認しやすいように、アイコンのサイズ、表示する文言や画像、設置場所などを工夫した。パソコンは右下、スマホは左下にアイコンを置いている。スマホからの利用率が高いので、スマホでの見せ方にも注意した。「eMAXIS」サイトは、公式キャラクターの「eクマ」がアイコンになっており、親しみやすくした。

 チャットボットは「文章を自由入力していただくこと」を大きな目的にしているが、自由に入力することが難しいと感じるお客さまに対しては、質問の選択肢を示して選べる方式を併用している。選択肢についても、利用件数の多いものから並べている。

◆生成AIが人間をアシスト

-生成AIを活用した改善サイクルは

原氏 生成AIは、お客さまから「役にたたなかった」と評価されたコンテンツについて、その前後のお客さまのログを解析した上で、「お客さまが求めていた回答とのずれ」を提示してくれる。それを参考に、質問と回答の新しいパターンを加えることで、お客さまに適切な回答を出せるように改善している。

 また、質問に対する回答が無かった場合は、新しいコンテンツを作るように、生成AIが提案してくれる。生成AIはアシスタントとして、回答の精度を高める上でとても役立っている。

◆変化を読みとり、満足度を高める

-お客さまサービスの重要性、将来ビジョンは

原氏 インターネットやスマホの普及で、お客さまはさまざまな情報を簡単に入手できるようになり、お客さまの投資行動が変わってきている。以前であれば、銀行や証券会社の窓口で担当者が金融商品を勧めるということが一般的だったが、今は、自分で調べ、選んで、購入するという形に行動が変わってきている。

 その中で、投資信託のメーカーである当社は、「投資」や「投資信託」について正しい情報を発信する責任があると思っている。

 一般的に、電話などの有人チャネルを利用する前に、自分で解決しようとするお客さまの割合は、全体の6~7割に上ると言われている。こうした中で、FAQやチャットボットなどのノンボイス・チャネルを充実させることは、顧客本位の業務運営を実現するために不可欠だと考えている。

 今後も、投資に興味を持ち、投資信託を選んで購入し、資産形成して売却する「カスタマー・ジャーニー」を意識した上で、それぞれのフェーズで発生するお客さまの「困りごと」に寄り添うために必要なチャネルをしっかり用意し、適切な情報を発信していきたい。

(出所)三菱UFJアセットマネジメント(出所)三菱UFJアセットマネジメント(クリックで表示)

佐藤氏 以前であれば、お客さまから「投資をしたい」とご相談を受けることは少なくて、金融機関から提案することが多かった。自分の意思で動き始めたお客さまに対して、午前9時から午後5時までの電話で受けきれない部分を、ノンボイス・チャネルで受け止め、資産形成につなげることで、お客さまのゆとりある生活の実現に役立てていただくことが、私たちの使命だと考えている。

 お客さまの変化を読み取り、気持ちに寄り添い、サービスの改善を積み重ねていくことで、お客さまの満足度を高めていきたい。

 

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