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通貨価値の下落に備え「『金』を保有する重要性」を指摘=ピクテ・ジャパンの塚本氏

2025年10月28日 09時00分

塚本卓治シニア・フェロー

 ピクテ・ジャパンはこのほど、メディアミーティングを開き、「ピクテが考える金市場の見通し」をテーマに、塚本卓治シニア・フェローが講演した。この中で、「通貨価値の下落に備え、金を保有する重要性」を指摘した。主なポイントは以下の通り。

◆「金という通貨」に分散投資する

-ピクテの考え方は

塚本氏 ピクテは2019年から、「通貨価値の下落に備え、『金という通貨』に分散投資する重要性」を訴えてきた。すなわち「リスク分散の観点で、株式と債券という従来型のアセットミックスに金を組み合わせましょう」と提案してきた。

(1)リーマン・ショック以降、金融緩和でマネーの供給量が増加 (2)世界経済の構造変化 (3)国の信認の低下 (4)地政学リスク-などを背景に通貨価値が下落する中、金は「脆弱性に対応する資産」として、ニーズが高まっている。

◆「安全資産・分散投資資産としての金の需要」

-金価格上昇の背景は

塚本氏 2000ドルからの金価格の上昇は、通貨価値の下落リスクに備えた「安全資産・分散投資資産としての金の需要」が背景にある。

 一つは、中央銀行による金の購入だ。2008年のリーマン・ショック以降、「大規模な金融緩和策で米ドルの価値が希薄化している」として、世界の中央銀行において外貨準備の通貨分散が始まった。特に2022年のロシアのウクライナ侵攻以降、地政学リスクの高まりとともに、外貨準備の多様化戦略が加速した。

 もう一つは、金への投資需要だ。金を対象とするETF(上場投信)に資金が流入している。日本だけでなく、米国、欧州、中国・アジアでも金の投資需要が拡大している。

◆「4000ドルは通過点」の可能性も

-金価格の見通しは

塚本氏 金価格の上昇は、投機筋主導ではなく、実需を中心に買われている。短期的には急ピッチな上昇に対する警戒感が強まる可能性があるが、長期的な上昇トレンドは継続すると見ている。

 長期的には、通貨供給量の増加が金価格上昇の要因になる。金の通貨としての相対的な希少性が高まるためだ。

 また、過去を振り返ると、金価格は、地政学リスクやインフレを背景に、幾度となく大きな上昇を長期にわたって見せてきた。こうした価格変動特性からも、上値の余地はあると考えている。

 過去と同じように長期の上昇トレンドが始まっていると考えるのであれば、「金価格の4000ドルは通過点に過ぎない」という可能性もあるのではないか。1970年代と同様にインフレの再加速や景気減速、安全資産需要の高まりが起きれば、さらに大きく上昇する可能性がある。

 米国の債務比率が高い状況にあることなど、1970年代よりも、厳しい投資環境にある。まだまだ金に対する投資需要があることを考えると、従来の理論では説明がつかない金価格の上昇が続く可能性があると考えている。

 

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