ウォール・ストリート・ジャーナル
バロンズ・ダイジェスト

マーケットニュース

「収束の時代」に向かう世界=今後5年間の長期市場展望「Secular Outlook 2025」-ピクテ・ジャパンの松元氏

2025年10月28日 08時45分

松元浩シニア・フェロー

 欧州系運用会社のピクテ・アセット・マネジメントは、今後5年間の長期市場展望「Secular Outlook 2025」をまとめた。テーマは「収束の時代」。欧州が勢いを増し、米国が減速するにつれて、先進国では「マクロ経済のトレンドと資産クラスのリターンの両方で収れんをもたらしている」と分析。例外として、新興国は「より高い成長とリターンの源泉になるだろう」と指摘した。

 ピクテ・ジャパンはこのほど、メディアミーティングを開き、松元浩シニア・フェローがその内容を説明した。主なポイントは以下の通り。

◆世界経済の方向性

松元氏 世界経済を振り返ると、1980~2007年は経済のグローバル化が進んだ「安定の時代」だった。2008~2024年は、リーマン・ショックや新型コロナウイルスの世界的な大流行など「不確実性の時代」だった。その中で、米国の一人勝ちが進んだ。

 2025年からは、「収束の時代」が始まると予想している。政治的な分断が進む中で、米国一極集中が巻き戻され、新たな多極的なグローバル構造が形成されるだろう。

 トランプ政権の関税政策や移民対策は、米国の景気を押し下げ、物価を押し上げる要因になると見ている。

 欧州は独自の成長路線に踏み出しており、安全保障やインフラ投資を自分たちで行うという意識改革が進んでいる。ピクテでは、今後3年間のユーロ圏全体のGDP累積効果をプラス0.6%~プラス1.0%と予想している。

 この結果、米国の今後5年間の実質経済成長率は平均で1.5%(過去5年は2.5%)に低下すると予想している。一方、ユーロ圏は1.4%(同1.0%)、日本は0.8%(同0.3%)に上昇し、先進各国の成長率は収束していくと見ている。

◆株式、債券、為替

松元氏 米国株式は、「上位10%の企業の平均時価総額と中央値の企業の時価総額の比率」を見ると、現状は、マグニフィセント・セブンに代表されるような大型株が注目されていることが分かる。ただ、過去の教訓から考えると、市場は循環しており、いずれかの段階でマーケットに占める割合は下がっていくと考えるのが自然だろう。

 まだ、勢いは続くだろうが、今後5年間を見た時、どこかで潮目が変わることを想定して、ポートフォリオを作っていきたいと考えている。

 債券は、コロナショックの後、各国の金利が逆イールド(長期金利が低い状態)になっていて投資妙味が無かった。しかし、長期金利が上昇し始め、十分とは言えないが順イールドになり、長期債にも投資妙味が出てきた。今年は、私たちのメッセージを「債券にもしっかり目を向けていきましょう」に変更した。

 各国の中央銀行の政策金利は、それぞれの景気やインフレ状況を反映して、米国やユーロ圏で利下げを、日本は利上げを予想している。政策金利が収れんすることで、日本と米国の金利差が縮小すると予想している。

 その結果、円相場は、5年というタイムスパンを考えた時、円安の修正を念頭に入れておきたい。日米の物価やGDP、金利などを勘案すると、年間2~3%程度のゆるやかなテンポで、円高の方向に力の向きが変わっていくのではないかと見ている。

 貨幣には、「価値の交換」「価値の尺度」「価値の保存」という三つの役割があるが、トランプ米大統領の政策により、基軸通貨としてのドルの役割に変化の兆しが見られる。

 金については、1997年~2022年2月までは、実質金利が下がれば、金の価格が上がるという関係性が見られた。しかし、2022年3月以降は、金利に関わらず、金価格が上昇する局面が続いている。地政学リスクや外貨準備の在り方によって、質的な変化が起きていると見ている。

 

ウォール・ストリート・ジャーナル
オペレーションF[フォース]