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〔マーケット〕来年にはインフレ率が低下、個人消費が拡大へ-アモーヴァAM・神山氏

2025年10月16日 13時00分

神山直樹氏

 アモーヴァ・アセットマネジメントは、四半期ごとにまとめる経済見通し「グローバル・フォーサイト 2025年秋号」をまとめた。チーフ・ストラテジストの神山直樹氏は、日本経済について「ヒト・モノ・カネの不足が継続する中、来年にはインフレ率が低下し、賃金上昇率の方が少し高い状況になり、個人消費が拡大するだろう」と指摘した。主なポイントは以下の通り

◆米国経済=ソフトランディング

 米国と中国の関税交渉は、大きな問題にならないだろう。10月末に韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に向けて、収れんしていくと想定している。米国では中国製品の輸入が減少しており、中国に対する関税が引き上げられても、米国の物価上昇につながる可能性は低いと見ている。

 米国経済は減速しているが、景気後退にはならないと見ている。小売売上高は、関税引き上げを控えた前倒し需要の後、反動減もありうるが、全体としては減速基調と見ている。ただ、消費は全体として横ばいで推移している。このため、米国の輸入も横ばいとなり、日本の実質輸出は高い水準を維持すると想定している。

◆日本経済=インフレ率の低下で、個人消費回復へ

 高市早苗自民党総裁が誕生したが、公明党の連立離脱により、政権の枠組みについてさまざまな可能性が浮上している。組み合わせによっては、物価高対策が遅くなったり、早くなったりする可能性がある。ただ、来年の日本経済の見通しを大幅に変更するようなシナリオにはならないと見ている。

 日本経済は、実質輸出が高い水準で推移する中、ヒト・モノ・カネが不足している状態だ。「賃金の上昇」「設備投資の増加」「金利の上昇」が一つのまとまりとして起きているので、株高と金利高が同時に来ても、まったくおかしくない。内需も良くなっており、賃金上昇は続くだろう。

 日本経済で注目しているのは、インフレ率と賃金上昇率の動向だ。日本の消費者物価指数(CPI)は、前年同期比3%程度の上昇が続いているが、来年の秋には2%割れの水準に低下すると予想している。その結果、インフレ率よりも賃金上昇率が少し高い状況になり、個人消費が拡大するだろう。

 こうした動きを後押しするのが、政府の物価高対策と日銀の金融政策だ。

 金融政策については、1ドル=150円台にある為替相場について、金利を引き上げて円安に歯止めをかけ、ある程度の円高にする良いタイミングになっている。当社は、日銀が12月あるいは1月に政策金利を0.25%引き上げて、0.75%にすると予想している。

 物価高対策としては、ガソリン税の暫定税率の廃止や、減税と給付を組み合わせた「給付付き税額控除」の実施、所得税の課税最低ライン「年収の壁」引き上げ-などが検討されている。財政規律を緩めることがないよう、「消費者目線」の政策に絞った対応が期待される。

◆マーケット見通し=円高・株高へ

 米国では、米連邦準備制度理事会(FRB)が11月と12月に利下げを行い、政策金利を3.75%に引き下げるとする見方が多い。来年は、利下げペースが緩やかになり、2026年9月末の政策金利は3.25%と予想している。

 一方、日本ではゆっくりとしたペースで利上げが行われ、2026年9月末の政策金利は1.0%と予想している。

 円・ドル相場は、米国の利下げと日本の利上げにより円高方向に動き、2026年9月末は1ドル=139円台を予想している。

 日経平均株価は、2026年9月末で4万9500円台を予想している。株価は、先行して良いニュースを織り込んだので、来年の上昇ペースは緩やかになるだろう。

 現在の株価はバブルではないと考えている。半導体の需要は、人工知能(AI)の登場でシフトアップした。ビジネスや教育現場でのAIの活用は、まだ始まったばかりだ。さらにロボットに本格的にAIが利用されれば、需要は一段と拡大するだろう。

 

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