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欧州の成長が再加速、財政政策や投資パッケージで=不確実性が高まる中、投資家は分散を重視-欧州系運用会社DWSのゴーゲン氏

2025年10月16日 07時00分

DWSのゴーゲン氏

 ドイツ銀行グループの資産運用会社DWSの取締役で顧客カバレッジ部門グローバル責任者のディルク・ゴーゲン氏がこのほど来日し、時事通信社のインタビューに応じた。この中で、欧州経済について「財政政策や投資パッケージにより、成長が再加速している」と指摘した。また、「経済の不確実性を高まる中で、投資家は分散投資を重視している」と述べた。主なポイントは以下の通り。

◆欧州への玄関口

-来日の目的は

ゴーゲン氏 DWSは、アジア太平洋地域と日本に拠点を開設して40周年を迎えた。昨夜、それを祝うレセプションを開催した。不安定で不確実性が高まる時代において、ドイツと日本の文化的なブリッジは、ますます密接なものになっている。当社は「欧州への玄関口(Gateway to Europe)」として、資本市場において、さらに欧州と日本、そして世界をつなげていきたいと考えている。

◆グローバルにプラットフォームを展開

-DWSとは

ゴーゲン氏 当社は、欧州有数の運用会社であると同時に、グローバルにプラットフォームを備えた企業だ。運用資産は昨年末に1兆ユーロを超えた。保有資産を地域別に見ると、ドイツに約45%、米国とドイツ以外の欧州に約25%ずつ、アジアに約5%というように分散されている。

 DWSはドイツのマーケット・リーダーであり、世界の5大経済圏のうち欧州と米国ではすでにトップ5の外資系運用会社に入っている。今後は、日本、中国、インドで高いランキング入りを目指していきたい。

 また、私たちがユニークな点は、さまざまなアセットクラス、例えば、株式、マルチアセット、債券、オルタナティブ、パッシブETFにおいて、それぞれ1000億ユーロ以上の資産額を保有していることだ。

 お客さまは、競争優位性(competitive edge)を求めている。当社はアクティブ運用で優れた実績を持つだけでなく、オルタナティブやETFといった成長分野にも強みがあり、幅広い運用ソリューションを提供している

◆GDPが再加速=財政政策や投資パッケージで

-欧州について投資家の見方は

ゴーゲン氏 地政学リスクが警鐘となり、欧州各国に変化が出てきた。GDPが再加速を始めており、ドイツでは今後12か月間の見通しで2%近くまで上昇すると、多くの投資家が考えている。

 ドイツでは財政支出の拡大が期待される。対GDP比でみた政府債務の規模を考えても、十分に余地があるだろう。また、欧州のインフレは抑制されているので、欧州中央銀行(ECB)にも金融政策の余地があると見られている。

 こうした中、投資家はポートフォリオのリバランス(再配分)を行っている。ただ、米国に向かっていた資産が欧州に巻き戻しているというよりは、より分散を重視する傾向が見られる。そうした動きの中で、欧州市場が資金の受け手になっている。

 当社は、ドイツ株式の代表的な指標であるDAX指数について、2026年9月末に2万5900ポイントと予想している。今後1年間で1割程度の上昇余地を見込んでいる。欧州全体が、活気あふれる状況になりつつある。

 こうした中で注目される市場の一つが、プライベート・クレジットだ。欧州では、銀行が融資を行ってきたが、銀行以外による融資が動き出し、資産運用会社が力を発揮するケースが増えてきた。

 もう一つは、インフラ投資だ。持続可能なエネルギーへの移行や、デジタルインフラなどへの投資が必要とされている。ドイツ政府は5000億ユーロの投資パッケージを発表し、民間資本の投資促進も目指している。

 欧州の金利が低下したことで、不動産市況も底打ちの兆しを見せており、不動産投資について議論する機会が増えてきた。

 今後の注目点だが、欧州各国はいろいろなことを約束しているので、それを執行の段階に持っていけるかを、見守る必要がある。

◆AIブームは、インフラ整備に拡大

-米国の見方は

ゴーゲン氏 当社は、米国の代表的な株価指数であるS&P500について、2026年9月末で6800ポイントと堅牢な展開を予想している。しかし、株価は割高な水準にあると見ており、慎重にさまざまなデータを注視している。

 例えば、企業が期待された利益を出せなかった時に株価が下がるというようなことは考えられる。マクロの環境に加えて、個別に銘柄をきちんと見ていくことが必要だろう。

 AIのブームは終わっていないと考えている。AIインフラが整備され、多くの投資マネーが流入しており、こうした動きが続いている。

◆ガバナンス改革やNISAを評価

-日本に対する投資家の見方は。

ゴーゲン氏 海外投資家の日本への投資ニーズは強まっている。日本経済は、インフレ基調に転換し、賃金も上昇してききた。円安が進んだことで、海外投資家にとって、為替面でもサポートがある。

 さらに、日本企業のコーポレートガバナンスが強化され、市場がオープンになってきた。加えて、少額投資非課税制度(NISA)の拡大が、海外投資家に好感されている。日本は、個人投資家に対して資本市場を開かれたものとし、リタイアメントに向けた資産形成など潜在的な投資需要を掘り起こしたものとして、海外投資家の関心を誘っている。

◆不確実性の高い環境、分散投資が重要に

-今後の資産管理のポイントは

ゴーゲン氏 分散投資は、重要で不可欠だ。機関投資家は実際に、地域や資産クラスの分散も行っている。さらに、個別銘柄の選択においても分散が必要だ。不動産投資においても、セクター別に分散を図ることが重要だろう

 当社は非常に分散されたプラットフォームを持っているので、さまざまなお客さまに適切なソリューションや、戦略的なアセットアロケーションを、アドバイスができる。不確実性の高い市場環境にある今こそ、分散がカギであり、適切なアセットアロケーションが必要だ。

 

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