一気通貫で「つみたて投資」を伴走=「入り口」から「運用後のサポート」まで-セゾン投信「つみたて総研」
2025年10月24日 08時00分
(左から、増田氏、篠宮氏、瀬下氏) セゾン投信は、つみたて投資の知識と習慣を身に着ける「つみたて総研 投資トレーニングラボ」を設立した。瀬下哲雄所長(執行役員マルチマネージャー運用部長)らに設立の思いや今後の展開を聞いた。
◆投資のハードルは高く、運用中も不安が多い
-設立の経緯や思いは
篠宮幸江つみたて総研研究員(ビジネス戦略部 マーケティングユニット) 社内で新規プロジェクトの募集があり、私のアイデアが採用されたことがきっかけだ。
少額投資非課税制度(NISA)が広がり始めたが、投資に対するハードルは依然として高いままだと感じている。投資に対して「難しい」「怪しい」といったマイナスイメージがある。また、知識やイメージの問題をクリアしたとしても、口座開設という大きな課題がある。こうした「入り口」のハードルを引き下げたいと考えた。
また、実際に投資を始めても、相場の大きな変動を経験したり、反対にマーケットが踊り場で動かなかったりすると、「このまま投資をしていて大丈夫なのか」といった不安な気持ちが出てきて、投資を止めてしまうケースを見てきた。こうした不安な気持ちをサポートしたいと考えた。
世の中には、いろいろなコンテンツやツールがあるが、「投資の入り口」から「投資を始めた後のサポート」まで、一気通貫で投資家を伴走するサービスが存在しないように思う。二つの課題を合わせてクリアすることで、「投資を始めて、続ける」ことができるのではないかと考えた。
◆「どのように行動したらいいか」にフォーカス
瀬下所長 投資と言うと「どの商品を選ぶか」といった話題から入ってしまいがちだが、つみたて総研では、あえて商品の話をしない。あくまでも、「どのように行動したらいいか」にフォーカスを置いて、「つみたて投資」という方法を伝えたり、投資に対する意識を変えたり、といったコンテンツを提供していきたいと考えている。
一般的に、相場が良い時に投資を始める人が多い。ただ、いつまでも良い相場は続かないので、相場が下がると投資を止める人が出てしまう。それでは、「投資を始めて損した」という悪いイメージしか残らず、意味がない。
相場が下落した局面において継続的にサポートすることで、投資の成功体験につなげていきたい。
◆「つみたて投資」の大切さを伝える
増田裕美つみたて総研研究員(ダイレクトサービス部 相談サービスユニット リーダー) 投資を始めるとなった時、「何を買うか」という商品から入る人がほとんどで、「どういう買い方をしたらいいか」から入る人は少ないように思う。
セゾン投信は、創業以来、「長期のつみたて投資」を提唱してきた。ただ、運用会社なので商品が全面に出てしまう。「つみたて総研」はそれとは違った角度で、つみたて投資の大切さを伝えていきたいと考えている。公式を「スピンオフ」したものとして、ホームページの雰囲気も変えている。
◆五つのステップ=一緒に学ぶ、気づく、一緒に考える、始める、続ける
-これからの展開は
篠宮研究員 トップページに掲載しているように、①一緒に学ぶ ②気づく ③一緒に考える ④始める ⑤続ける-の五つのステップで進めていきたいと考えている。
第1弾は「①一緒に学ぶ」について、東京都豊島区を拠点にJリーグ参入を目指す、地元のサッカーチーム、エリース豊島FCの選手・スタッフに「投資・つみたてのキホンが学べるセミナー」を受講してもらった。ホームページに動画を掲載している。
第2弾は「②気づく」ということで、セミナーに参加してもらった選手・スタッフと、インタビューを行い、セミナーを受けた感想、投資のイメージ、投資をやりたいと思ったか-などを聞いた。こちらも動画を掲載した。
第3弾は、これからでコンテンツを作成する。「③一緒に考える」ということで、投資を始めるに当たってどのようなアクションを取るか-について、個別相談の様子をまとめる。
このほか、研究員のリポートを掲載するコーナーを設けている。
◆下落局面で投資を続ける=成功体験を積み重ねる
-投資家の裾野拡大に向けて課題は
瀬下室長 新NISAがスタートして投資家の数が増えて、裾野は広がったが、まだ「投資は怖い」とする気持ちは消えていない。これから成功体験を積み重ねていくかが大切だ。
新NISAが始まってから、良い市場環境が続いている。ただ、過去を振り返ると、ずっと良い相場が続くことはなく、調整局面や下落局面が来て、投資を止めてしまう人が増え、悪い記憶が残るということが繰り返されてきた。
つみたて投資で大切なことは、下がった時に続けることだ。これから下落局面が来た時に、みんなが投資を続けられれば、それが成功体験になる。そうした体験が共有されることで、投資家の裾野がさらに広がっていくだろう。投資を継続することをサポートしていきたい。
相場が下がった時も投資を継続すると、相対的に安い価格でより多くの口数を購入できる。このことは、感覚的に分かりにくいことなので、実際に体験して感じてもらうことが大切だと思う。
一般的に相場が良い時に、投資を始めたいと考える。そうした時に、資産を全部投資するのではなく、つみたてで投資をしてもらい、相場が下落しても続けてもらうことで、成功体験になる。
「投資はいつ始めればいいか」と聞かれることが多い。マーケットの先行きは誰にも分からないので、「つみたてで始めてもらうこと」と「相場が下がっても続けてもらうこと」を、しっかりサポートすることが大切だと考えている。
投資を始めてもらう際には、相場には良い時も悪い時もあることを、きちんと伝えることが大切だ。その上で、相場が下がった時に有効な対策として、つみたて投資があることを話してあれば、実際に相場が下がっても、つみたて投資の効果を思い出し、投資を続けてもらえるだろう。
◆面白く、楽しく、正しいことを伝える
-投資教育で大切にしていることは
増田研究員 日頃は、お客さま向けの相談室に勤務しており。ファイナンシャルプラングの相談を受けたり、セミナーで講師をしたりしている。
既に口座を持って取引しているお客さまでさえ、これだけの情報社会の中で、迷ってしまうことがある。これから始めるお客さまは、さらに迷っていると思う。特に金融リテラシーが高い人ほど、いろいろ情報を収集するので、迷ってしまうのではないか。
インフルエンサーの方は、分かりやすく情報を伝えることに長けている反面、情報が不十分だったり、行き過ぎていたりすることもあるだろう。私は金融機関に所属するものとして、正しい情報を分かりやすく、発信していくことを大切にしている。「つみたて総研」は、面白く、楽しく、正しいことを学ぶ場にしていきたい。
◆同じ船に乗り、目線を合わせる
瀬下所長 ファンドの運用を担当しており、運用報告会などで、受益者の皆さんとお話ししている。投資を続けてもらうには、何に投資をしているか、知ってもらうことが大切だと感じている。
セゾン投信は、将来のための資産形成だけを主眼に運用を行っている。このことについて、お客さまと、運用担当者、販売担当者が、目線を合わせることを大切だ。投資信託は、同じ船に乗ることに例えられることがある。投資に対する考え方を共有することが、投資を続けるポイント一つになるだろう。
ファンドの運用に当たっては、つみたて投資に適した安定的な運用を心掛けている。ボラティリティが大きく、相場の山が高い運用だと、相対的に平均購入価格が高くなり、購入できる口数が少なくなることが懸念されるためだ。
著名な投資家であるウォーレン・バフェットの名言の一つに「ほかの人が強欲になる時に臆病になり、ほかの人が臆病になる時に強欲になる」がある。ただ、一般の人は、リーマン・ショックのように相場が急落した時に株式を買うことはなかなかできない。しかし、つみたて投資であれば、それに近いことができる。感情と行動を切り話して、定期的に購入することは、実践的な処方箋だ。
◆平凡なことをつづける「つみたて投資」の奥深さを共有
篠宮研究員 投資を長く続けるポイントは感情を抑えることだと思っている。私自身は個別株投資から投資を始めたのだが、安く買って、高く売ることを繰り返して、資産を増やすのはとても大変なことだと分かった。
NISAをきっかけに投資信託を始めて、毎月購入するだけになり、すごく気持ちが安定した。平凡なことを続けていくことは、資産を増やすにはとても大切なことだと思う。つみたて投資の奥の深さを、楽しみながらお客さまと共有していきたい。



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