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〔特派員リポート〕建設現場の4割ストップ=コロナ禍、英住宅市場に影響大

2020年04月30日 10時23分

英国北部スコットランドで、新型コロナウイルス対策のため消毒される広場(イギリス・スコットランド)/AFP時事
英国北部スコットランドで、新型コロナウイルス対策のため消毒される広場(イギリス・スコットランド)/AFP時事

 英国では新型コロナウイルスの感染拡大阻止のため3月23日に発動されたロックダウン(都市封鎖)が2カ月目に入った。市民の外出、商業活動は大幅に制限され、経済に多大な影響が及んでいる。建設・不動産市場もそうで、相当数の建設現場で作業が中断したままだ。景気動向と密接に関連する住宅市場への影響が特に大きい。

 建設情報サービスのグレニガンによれば、4月24日現在、同社が把握する英国のすべての建設現場の39%(約3500カ所)で作業が中断している。最も影響が大きいのが住宅建設だ。

 ◇22万戸で工事中断

 感染の爆発的拡大を受け、大手住宅建設業者の多くが工事を中断し、販売店やショールームも閉鎖された。政府の指示によれば、建設現場はロックダウンの対象にはなっておらず、工事の継続は可能だ。だが、作業員らが必要なソーシャルディスタンス(他者との距離)を維持するのは容易でなく、工事の中断や縮小を余儀なくされた。

 不動産サービス大手サヴィルズによると、3月末時点で建設工事がストップしている住宅はイングランドで約19万4000戸、スコットランドで約1万8900戸、ウェールズで約8500戸の計約22万戸。4月に入り再開に動き始めたものの、依然として「60%で作業が止まっている」(グレニガンの4月24日付リポート)。

 住宅売買に際して土地や建物の状態などを調査する公認サベイヤー(不動産鑑定士)の統括団体、王立チャータード・サベイヤーズ協会(RICS)によると、住宅の新規購入需要は2月までは3カ月連続で増加していたが、3月に入ると全国で減少に転じた。

 ◇離脱後の回復直撃

 新型コロナウイルスの大流行が起きる前、住宅市場は回復基調にあった。ロンドンの高級地区(プライム)の住宅価格は3月半ばまでの3カ月間で2%上昇し、これにより年間の価格上昇率も1.6%と過去4年間で初めてプラスに転じたところだった。

 2019年を通じ、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる不透明感が晴れず、価格を押し下げる主因となっていたが、「12月の総選挙で与党保守党が圧勝。離脱が確定的となったことで先行きがクリアになり、購買意欲が高まった」(不動産サービス関係者)。同じ理由でロンドンの商業不動産市場も活気づいていた。そこを襲ったのが新型コロナウイルスだった。

 ロックダウンが解除されれば、市場もやがて回復に向かうだろう。だが、タイミングについては予断を許さない。4月下旬現在、ロックダウン緩和のめどは立っておらず、早期のワクチン開発・実用化も危うい状況だ。RICSは毎月、住宅市場で活動する各地のサベイヤーへのアンケートを基に市場心理の動向をまとめている。4月上旬発表の最新報告によると、住宅販売の短期見通しについて圧倒的多数のサベイヤーは、1998年に月例報告が始まって以来、最低水準に落ち込むとみている。向こう1年間の見通しについても販売減、価格下落を見込むサベイヤーが多数に上った。(ロンドン支局 片山哲也)

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