AIは非常に強力なテーマ=幅広い分野で中長期的に成長-「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド」の運用者が来日
2025年09月16日 14時00分

フィデリティ投信の米国成長株ファンド「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド」の純資産総額が、7000億円を突破した。
このファンドは、個別企業の調査や面談を通じた「ボトムアップアプローチ」で企業の成長性や株価の割安度を分析し、銘柄を選定する。現在は、人工知能(AI)等の情報技術や消費財などに投資して高いパフォーマンスを上げており、フィデリティ投信を代表するファンドの一つになっている。
このほど来日したポートフォリオ・マネージャーのカイル・ウィーバー氏は、AIについて「非常に強力な投資テーマだ。規模が大きく、中期的に成長をもたらし、幅広い範囲に影響する」と述べた。また、ベッキー・ベイカー氏も「既にAIによって多くの企業が売上高を伸ばしているが、AIにはまだまだ成長の余地がある」と指摘した。主なポイントは以下の通り。
◆3-7年先の企業価値を見据えて成長銘柄を発掘
-ファンドの概要と投資哲学は
ウィーバー氏 3-7年先の企業価値を見据えて、複数の視点から成長銘柄を発掘している。このファンドは成長株に投資するファンドだが、同時に、将来の成長に対して割安感を感じる銘柄に投資している。こうした銘柄は、大きな成長を期待できるからだ。
分析のポイントだが、どのように資本を配分しているか、売上高の成長見通しはどうなっているか、利益面ではマージンがどのように改善していくか、個別企業の隠れた成長ドライバーは何か-などに注目している。
◆企業の成長局面を捉える三つのカテゴリー
ウィーバー氏 投資対象は三つのカテゴリーに分類できる。一つ目は「時代の潮流を捉えた長期的な成長企業」だ。収益性の高い確立されたビジネスモデルを持ち、長期にわたって持続的かつ高い成長率を実現することが期待される。例えば、米国のビッグ・テック企業などが該当する。
二つ目は「レジリエントで、打たれ強い成長企業」だ。株価が一時的に割安になっているが、安定的なビジネス基盤を持っており、利益率の改善などにより、高い成長を実現する可能性がある。
三つ目は「転換期にある、ニッチな急成長企業」だ。革新的な製品・サービスを持っているが、まだ市場から認知されておらず、時価総額で見ると中小型銘柄が多い。大きな成長ポテンシャルを持つ企業群だ。
このように個別企業を分析しつつ、マーケットの変動を利用して、「中長期的に成長が見込めるが、短期的に割安になっている銘柄」を探して投資している。
◆仮説の実現状況を見極める
-保有銘柄を売却するタイミングは
ベイカー氏 保有株式を売却することは、利益を実現して投資家に還元するという意味で、とても重要なことだ。売却の考え方について、二つポイントがある。
一つは、運用チームの見立てが実現しなかったケースだ。二つ目は、当初考えた仮説が実現して株価が十分に評価されたケースだ。
一つ目のケースだが、例えば、自動車向けの半導体は、米国の新たな関税政策が発表され、電気自動車(EV)への支援が縮小される中で、こうした半導体の調達が加速することは見込めないと考え、関連株式を売却した。
二つ目のケースだが、例えば、米国を代表する大型テクノロジー企業群であるマグニフィセント・セブンの株式は、市場で大きく注目される前から保有していたが、想定していた株価に到達したものについては、一部を売却している。
◆AIは非常に大きな中長期のテーマ
-AIの見通しは
ウィーバー氏 AIは非常に強力な投資テーマだ。規模が大きく、中期的に成長をもたらし、幅広い範囲に影響するためだ。私のキャリアの中でも、最も大きなテーマと言っていいだろう。
現在は、業界全体で数百億ドルといった投資規模だが、これか数兆ドルといった規模に育っていくと見ている。AI半導体の受注残は数年先まで埋まっている。
同時にAIの成果は、年月をかけて、長期的に実現していくものだ。電力やケーブルを確保し、サーバーの冷却施設を建設してというように、AI関連の環境整備も重要なテーマになる。
さらにAIの重要な点は、経済の全てのセクターに幅広く影響することだ。個別企業の分析においては、AIを活用してコア事業の収益性がどれくらい改善するのか-、といったことを見極めることが重要になる。これはソフトウェアの分野だけでなく、製造業などハードの世界でも大きな材料になる。また、AIを使って顧客サービスを高め、収益を伸ばしている小売業も出ている。
◆今後もAI投資は継続する
-AIの投資サイクルの見通しは
ベイカー氏 既にAIによって多くの企業が売上高を伸ばしているが、AIはまだまだ成長の余地があると見ている。AIがテーマになって約3年が経過したが、今後、さらに大きく伸びていくだろう。
特に注目しているのは、AIを使ったデジタル広告だ。それぞれの消費者により適した広告を出すことができるようになり、購買につながる率が高まることが期待される。
活発にAI投資が行われているが、数年でマージンが回復し、投資を上回る収益が得られている。このため、今後もAI投資は続いていくだろう。
◆全般的に好意的な見方、慎重にリスクと機会を分析
-マグニフィセント・セブンの今後の見通しは
ウィーバー氏 それぞれの企業に成功要因があり、高い収益を上げている。いずれも健全な中核事業を持っており、生成AIを使って中核事業を強化している。また、エンジニアなど社内の人材についても、AIを使って生産性を高めている。
マグニフィセント・セブンについては、全般的に好意的な見方をしている。ただ、その中においては、慎重に銘柄を選択していく必要がある。それぞれの企業のリスクと機会を見極めながら、個別に投資判断を行っていく。
◆住宅・建設、デジタル広告にも注目
-AI以外の注目テーマは
ベイカー氏 当ファンドでは、AIに関連のないテーマにも注目している。一つ目は、住宅・建設だ。数年来、米国の住宅市況が低迷してきたので、市況の回復を期待して組み入れている。
もう一つは、デジタル広告の分野だ。AIの活用以外でも、テレビがネットとつながることでさまざまなビジネスチャンスが生まれている。ユーザーベースを広げ、そこから順調に収益を生み出している。